
証拠保全申立書の作成において、民事訴訟規則第153条に基づく必須記載事項を確実に記載することが重要です。申立書には以下の事項が必要不可欠となります。
当事者の表示に関する記載項目:
事件表示の方法:
証拠保全申立書の作成では、書式の正確性が手続き成功の鍵となります。特許庁の様式第66を参考とすることで、記載漏れを防ぐことができます。不動産関連の証拠保全では、登記事項や契約書類、現地の状況など多岐にわたる証拠が対象となるため、事前の整理が欠かせません。
証明すべき事実の記載は、申立人の主張を裏付ける具体的事実を明確に示す必要があります。実務上は本案訴訟の訴訟物を特定するのに必要な事実も記載されることが多く、ある程度概括的であっても認められる傾向があります。
証明すべき事実の記載における注意点:
不動産取引における証拠保全では、契約締結時の状況、物件の瑕疵、当事者間の合意内容など、後に争点となりうる事実を具体的に記載することが求められます。証明すべき事実が不明確な場合、裁判官から釈明を求められる可能性があります。
証拠保全の効果を最大化するためには、将来の本案訴訟における立証計画を見据えた戦略的な記載が必要です。
証拠保全の事由は「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用するのに困難となる事情」を具体的に主張する必要があります。裁判所は抽象的なおそれではなく、個別・具体的なおそれがあることが疎明されていることを重視します。
証拠保全事由の典型例:
疎明方法の具体例:
不動産業界では建物の劣化、工事記録の廃棄、関係者の転職など、時間経過による証拠散逸のリスクが高いことを具体的に疎明することが重要です。疎明資料の選択と提出方法も、証拠保全決定の成否を左右する重要な要素となります。
証拠隠滅のおそれを主張する場合は、相手方の過去の行動パターンや、類似事案での対応実績など、客観的根拠に基づく疎明が求められます。
証拠保全の申立てにおける管轄裁判所の選定は、訴えの提起前後で異なる基準が適用されます。適切な管轄選択は手続きの迅速な進行に直結します。
訴え提起前の管轄基準:
訴訟係属中の管轄原則:
不動産関連の証拠保全では、物件所在地、契約締結地、当事者の住所地など複数の管轄根拠が考えられるため、最も効率的な管轄を戦略的に選択することが重要です。執行官送達の利便性や証拠調べ実施の効率性も考慮要因となります。
管轄裁判所の運用方針や実務慣行も地域により異なるため、事前の確認が推奨されます。特に検証の記録化方法については、裁判所により運用が異なるため、管轄裁判所への事前確認が不可欠です。
証拠保全決定後の手続きでは、執行官送達から証拠調べ実施まで、綿密な準備と適切な対応が求められます。手続きの主体は裁判所であり、申立人は補助的役割に徹することが重要です。
決定後の手続きスケジュール:
証拠調べ実施時の準備事項:
証拠保全の成功には、検証物目録の作成が極めて重要です。目録に何をどのような形で記載するかによって、結果が大きく変わるため、経験豊富な専門家による事前検討が不可欠です。
申立人の行動指針:
不動産関連の証拠保全では、建物の構造や設備の詳細、契約書類の保管状況、関係者の証言など多様な証拠が対象となります。事前の準備不足は決定的な証拠の見落としに繋がるため、十分な検討が必要です。
相手方は送達時点で証拠保全決定を把握するため、それまでの秘密保持が成功の鍵となります。また、決定に対する不服申立てはできないものの、申立却下決定に対しては抗告が可能です。