
海外投資家の日本株投資は2025年に入って活発化している。東京証券取引所のデータによると、8月第2週(12~15日)には現物株で5,737億円の買い越しを記録し、先物取引では1.1兆円の買い越しとなった。この規模は約6年ぶりの大きさで、日経平均株価の最高値更新の原動力となった。
2024年の現物市場において、海外投資家の売買シェアは59.1%に達し、先物市場では75.7%を占める圧倒的な存在感を示している。これは日本株市場の価格形成において、海外勢の動向が決定的な影響を与えることを意味している。
特筆すべきは買い越しの継続性である。2025年春には9週連続で3.9兆円の買い越しを記録し、2023年の11週連続8.4兆円に次ぐ大規模な投資となった。このような長期間にわたる買い越しは、単なる短期的な投機ではなく、構造的な投資戦略の変化を示唆している。
過去10年のデータ分析から、海外投資家の日本株売買には明確な季節性が確認される。特に4月には大規模な現物株買い越しが発生する傾向があり、2023年4月第2週には約1兆495億円の買い越しを記録した。
この季節性は複数の要因によって説明される。
また、8月にも買い越し傾向が強まる特徴があり、夏季休暇明けの投資活動再開や下半期に向けた戦略転換が影響している可能性が高い。
海外投資家と個人投資家の売買行動は対照的なパターンを示している。海外投資家は「モメンタム投資」、個人投資家は「逆張り投資」の傾向が強い。
海外投資家の特徴。
個人投資家の特徴。
この対照的な行動パターンは、市場の価格形成メカニズムに重要な影響を与えている。海外勢の買いが株価上昇を牽引する一方、個人投資家の売りがその上昇を一定程度抑制する構造となっている。
海外投資家の日本株買い越しには複数の構造的要因が存在する。第一に、日本企業のコーポレートガバナンス改革の進展がある。東京証券取引所の市場再編や企業価値向上への取り組み強化により、海外機関投資家の関心が高まっている。
第二に、ESG投資の拡大が挙げられる。COVID-19パンデミック後、日本でもESG投資への関心が高まり、サステナブル資産の運用残高は2016年から2020年にかけて6倍の2.8兆ドルに拡大した。これは世界第3位の規模で、海外投資家にとって魅力的な投資対象となっている。
第三に、日本企業の海外展開力と収益性の向上がある。サンリオやソニーグループなど、グローバル市場で独自の強みを持つ企業が評価されており、海外投資家の投資対象として注目されている。
経済政策の影響。
海外投資家の投資戦略は、単純な短期売買から長期的な価値投資へとシフトしている兆候が見られる。2025年の買い越しパターンを分析すると、現物株への投資比重が高まっており、これは中長期的な投資スタンスを示唆している。
投資戦略の変化。
今後の見通しに影響する要因。
市場関係者は「向後の展望が明確になったことで、海外投資家の日本市場での買いが回復している」と分析している。ただし、買いの持続性については米国の金利動向に大きく左右されるとの見方が強い。
リスク要因。
海外投資家の日本株買い越しトレンドは、日本経済の構造改革と企業価値向上の進展を反映している。今後もこの傾向が持続するかは、グローバル経済環境と日本企業の収益性向上の両面から注視する必要がある。投資家にとっては、海外勢の動向を理解することが、日本株市場での成功戦略を構築する上で不可欠となっている。