
薬剤師法第27条では、薬局開設者に対して調剤済み処方箋の保存義務を明確に定めています 。具体的には「薬局開設者は、当該薬局で調剤済みとなった処方せんを、調剤済みとなった日から三年間、保存しなければならない」と規定されており、これは1960年の薬剤師法制定以来変更されていません 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001311524.pdf
この保存期間は、調剤後の安全性に係る問題への対応および紙の運用を前提とした薬局における実施可能性の観点を考慮して設定されました 。保存義務の対象となるのは調剤済みの処方箋だけでなく、薬剤師法第28条に基づく調剤録についても最終記入日から3年間の保存が必要です 。
参考)https://shoko-bannin.com/5856
💡 現在、調剤報酬請求権の消滅時効が診療月の翌月から5年間とされているため、実務上は処方箋も5年間保存することが推奨されています 。
参考)https://xn--ruq167cnto080a.com/media_key/3158/
厚生労働省は2024年7月、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において処方箋等の保存期間を現行の3年から5年に延長することを了承しました 。この改正は2025年の通常国会で薬剤師法の改正を目指しており、実現すれば1960年の薬剤師法制定以来初めての保存期間改定となります 。
参考)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA31B930R30C24A7000000/
延長の背景には、電子データでの保管が容易になったことと、医師・歯科医師の診療録保存期間(5年間)との整合性を図る目的があります 。現在では処方箋をスキャンして電子データとして保存する方法が広まっており、処方箋と調剤録の保存期間も医師のカルテと同様に5年に延長される予定です 。
🏥 この法改正により、薬局と医療機関の情報共有における保存期間の不整合が解消され、電子処方箋の普及促進が期待されています 。
電子処方箋の運用開始により、処方箋の保存方法に大きな変化が生まれています 。厚生労働省は2023年から電子処方箋管理サービスを通じた調剤済み処方箋の保存サービスを開始し、薬局は紙処方箋を含む調剤結果データを5年間保存できるようになりました 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001261422.pdf
このサービスは薬局1施設当たり年額2500円の有償サービスとして提供されており、保存されたデータは原本として扱うことができます 。調剤年月日から5年を経過すると、3か月の猶予期間を経て自動的に電子処方箋管理サービスから削除される仕組みとなっています 。
参考)https://yaku-job.com/column/custom/preservation_service/
⚡ 電子保存では従来の紙媒体に比べて保管場所を必要とせず、情報の検索や共有も容易になるため、医療機関間での情報共有がスムーズになり、薬の重複処方や危険な飲み合わせの防止に寄与します 。
参考)https://shoko-bannin.com/6190
通常の処方箋は薬剤師法により3年間の保存が義務付けられていますが、特定の法律に基づく処方箋については5年間の保存が必要となる場合があります 。障害者総合支援法に基づく精神通院医療、生活保護法、児童福祉法、難病の患者に対する医療等に関する法律、結核予防法に関連する処方箋は、それぞれの法律の規定により5年間の保存が義務付けられています 。
これらの特例法適用処方箋を取り扱う薬局では、どの処方箋がどの法律に該当するかを個別に判断する必要があります 。しかし、管理の複雑さを避けるため、多くの薬局では全ての処方箋を一律で5年間保存する方針を採用しています 。
📝 一律5年保存により、誤って処方箋を早期に廃棄してしまうリスクや法的トラブルを防げるだけでなく、スケジュール管理も簡単になり、薬局の日々の運営が効率的かつ安全になります 。
薬剤師法では処方箋保存と併せて調剤録の保存も義務付けられていますが、薬歴(薬剤服用歴)の保存期間については異なる根拠に基づいています 。調剤録は薬剤師法第28条により最終記入日から3年間の保存が義務付けられているのに対し、薬歴の保存期間は厚生労働省保険局医療課長通知により「最終の記入の日から起算して3年間保存する」と定められています 。
参考)https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/ph-management-keep-medicationhistory
調剤録は法的に記載が義務付けられた公的記録であり、調剤した薬剤の名称・分量・調剤年月日・処方医師名などの基本情報を記録します 。一方、薬歴は患者の服薬状況や薬物治療に関する情報を時系列で管理し、服薬指導の内容や患者の反応などより詳細な情報を含みます 。
参考)https://www.goodcycle.net/knowledge/01/
🔍 近年では電子薬歴システムの導入が進み、複数の薬局で患者の薬歴情報を共有することで、重複投薬や薬物相互作用のリスクを低減できるようになっています 。
参考)https://wovie.me/contents/column/?p=262365