
消防法における危険物は、火災発生の危険性、火災拡大の危険性、消火困難性の3つの要素を基準として分類されています。不動産業従事者として、これらの分類を正確に理解することは、物件管理や賃貸借契約において極めて重要です。
消防法第2条第7項では「別表第1の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの」と危険物を定義しており、第1類から第6類まで体系的に分類されています。
各類別の基本的性質は以下の通りです。
不動産業では特に第4類の引火性液体(ガソリン、灯油、油性塗料等)の取り扱い機会が多く、テナント誘致や建物管理において重要な知識となります。
第1類酸化性固体は、そのもの自体は燃焼しませんが、他の物質を強く酸化させる性質を持つ固体です。可燃物と混合した際に、熱・衝撃・摩擦によって分解し、極めて激しい燃焼を起こさせる危険性があります。
主要品目と指定数量。
第1類は性質により3つの種別に分かれます。
不動産業において、清掃用品や消毒剤の中に第1類危険物が含まれている場合があるため、テナント管理や清掃業者への委託契約時に確認が必要です。
第2類可燃性固体は、火炎によって着火しやすい固体または比較的低温(40℃未満)で引火しやすい固体です。出火しやすく燃焼速度が速いため、消火が困難という特徴があります。
代表的物質と指定数量。
第2類は以下の種別に分類されます。
建設現場や改修工事において、溶接材料や金属粉を扱う機会が多い不動産業では、これらの物質の保管・取扱に関する知識が欠かせません。特にマグネシウムや亜鉛粉は建材加工で使用されることがあります。
第3類は空気にさらされることにより自然に発火する危険性、または水と接触して発火もしくは可燃性ガスを発生する物質です。最も取り扱いに注意を要する類別の一つです。
主要物質と指定数量。
第3類の種別分類。
不動産業では、古い建物の解体や改修時に、過去に使用された特殊な建材や化学物質に遭遇する可能性があります。特に工場跡地や研究施設の転用時には、残存物質の確認が重要です。
水と反応して可燃性ガスを発生するため、消火の際は水系消火剤の使用が禁止されており、乾燥砂による窒息消火が基本となります。
第4類引火性液体は、不動産業において最も身近な危険物です。液体であって引火性を有するもので、引火点250℃未満の物質が該当します。
詳細分類と指定数量。
特殊引火物(指定数量50L):
第1石油類。
アルコール類(400L)。
第2石油類。
第3石油類。
第4石油類(6,000L)。
動植物油類(10,000L)。
不動産業では建物管理でボイラー用重油、発電機用軽油、清掃用溶剤などを扱うため、適切な保管施設の確保が必要です。特に地下タンクや屋外タンクでの貯蔵には消防法に基づく許可申請が必要となります。
第5類自己反応性物質は、固体または液体で、加熱分解等により比較的低い温度で多量の熱を発生し、爆発的に反応が進行する物質です。
第5類主要物質と指定数量:
第5類は温度管理が極めて重要で、貯蔵所では25℃以下に保つ冷蔵設備が必要な場合があります。
第6類酸化性液体は、液体でそのもの自体は燃焼しませんが、混在する他の可燃物の燃焼を促進する性質を有します。
第6類主要物質と指定数量:
不動産業での第5類・第6類の取り扱いは限定的ですが、研究施設や工場の賃貸・売買時には、これらの物質の残存確認と適切な処理が必要です。特に過酸化水素は漂白剤や消毒剤として使用されることがあり、清掃業務委託時の注意点となります。
これらの物質は他の危険物との混在を避け、専用の貯蔵設備での管理が法的に義務付けられています。不動産業者として、テナント審査時にこれらの物質の使用予定を確認し、適切な設備を備えた物件を提案することが重要です。
参考:消防庁公式サイト - 危険物の法令情報
消防法における危険物の詳細分類と性質について
参考:厚生労働省資料 - 消防法危険物取扱基準
危険物施設の安全確保に関するガイドライン