証拠保全申立書ひな形作成から手続き流れまで完全解説

証拠保全申立書ひな形作成から手続き流れまで完全解説

不動産業従事者が知るべき証拠保全申立書の作成方法と手続きの流れを詳しく解説します。申立書ひな形の活用法から疎明方法まで実務に役立つ情報を提供。あなたの証拠保全手続きは適切に進められていますか?

証拠保全申立書作成手続き

証拠保全申立書作成の基本ステップ
📝
申立書記載事項の確認

当事者表示から証拠保全事由まで必須項目を整理

🔍
証拠特定と検証物目録作成

保全対象とする証拠の具体的な特定と整理

⚖️
管轄裁判所の選定

訴提起前後の手続きと管轄の違いを理解

証拠保全申立書記載事項の基本構成

証拠保全申立書の作成において、民事訴訟規則第153条に基づく必須記載事項を確実に記載することが重要です。申立書には以下の事項が必要不可欠となります。
当事者の表示に関する記載項目:

  • 申立人の住所・氏名・国籍
  • 代理人がいる場合の代理人情報
  • 相手方の住所・氏名・連絡先
  • 電話番号やファクシミリ番号の記載

事件表示の方法:

  • 審判請求前の場合:「特許第〇〇〇〇〇〇〇号に関する証拠保全申立事件」
  • 審判請求後の場合:「無効〇〇〇〇-〇〇〇〇〇に関する証拠保全申立事件」

証拠保全申立書の作成では、書式の正確性が手続き成功の鍵となります。特許庁の様式第66を参考とすることで、記載漏れを防ぐことができます。不動産関連の証拠保全では、登記事項や契約書類、現地の状況など多岐にわたる証拠が対象となるため、事前の整理が欠かせません。

証拠保全証明すべき事実の特定方法

証明すべき事実の記載は、申立人の主張を裏付ける具体的事実を明確に示す必要があります。実務上は本案訴訟の訴訟物を特定するのに必要な事実も記載されることが多く、ある程度概括的であっても認められる傾向があります。
証明すべき事実の記載における注意点:

  • 抽象的な記載ではなく、具体的な事実関係を明示
  • 申立人の主張を裏付ける事実の詳細な説明
  • 本案訴訟との関連性を明確にする記載
  • 争点となる事実関係の特定

不動産取引における証拠保全では、契約締結時の状況、物件の瑕疵、当事者間の合意内容など、後に争点となりうる事実を具体的に記載することが求められます。証明すべき事実が不明確な場合、裁判官から釈明を求められる可能性があります。
証拠保全の効果を最大化するためには、将来の本案訴訟における立証計画を見据えた戦略的な記載が必要です。

 

証拠保全事由の疎明方法と実務対応

証拠保全の事由は「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用するのに困難となる事情」を具体的に主張する必要があります。裁判所は抽象的なおそれではなく、個別・具体的なおそれがあることが疎明されていることを重視します。
証拠保全事由の典型例:

  • 証拠が滅失・変更するおそれがある場合
  • 時間の経過により取得できなくなる場合
  • 証拠隠滅行為のおそれが具体的にある場合
  • 証人の高齢化や健康状態悪化による証言困難

疎明方法の具体例:

  • 相手方による証拠隠滅行為を示す資料
  • 証人の診断書や高齢を示す書面
  • 検証対象物の劣化状況を示す写真
  • 時間の経過による証拠価値減少を示す資料

不動産業界では建物の劣化、工事記録の廃棄、関係者の転職など、時間経過による証拠散逸のリスクが高いことを具体的に疎明することが重要です。疎明資料の選択と提出方法も、証拠保全決定の成否を左右する重要な要素となります。
証拠隠滅のおそれを主張する場合は、相手方の過去の行動パターンや、類似事案での対応実績など、客観的根拠に基づく疎明が求められます。

証拠保全管轄裁判所の選定基準

証拠保全の申立てにおける管轄裁判所の選定は、訴えの提起前後で異なる基準が適用されます。適切な管轄選択は手続きの迅速な進行に直結します。
訴え提起前の管轄基準:

  • 尋問を受けるべき者の居所を管轄する裁判所
  • 文書を所持する者の居所を管轄する裁判所
  • 検証物の所在地を管轄する裁判所
  • 地方裁判所または簡易裁判所

訴訟係属中の管轄原則:

  • 最初の口頭弁論期日指定後は受訴裁判所
  • 弁論準備手続または書面準備手続開始後も受訴裁判所
  • 急迫の事情がある場合の例外規定

不動産関連の証拠保全では、物件所在地、契約締結地、当事者の住所地など複数の管轄根拠が考えられるため、最も効率的な管轄を戦略的に選択することが重要です。執行官送達の利便性や証拠調べ実施の効率性も考慮要因となります。
管轄裁判所の運用方針や実務慣行も地域により異なるため、事前の確認が推奨されます。特に検証の記録化方法については、裁判所により運用が異なるため、管轄裁判所への事前確認が不可欠です。

証拠保全決定後の手続き流れと注意点

証拠保全決定後の手続きでは、執行官送達から証拠調べ実施まで、綿密な準備と適切な対応が求められます。手続きの主体は裁判所であり、申立人は補助的役割に徹することが重要です。
決定後の手続きスケジュール:

  • 執行官送達:証拠調べ実施の1時間半~2時間前
  • 相手方への通知と決定書送達
  • 証拠調べ当日の現地での手続き実施
  • 検証調書の作成と写真・コピーの添付

証拠調べ実施時の準備事項:

  • カメラや専門カメラマンの手配
  • コピー機の持参(相手方からの貸与は期待できない)
  • 検証物目録に基づく対象物の確認
  • 裁判所職員との連携確認

証拠保全の成功には、検証物目録の作成が極めて重要です。目録に何をどのような形で記載するかによって、結果が大きく変わるため、経験豊富な専門家による事前検討が不可欠です。
申立人の行動指針:

  • 裁判所から尋ねられない限り発言を控える
  • 手続きの補助に徹し、主導権は裁判所に委ねる
  • 証拠調べ後の写真・コピーの整理と提供
  • 検証調書への適切な添付資料の準備

不動産関連の証拠保全では、建物の構造や設備の詳細、契約書類の保管状況、関係者の証言など多様な証拠が対象となります。事前の準備不足は決定的な証拠の見落としに繋がるため、十分な検討が必要です。
相手方は送達時点で証拠保全決定を把握するため、それまでの秘密保持が成功の鍵となります。また、決定に対する不服申立てはできないものの、申立却下決定に対しては抗告が可能です。