
バリアフリー設計において最も基本的かつ重要な要素が段差解消です。住宅内の段差は、高齢者や身体に不自由のある方にとって大きな障壁となり、転倒事故の原因にもなります。
段差解消の具体的なアプローチとして、以下の点が重要です。
特に玄関は家の中と外との境界で段差が生じやすいため、スムーズに出入りできる設計が不可欠です。スロープを設置する場合は、勾配を緩やかにし、滑りにくい素材を使用することが重要です。
手すりの設置は、高齢者や障害者の移動をサポートする上で極めて重要な役割を果たします。適切な手すりの設置により、転倒事故を防ぎ、利用者の自立した生活を支援できます。
手すり設置の基本原則。
浴室では「フラットサポートバー」のように壁一面に設置することで、洗い場や浴槽内のどこにいてもバーを握ることができる設計が推奨されています。また、ベンチ機能のあるカウンター近くにタテ手すりを設置することで、立ち座りの負担を軽減できます。
住宅のバリアフリー設計において、廊下幅の確保は車椅子での移動を可能にする重要な要素です。適切な廊下幅の設定により、利用者の移動の自由度が大幅に向上します。
廊下幅の基準。
動線計画においては、部屋の配置や動線を事前に検討することがポイントです。例えば、足が悪くなった場合を想定し、居室から水回りまでの動線を最短化し、移動負担を軽減する設計が求められます。
また、扉の幅を広げることで、車椅子や歩行器を使用する方もスムーズに移動できるようになります。引き戸タイプの採用により、開閉操作が楽になり、床面に段差がなく、開口幅が広いため安全に出入りできます。
バリアフリー設計を行う際は、建築基準法やバリアフリー法に基づく法的基準を理解し、適切に対応することが不可欠です。これらの基準は、建築物の用途や規模に応じて異なる要求事項を定めています。
主な法的基準。
2025年6月に改正されたバリアフリー法では、トイレの設計基準が大幅に変更され、「車椅子使用者用便房」「オストメイト用設備を有する便房」「乳幼児用設備を有する便房」など便房の種類が明確化されました。
国土交通省の建築設計標準に関する詳細な基準と改正内容
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001892110.pdf
水回り設備は、バリアフリー化の中でも特に重要なポイントであり、利用者の安全性と快適性を大きく左右します。従来の設計手法を超えた革新的なアプローチが求められています。
浴室の革新的設計。
洗面脱衣室では、将来の車椅子使用を見据えた「ドゥケア・カウンター」のような車椅子対応の洗面化粧台を採用し、十分な動作スペースを確保することが重要です。
キッチン設計においても、高さ調整可能なカウンターや、車椅子でもアクセスしやすい収納システムの導入が進んでいます。これらの設備は、身体的制約のある方だけでなく、すべての利用者にとって使いやすい環境を提供します。
トイレ設計では、最新のガイドラインに基づき、便房機能の分散配置や、小規模階での設置基準(床面積1000㎡ごとに1以上)が明確化されています。
バリアフリー設計は、単なる法的要求への対応を超えて、すべての人が快適に暮らせる住環境の実現を目指すものです。不動産従事者として、これらの知識を活用し、顧客のニーズに応える質の高い提案を行うことが重要です。継続的な学習と最新情報の把握により、バリアフリー設計の専門性を高め、社会貢献につながる住宅提供を実現していきましょう。