

自動車取得税は1968年(昭和43年)に創設された地方税で、道路建設や整備の財源として50年以上にわたって続いてきました 。この税制は自動車の取得価額に対して一律の税率(自家用車3%、営業用車・軽自動車2%)が課せられていました 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E5%8F%96%E5%BE%97%E7%A8%8E
2019年10月1日の消費税率10%への引き上げと同時に、自動車取得税は廃止され、代わりに環境性能割が導入されました 。この変更は、車がもたらすCO2排出や道路損傷などの社会的コストに着目した原因者負担の考え方に基づいています 。
参考)https://www.ms-ins.com/labo/higoro/article/095.html
環境性能割の最大の特徴は、車の環境性能に応じて税率が決まることです 。燃費が良く環境負荷の少ない車ほど税率が低くなり、最も環境性能の高い電気自動車などは非課税となります 。
自動車取得税の起源は、高度成長期に道路インフラの整備が急務となった時代に遡ります 。1968年の創設当初は道路特定財源の目的税として設けられ、2009年に普通税に変更されましたが、使途制限は継続していました 。
参考)https://www.wjsm.co.jp/article/public-Economy/a562
廃止の背景には、消費税との二重課税問題がありました 。自動車業界やユーザーからは「同じ商品に対して消費税と取得税の両方が課税されるのは不公平」という批判が長年続いていました。2014年の消費税8%への増税時に取得税の税率が引き下げられ、2019年の10%増税と同時に完全廃止となりました 。
また、環境問題への関心の高まりとともに、単純に取得に課税するのではなく、環境性能に応じて課税すべきという考えが広まったことも廃止の一因です 。
環境性能割は「自動車税環境性能割」(普通車)と「軽自動車税環境性能割」(軽自動車)の2つに分かれています 。どちらも都道府県が徴収する地方税で、新車・中古車を問わず自動車を取得した際に課税されます 。
参考)https://www.jucda.or.jp/tax/kankyouseinouwari/about/
税率は環境性能によって0%(非課税)から3%までの幅があります 。電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車、天然ガス自動車は非課税対象です 。ガソリン車やディーゼル車は、2030年度燃費基準の達成率に応じて税率が決まります 。
参考)https://www.nextage.jp/buy_guide/zeikin/463530/
取得価額が50万円以下の場合は課税されないという免税点は、自動車取得税と同じ仕組みが継続されています 。
自動車取得税では、自家用車3%、営業用車と軽自動車が2%の一律税率でした 。これに対し、環境性能割では環境性能に応じて細かく区分されています。
自家用乗用車の税率(2025年4月~2026年3月)
参考)https://www.ms-ins.com/labo/higoro/article/139.html
軽自動車の税率(同期間)
環境性能の高い車では大幅な減税が実現し、最高レベルの環境性能を持つ車は完全に免税となります 。一方、環境性能の劣る車では従来と同等またはそれ以上の税率が課される場合があります。
環境性能割の税額は「取得価額×税率」で計算されますが、取得価額の算定方法が新車と中古車で異なります 。
新車の場合
参考)https://www.sompo-direct.co.jp/otona/oshiete/car/acquisitiontax-abolished.html
取得価額 = 課税標準基準額 + 付加物価額(オプション装備)
課税標準基準額は車種・グレードごとに定められており、新車価格の約90%程度です 。カーナビやアルミホイールなど車体と一体化したオプションは付加物として加算されますが、フロアマットやシートカバーなど簡単に着脱できるものは含まれません 。
中古車の場合
参考)https://www.toyota-mobility-kanagawa.jp/u-car/column_u-car/202312-2_usedcar_kankyouseinouwari
取得価額 = 課税標準基準額 × 残価率
残価率は初度登録からの経過年数によって決まります 。例えば、3年経過した車の残価率は0.316、5年経過すると0.177となります 。
計算例
新車価格250万円の車(課税標準基準額225万円)が3年経過した中古車の場合。
環境性能割の導入により、車の環境性能によって税負担が大きく変わることになりました 。環境性能の高い車を購入するユーザーにとっては大幅な減税効果があり、一方で環境性能の劣る車では従来と同等以上の負担となる場合があります。
参考)https://www.nextage.jp/buy_guide/info/203916/
電気自動車やプラグインハイブリッド車などの次世代自動車では、従来3%だった税率が0%(非課税)となり、大幅な減税を実現しています 。例えば、300万円の電気自動車を購入した場合、従来の取得税では約9万円の税金がかかっていましたが、環境性能割では0円となります。
ハイブリッド車についても、燃費性能に応じて1~2%の税率が適用されるケースが多く、従来の3%から大幅に軽減されています 。一方、燃費基準を達成していないガソリン車では従来と同じ3%の税率が維持されており、環境性能による格差が明確になっています 。
また、軽自動車では従来2%だった税率が、環境性能に応じて0~2%の範囲で設定されており、最も環境性能の高い車では完全免税となっています 。