

2025年4月25日に公布された電波法改正により、日本はついに電波オークション制度を導入しました 。この制度は通信用電波の割り当て方法として、価格競争によって事業者を選定する仕組みです 。OECD加盟38カ国中、日本を除く37カ国がすでに導入済みという状況の中で、四半世紀遅れての導入となりました 。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/spectrum-auction/
従来の「比較審査方式」では、事業者が事業計画を提出し、規制当局が複数の項目を審査して周波数の割当てを決定していましたが、新制度では入札で最も高い価格を提示した事業者に電波が割り当てられます 。特に6ギガヘルツ超の高周波数帯域(28GHz帯などのミリ波)が最初の対象となり、2025年度末にも制度が創設される予定です 。
参考)https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2025pdf/20250414075.pdf
日本が電波オークション導入に遅れたことによる経済的損失は直接的な財政損失だけで約4.2兆円と推計されており、技術競争力低下や通信品質低下による間接的損失を含めると総額6.9兆円に達すると見積もられています 。
参考)https://techno-gateway.com/gm/2025/04/20/spectrum_auction/
2025年10月1日から無線局の「紙の免許状」等が完全に廃止され、すべてデジタル化されます 。これは政府全体の「デジタルファースト原則」に基づく取り組みの一環で、無線局免許状、無線局登録状、高周波利用設備の許可状の3種類が対象となります 。
参考)https://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-2_Regulation/application/menkyojo_digital.html
今後は総務省のシステムに記録される免許記録そのものが法的効力を持つことになり、免許人等が免許等の内容をインターネットの「総務省 電波利用電子申請」サイトで閲覧・確認できるようになります 。この変更により、免許人および行政機関の双方の業務の迅速化や効率化、コスト削減が期待されています 。
参考)https://hamlicense.fortes-ms.com/blog/elicense/
デジタル化に伴い、無線局の免許等の手続きに関する手数料も改正されるため、申請時には注意が必要です 。2025年10月1日以降に交付される新しい免許状はすべて電子化され、これまで手元に届いていた紙の免許状は発行されなくなります 。
電波利用料制度についても2025年の改正で大幅な見直しが行われました 。主な変更点として、電波利用料の料額表が3年ぶりに改定され、より効率的な料金体系が導入されています 。
参考)https://minpo.online/article/post-527.html
電波利用料を財源とする電波利用共益事務の「特定周波数変更対策業務」が拡充され、テレビ中継局など既存の無線設備について、代替有線設備等への変更工事に要する費用への給付金の支給等が可能となります 。これにより、災害時に備えた基地局の強靭化に対する電波利用料を活用した補助金の交付等も実現可能になりました 。
参考)https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2025/0731_08.html
さらに、地上波の基幹放送事業者が中継局を廃止する際に放送番組を引き続き視聴できるようにするための措置として、ケーブルテレビや配信サービスを講ずる「努力義務」が課されることになりました 。
電波法改正は直接的には無線通信分野の制度変更ですが、宅建業界のデジタル化推進にも間接的な影響を与える可能性があります。特に、5GやIoTなどの新技術に対応するための周波数再配分により、不動産業界でも活用される通信技術の向上が期待されます 。
参考)https://biz.kddi.com/content/column/smb/houjin-radiolaw-amendment/
宅建業界では2022年5月に宅建業法の改正により電子契約が可能になっており 、重要事項説明書や契約書を電子文書で交付できるようになっています。電波法改正による通信インフラの改善は、こうしたデジタル化された不動産取引の更なる普及を後押しする要因となるでしょう。
参考)https://biz.moneyforward.com/contract/basic/2158/
また、2025年4月からは建築基準法改正により省エネ基準適合が義務化されるなど 、不動産業界全体でデジタル化と環境配慮が加速しています。電波法改正による効率的な電波利用は、IoTを活用したスマートホームやエネルギー管理システムなどの普及にも寄与すると考えられます。
参考)https://biz.homes.jp/column/topics-00198
宅建業界として電波法改正に対応するためには、まず通信環境の見直しと最適化が重要です。特に業務で使用している無線機器について、2024年12月1日以降使用できなくなった350MHz帯・400MHz帯のアナログ簡易無線機を使用していた場合は、速やかにデジタル方式への移行が必要です 。
参考)https://www.tele-nishi.co.jp/biz/mobile/column/84/
不動産会社では現場視察や物件案内時の連絡手段として無線機を活用しているケースが多いため、スマートフォンを活用したIP無線システムや、デジタル簡易無線機への切り替えを検討する必要があります 。これらの代替手段は従来の無線機よりも高機能で、GPS機能や録音機能なども利用できるメリットがあります。
さらに、電波オークション制度導入により通信事業者の競争が促進されることで、より高品質で低価格な通信サービスが提供される可能性があります。不動産会社は、これらの新しい通信サービスを活用したオンライン内見システムやバーチャル重要事項説明システムの導入を検討することで、業務効率化と顧客サービス向上を同時に実現できるでしょう。
総務省の電波利用電子申請システムの活用により、無線局免許の管理も効率化されるため、必要に応じて社内の無線設備管理体制も見直しを行うことが推奨されます 。