

持分法を適用する投資会社は、被投資会社の資産・負債を時価評価する際に税効果会計を適用する必要があります 。具体的には、持分法適用会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分について部分時価評価法により評価し、これに伴う一時差異に対して税効果を認識します 。
参考)https://renketsu.info/equity-method/tax-effect/
税効果会計の適用対象は以下の3つの分野に分類されます。まず、持分法適用開始時における被投資会社の資産・負債の時価評価に伴う評価差額です 。次に、持分法適用会社の留保利益に係る将来の配当時の追加税負担、そして連結会社と持分法適用会社間の未実現損益の消去に伴う一時差異への対応となります 。
参考)https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=119
これらの税効果処理は、連結財務諸表において企業グループ全体の真実の財政状態及び経営成績を適切に表示するため不可欠な手続きとなります 。持分法では、被投資会社を完全に支配していないため、連結子会社とは異なる会計処理が求められる点に注意が必要です 。
参考)https://www.ey.com/ja_jp/technical/corporate-accounting/commentary/consolidated/commentary-consolidated-2022-05-09-03
持分法適用時における評価差額の税効果は、部分時価評価法に基づいて処理されます 。これは、投資会社の持分相当額についてのみ時価評価を行い、当該部分に対応する税効果を認識する方法です 。連結子会社で採用される全面時価評価法とは大きく異なるポイントとなります。
参考)https://cpa-noborikawa.net/bubun-jika-hyoka-ho/
例えば、持分法適用会社が保有する土地に含み益100万円がある場合、投資会社の持株比率が30%であれば、評価差額として認識されるのは30万円となります 。この30万円の評価差額に対して、法定実効税率を適用して税効果額を計算し、繰延税金負債または繰延税金資産として計上します 。
参考)https://renketsu.info/equity-method/tax-effect/valuation-diff/
部分時価評価法では、追加取得時にその都度評価差額を再計算する必要があります 。これは、各取得時点における投資額に含まれるのれんの金額を正確に算定するため、追加取得日の時価に基づいて評価差額を計算し直すことが要求されるためです。この処理により、持分法における投資の実態を適切に財務諸表に反映させることができます。
持分法適用会社の留保利益については、将来の配当により親会社において追加納税が発生すると見込まれる税額を繰延税金負債として計上する必要があります 。この処理は、受取配当等の益金不算入制度の改正により、25%以上3分の1以下の持株割合における益金不算入割合が全額から50%へ引き下げられたことに伴うものです 。
参考)https://www.cs-acctg.com/column/kaikei_keiri/005932.html
具体的な計算方法は、持分法適用会社の留保利益のうち将来配当として受け取る見込み額に、益金不算入として取り扱われない割合(50%)を乗じ、さらに親会社の実効税率を適用します 。例えば、留保利益1,000万円、実効税率30%の場合、1,000万円×50%×30%=150万円が繰延税金負債として計上されます 。
参考)https://office.uchida016.net/retained-earnings-dtax/
ただし、持分法適用会社に留保利益を半永久的に配当させないという投資会社の方針又は株主間の協定がある場合には、税効果を認識しないことが認められています 。しかし、持分法適用関連会社の場合、子会社と異なり投資会社の支配下にないため、この要件の適用には慎重な検討が必要とされます 。
参考)https://www.ey.com/ja_jp/technical/library/info-sensor/2019/info-sensor-2019-03-01
連結会社と持分法適用会社間の取引における未実現損益の消去では、取引の方向性により税効果の処理方法が異なります 。ダウンストリーム(投資会社が売手)の場合、投資会社が納税主体となるため、法人税等調整額で調整し、相手科目は繰延税金資産となります 。
参考)https://keirinooshigoto.com/4367
一方、アップストリーム(持分法適用会社が売手)の場合、被投資会社が納税主体となるため、持分法による投資損益で調整し、相手科目は投資勘定(A社株式)となります 。これは、持分法では個別財務諸表の合算を行わず、被投資会社の利益のうち投資会社の持分のみを加算するという持分法の性質によるものです 。
参考)https://renketsu.info/equity-method/unrealized-losses-and-gains/up-stream/
未実現利益の消去額については、ダウンストリームでは全額消去するのに対し、アップストリームでは持分相当額のみを消去します 。例えば、未実現利益40万円、持分比率25%の場合、アップストリームでは10万円(40万円×25%)のみが消去対象となり、これに対応する税効果も持分相当額について計算されます 。
参考)https://ishiomaru.com/kaikeitext/renketumotibun2/
持分法における税効果会計では、連結子会社と異なる特有の論点が存在するため、実務上の留意が必要です。まず、持分法適用会社の決算日が異なる場合の税効果の取り扱いがあります。決算日の差異により一時差異の発生時期が異なる可能性があるため、適切な期間対応を検討する必要があります 。
また、持分法適用会社の会計方針が投資会社と異なる場合、統一処理に伴う修正仕訳についても税効果を検討する必要があります 。例えば、減価償却方法や引当金の計上基準が異なる場合、統一後の会計処理に基づく一時差異について税効果を適用します。
さらに、持分法適用会社の業績が大幅に悪化し投資の帳簿価額を零まで減額した場合でも、その後の回復に備えて税効果の追跡管理を継続する必要があります。国際会計基準(IFRS)への移行を検討している企業では、持分法における税効果の取り扱いについても事前に影響を分析し、適切な移行戦略を策定することが重要となります 。
参考)https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/69203/