新都市基盤整備法とは何か宅建士が知るべき基本概要

新都市基盤整備法とは何か宅建士が知るべき基本概要

新都市基盤整備法とは大都市の人口集中緩和を目的とした法律です。1972年に制定されたこの法律の意義と重要事項説明における制限内容をわかりやすく解説。実際の実施事例がない理由とは何でしょうか?

新都市基盤整備法とは

新都市基盤整備法の概要
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制定背景

1972年、大都市の人口集中と宅地需要への対応として制定

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法律の目的

新都市建設により大都市圏の秩序ある発展を促進

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重要事項説明

不動産取引における法定の説明義務事項

新都市基盤整備法の制定背景と目的

新都市基盤整備法は、1972年(昭和47年)に制定された法律で、高度経済成長期における人口の都市集中問題に対応するため制定されました。
参考)https://iqrafudosan.com/channel/shintoshikiban-seibijigyo

 

この法律の正式な目的は「人口の集中の著しい大都市の周辺の地域における新都市の建設に関し、新都市基盤整備事業の施行その他必要な事項を定めることにより、大都市圏における健全な新都市の基盤の整備を図り、もって大都市における人口集中と宅地需給の緩和に資するとともに大都市圏の秩序ある発展に寄与すること」とされています。
参考)https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000086

 

つまり、急激な人口増加により大都市圏に集中した人口を周辺地域に分散させ、計画的で健全な都市開発を促進することが主たる目的です。
参考)https://www.yokomatsu.info/blog/2015/12/21/%E6%96%B0%E9%83%BD%E5%B8%82%E5%9F%BA%E7%9B%A4%E6%95%B4%E5%82%99%E6%B3%95/

 

新都市基盤整備事業の具体的内容

新都市基盤整備事業は、単なる住宅地開発ではなく、住宅・官公庁・医療・教育・商業施設を含めた新都市の建設を目的とした包括的な事業です。
参考)https://t-andco.com/shintosikibanseibihou/

 

この事業の特徴は、1ヘクタール当たり100人から300人を基準として、5万人以上が居住できる規模の区域において、都市計画事業として施行することとされている点です。事業区域内の中心となる「開発誘導地区」の土地を地方公共団体が買収して整備し、残りの周辺土地は区画整理の手法(換地方式)により市街地整備を行います。
参考)https://chintaichishiki-bank.com/knowledge/20220530/

 

開発誘導地区とは、住宅・官公庁・医療・教育および商業施設を建設する開発の中核地区を指し、都市として開発するための中核となる地区として定義されています。
参考)https://lawzilla.jp/law/347AC0000000086?n=ln2.6amp;mode=only

 

新都市基盤整備法における不動産取引の制限

不動産の重要事項説明において、新都市基盤整備法に関する説明が義務付けられています。
主な制限内容は「開発誘導地区内の土地等に関する権利の処分の制限」です。具体的には、新都市基盤整備法第50条に基づく建築物の建築義務があり、教育施設、医療施設、購買施設その他の施設で施行区域内の居住者の共同の福祉又は利便のため必要な施設を建築すべき土地を譲り受けた者は、その譲受けの日から2年以内に処分計画又は実施計画で定める建築物を建築しなければなりません。
参考)https://www.pref.osaka.lg.jp/shinsa/o140040/shinsa_000253.html

 

ただし、国、地方公共団体および地方住宅供給公社はこの建築義務の対象外とされています。

新都市基盤整備法の実施実例がない理由

新都市基盤整備法は制定から50年以上が経過しているにもかかわらず、実際に新都市基盤整備事業が計画・実行された事例は現在まで一例もありません
参考)https://www.mec-h.com/words/detail?n=2533

 

この理由として、大規模ニュータウン整備を目的に土地収用権能を活用した土地の部分買収と換地手法を組み合わせる事業手法として期待されたものの、実際の適用には至らなかったことが挙げられます。人口減少社会を迎えた現在では、大規模ニュータウン整備の時代は終わり、新都市基盤整備事業適用の場はなくなりつつあることも事実です。
しかし、部分的な土地買収と換地という手法の組み合わせという考え方は、現在任意で行われている土地区画整理事業の減価補償金を活用した減歩緩和のための土地先買いに類似する仕組みがあり、既成市街地再編の手法として今日でも検討に値する制度として評価されています。

新都市基盤整備法と関連する都市計画制度

新都市基盤整備事業は、都市計画法第12条に定められた市街地開発事業の一つとして位置づけられています。市街地開発事業には、土地区画整理事業、新住宅市街地開発事業、工業団地造成事業、市街地再開発事業、新都市基盤整備事業、住宅街区整備事業、防災街区整備事業の7種類があります。
参考)https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000034423.html

 

この中で土地区画整理事業と市街地再開発事業は全国で広く活用されており、新住宅市街地開発事業や工業団地造成事業も拡大する都市の受け皿整備として一定の役割を果たしてきました。新都市基盤整備事業は、換地手法を基礎とする土地区画整理事業と土地収用権能を有する新住宅市街地開発事業の双方の利点を活かし、欠点を補う事業手法として誕生したという経緯があります。
国土交通省による重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧
新都市基盤整備法を含む重要事項説明で説明すべき各法令の概要について詳細に解説されています。

 

e-Gov法令検索|新都市基盤整備法
新都市基盤整備法の全条文を確認できる政府公式の法令データベースです。