
積載荷重とは、建築物に載せられる人間や家具・調度品・物品などの重量による荷重のことです。建築基準法施行令第85条では、建築物の実況に応じて計算することを原則としつつ、用途別の標準値も規定しています 。
参考)https://kakunin-shinsei.com/movable-load/
この荷重は固定荷重とは異なり、時間や使用状況によって変動する特性があります。そのため、建築物の安全性を確保するために、過小評価しないよう留意し、適切な数値を設定することが重要です 。
参考)http://machinokozoya.com/2020/04/24/2264/
建築基準法では、構造計算の種類に応じて「床の構造計算用」「大梁・柱・基礎の構造計算用」「地震力計算用」の3つの積載荷重値が定められており、この順序で値が小さくなっていくのが特徴です 。
参考)https://www.young-structure.com/entry/%E9%95%B7%E6%9C%9F%E8%8D%B7%E9%87%8D
建築基準法施行令第85条に基づく積載荷重の一覧表は、建築物の用途や居室の種類によって詳細に分類されています。主要な用途別の積載荷重値(N/㎡)は以下の通りです 。
住宅・医療施設系
事務・教育施設系
商業・集会施設系
特殊用途
参考)https://www.kichinan.co.jp/journal/warehouse/warehouse-live-load/
これらの数値は、各施設の使用特性や混雑度、物品の集積状況などを考慮して設定されており、安全性を確保するための最低基準として機能しています 。
参考)https://d-monoweb.com/blog/installing-equipment-indoors/
積載荷重を構造計算に適用する際は、計算対象となる構造部材の種類と支配面積を考慮して適切な数値を選択する必要があります。床・小梁用、大梁・柱・基礎用、地震用の3つの値が異なる理由は、荷重の分散効果と計算目的の違いにあります 。
床・小梁用積載荷重は、荷重の偏在や集中を考慮して最も大きな値に設定されています。例えば住宅の場合1800N/㎡で、これは1㎡当たり60kgの人が3人いる状況を想定しており、ピアノや本棚などの重量物の集中配置も考慮されています 。
大梁・柱・基礎用積載荷重では、複数の床を支持する構造部材の特性上、荷重が平均化されることを考慮して床用より小さな値(住宅では1300N/㎡)が適用されます。これは、全ての床に同時に最大荷重がかかる確率が低いことを反映しています 。
地震用積載荷重は、地震力計算において建物全体の重量を求める際に使用され、荷重の偏在を考慮する必要がないため最も小さな値(住宅では600N/㎡)となります。これは単純に人や家具の重量の合計を表しています 。
参考)https://books-memorandum.com/seismic_load/
実際の構造計算では、建築基準法の標準値以外にも考慮すべき事項があります。特に重要なのが荷重減少係数の適用です。大梁・柱・基礎の計算において、支える床の数が複数ある場合、統計的な考え方に基づいて積載荷重を減少させることができます 。
参考)https://www.kenchiku-shikaku.net/docs/h30deta/h29-3-koumoku9.pdf
支える床の数に応じた減少係数は以下のように設定されています。
この制度は、多層階建築物において全ての階に同時に最大荷重が作用する確率が極めて低いことを考慮した合理的な設計手法です 。
参考)https://itsunaru.com/sekisai03/
また、倉庫業を営む倉庫については、建築基準法施行令第85条第3項により、計算値が3900N/㎡未満であっても最低3900N/㎡として設計することが義務付けられています。これは1㎡あたり約400kgに相当し、倉庫業の特殊性を反映した規定です 。
参考)https://www.yurutto-kenchikulife.com/statical-load/
さらに実務では、空きスペースの人荷重も考慮する必要があります。家具が配置されていない部分でも、人が立ち入る可能性を考慮して適切な荷重を設定することが重要です 。
参考)https://kozosekkeiblog.com/live-load
現代の建築実務では、従来の積載荷重計算に加えて、建築物の高層化や用途の多様化に対応した技術的考慮が求められています。特に超高層建築物や大スパン構造では、風荷重との相互作用や動的効果も考慮した詳細な検討が必要になります 。
参考)https://www.mdpi.com/2075-5309/14/1/140/pdf?version=1704678350
BIM(Building Information Modeling)技術の発達により、積載荷重の計算精度も向上しています。3次元モデル上で実際の使用状況をシミュレーションし、より現実的な荷重分布を把握することが可能になっており、設計の最適化に貢献しています。
また、サステナブル建築の観点から、積載荷重を適正化することで構造材料の使用量を削減し、建築物のライフサイクル全体での環境負荷低減を図る取り組みも増えています。過度に安全側に設定された積載荷重を見直し、実態に即した合理的な値を採用することで、経済性と安全性を両立させる設計手法が求められています。
IoT技術を活用した荷重モニタリングシステムも実用化されつつあり、建築物の使用実績データを蓄積することで、将来の積載荷重設定の根拠となるデータベースの構築も進んでいます。これらの技術革新により、より精密で効率的な積載荷重の設定が可能になりつつあります。