
遺産分割を弁護士に依頼する際の費用は、複数の要素から構成されています。基本的な費用構成は以下の通りです:
主要な費用項目
現在の弁護士費用は完全自由化されており、各法律事務所が独自に料金を設定しています。そのため、同じ案件でも事務所によって費用に差が生じることがあります。
旧日弁連基準の参考値
日本弁護士連合会の旧報酬規程を参考にすると、着手金は経済的利益の5〜8%程度、報酬金は10〜16%程度が目安となります。
遺産分割協議を弁護士に依頼した場合の具体的な費用を、実際の事例で確認してみましょう。
事例1:1,500万円の遺産分割協議
相続人同士で揉めている遺産分割協議を解決すべく、弁護士に代理交渉を依頼し、依頼者が1,500万円の遺産を相続したケース。
項目 | 旧基準の場合 | 一般的な事務所の例 |
---|---|---|
法律相談料 | 11,000円 | 無料 |
着手金 | 616,000円 | 275,000円 |
報酬金 | 1,232,000円 | 1,430,000円 |
実費 | 約10,000円 | - |
合計 | 1,869,000円〜 | 1,705,000円 |
事例2:200万円の遺産分割協議
比較的少額の遺産分割の場合。
このように、遺産額が少ない場合でも一定の着手金が必要となるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。
遺産分割協議が成立しない場合、家庭裁判所での調停手続きに移行します。調停になると、協議段階よりも費用が増加する傾向があります。
協議から調停への費用増加例
2,000万円の遺産分割で協議が不成立となり、調停に移行したケース。
項目 | 旧基準の場合 | 一般的な事務所の例 |
---|---|---|
法律相談料 | 11,000円 | 無料 |
協議の着手金 | 799,300円 | 275,000円 |
調停の着手金 | 399,600円 | 110,000円 |
報酬金 | 1,598,600円 | 2,200,000円 |
出廷日当(8回) | 88,000円 | - |
実費 | 約30,000円 | - |
合計 | 2,926,500円〜 | 2,585,000円 |
調停特有の費用要素
調停は通常3〜6回程度の期日で終了しますが、複雑な案件では10回以上に及ぶこともあり、その分日当も増加します。
弁護士費用の報酬金は「経済的利益」に基づいて計算されますが、この算定方法は案外複雑です。
経済的利益の基本的な考え方
経済的利益とは、弁護士に依頼しなかった場合と比較して、依頼したことで得られた利益の額を指します。具体的には。
複雑な算定事例
例えば、5,000万円の遺産について。
この場合、報酬金は2,000万円を基準に計算されます。
特殊な財産の評価
不動産や株式などの評価が困難な財産については、時価評価額で経済的利益を算定します。この際、不動産鑑定士や税理士への依頼費用も実費として別途発生する可能性があります。
弁護士選択において、単純な費用比較だけでは判断できない重要なポイントがあります。
費用体系の透明性確認項目 📋
隠れた費用に注意 ⚠️
多くの依頼者が見落としがちな費用として以下があります。
費用対効果の判断基準
遺産額が300万円以下の場合、弁護士費用が遺産額を上回る可能性があります。この場合は、以下の視点で判断しましょう。
支払い方法の柔軟性 💳
一部の法律事務所では、以下のような支払い方法を提供しています。
特に相続問題では、遺産分割が成立するまで現金が拘束されることが多いため、支払い時期の柔軟性は重要な選択基準となります。
遺産分割の弁護士費用は案件の複雑さと遺産額に大きく左右されますが、早期の専門家介入により、結果的に費用を抑えられる場合も多くあります。複数の法律事務所で相談し、費用体系と解決方針を比較検討することが賢明です。