カーボンニュートラルと脱炭素の違い

カーボンニュートラルと脱炭素の違い

宅建業に関わる建築分野で重要となるカーボンニュートラルと脱炭素の概念について、定義から具体的な取り組み方法まで詳しく解説します。両者の違いを正確に理解できるでしょうか?

カーボンニュートラルと脱炭素の違い

カーボンニュートラルと脱炭素の概要
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カーボンニュートラル

温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質ゼロを目指す

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脱炭素

二酸化炭素の排出量自体を削減し、最終的にゼロを目指す

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建築分野への影響

省エネ基準義務化や建築物のエネルギー性能向上が必須

カーボンニュートラルの定義と概念

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることで、全体として実質ゼロにする考え方です。日本政府は2020年10月の菅首相(当時)による所信表明演説において、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/lca/17/2/17_103/_article/-char/ja/

 

この概念では、二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素などの温室効果ガス排出量から、植林や森林管理による吸収量や技術的な除去量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを指します。重要なのは、完全に排出をゼロにするのではなく、排出量と同等の吸収・除去を行うことで「実質ゼロ」を実現する点です。
参考)https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/gx/know/detail02.html

 

カーボンニュートラル達成のためには、排出量削減と吸収量増加の両面からのアプローチが必要となります。具体的な手法として、再生可能エネルギーの導入、森林育成による二酸化炭素吸収、DAC(直接空気回収)技術による除去などが挙げられます。

脱炭素の定義とアプローチ

脱炭素は、二酸化炭素の排出量自体を削減し、将来的に実質ゼロを目指す取り組みや施策を指します。カーボンニュートラルとは異なり、主にCO2の排出量をゼロにすることを目標としており、より直接的な削減アプローチを重視します。
参考)https://enemanex.jp/decarbonation-method/

 

脱炭素では化石燃料に依存しない社会システムへの転換が中心となります。具体的には、再生可能エネルギーによる発電、電気自動車の普及、水素エネルギーやアンモニア燃料の活用などが含まれます。これらは燃焼時に温室効果ガスを発生しないため、根本的な排出削減を実現できます。
参考)https://www.smbc-card.com/hojin/magazine/tips/decarbonization-carbon-difference.jsp

 

また、脱炭素の概念は二酸化炭素削減に焦点を当てたビジョンとしての側面が強く、現在の排出量が吸収量を上回る状況からの脱却を目指します。カーボンニュートラルが相殺によるバランス達成を重視するのに対し、脱炭素は排出源そのものの変革を求める点で違いがあります。
参考)https://solar-carport.bgpro.jp/column/decarbonization-carbon-neutral/

 

カーボンニュートラルと脱炭素の具体的違い

両者の最も重要な違いは、アプローチの方向性と対象範囲にあります。カーボンニュートラルは温室効果ガス全般(二酸化炭素、メタン、フロンガス類など)を対象とするのに対し、脱炭素は主に二酸化炭素に焦点を当てています。
参考)https://www.ntt.com/business/services/rink/knowledge/archive_107.html

 

実現手法においても明確な差があります。カーボンニュートラルでは、排出量が現状と変わらなくても吸収量で相殺できれば実現可能とされるため、植林プロジェクトや炭素オフセットなどの間接的手法が重要な役割を果たします。一方、脱炭素では排出源そのものの削減や代替を重視し、化石燃料からの根本的な脱却を目指します。
参考)https://eleminist.com/article/2724

 

時間軸の観点でも違いがあります。脱炭素は長期的な社会構造変革を伴うビジョナリーな概念である一方、カーボンニュートラルは2050年という具体的な目標年次を設定し、実現可能な施策の組み合わせによる達成を目指します。また、カーボンニュートラルは「ネットゼロ」「実質ゼロ」とも呼ばれ、国際的な政策目標として広く採用されています。
参考)https://www.mirait-one.com/miraiz/whatsnew/trend-data_0029.html

 

建築分野における脱炭素とカーボンニュートラル

宅建業界に直接影響する建築分野では、2050年カーボンニュートラル実現に向けて住宅・建築物の省エネ化が不可欠とされています。日本のエネルギー消費量の約3割を建築物分野が占めるため、この分野での取り組みが重要な位置を占めます。
参考)https://pfa21.jp/wp2018/wp-content/uploads/1_1_maeda.pdf

 

2025年4月からは、すべての新築建築物で省エネ基準への適合が義務化されます。従来は大規模・中規模な非住宅建築物のみが対象でしたが、戸建住宅を含むすべての新築建築物に拡大されました。具体的には「断熱等性能等級4」以上かつ「一次エネルギー消費量等級4」以上が求められます。
参考)https://restyle.tokyo/forbeginners/law-amendment.html

 

建築基準法の改正により、省エネ基準に適合しない建築物は建築確認が下りなくなります。基準は外皮性能基準(断熱性能)と一次エネルギー消費量基準の2つから構成され、建築物の熱的性能と設備機器の効率性の両面から評価されます。この制度は脱炭素社会実現への具体的なステップとして位置づけられており、宅建業者にとっても重要な法的要件となっています。
参考)https://magazine.zennichi.or.jp/commentary/18773

 

カーボンニュートラル実現に向けた企業取り組み事例

多くの企業が独自の目標設定と具体的施策を通じてカーボンニュートラル実現に取り組んでいます。味の素グループはサプライチェーン全体で2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、RE100(電力100%再生可能エネルギー化)に参画しています。
参考)https://green-transformation.jp/media/decarbonization/034/

 

花王株式会社は他社より高い目標として2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブを設定し、SBTイニシアチブから「1.5℃目標」認証を取得しました。2021年には国内すべてのロジスティクス拠点で使用電力100%再生エネルギー化を達成しており、先進的な取り組み事例として注目されています。
伊藤忠エネクス株式会社では、2030年CO2排出量50%削減、2050年カーボンニュートラル達成を目標とし、最終的にはサプライチェーン排出量削減と事業活動を通じた社会全体の温室効果ガス削減を目指しています。これらの企業事例は、カーボンニュートラルが単なる概念ではなく、具体的な経営戦略として実装されていることを示しています。
参考)https://service.itcenex.com/media/archives/what-is-decarbonized-company/