
印紙税法において、金銭の受取書や領収書は「第17号文書」として印紙税の課税対象となります。ただし、個人間の取引における領収書の印紙税については、営業目的の有無が重要な判断基準となります。
営業目的外の個人取引における非課税対象
一般的な個人が自宅や別荘を売却する場合、これらは営業活動に該当しないため、領収書に印紙を貼付する必要がありません。この原則は印紙税法の「営業に関しない受取書」の規定に基づいています。
個人であっても以下の場合には営業目的とみなされ、領収書に印紙税が必要となります。
営業目的に該当する個人取引
これらの取引では、個人名義であっても事業性や営利性が認められるため、5万円以上の領収書には所定の印紙を貼付する義務が生じます。
法人が売主となる場合は、個人のマイホーム売却であっても営利目的とみなされ、原則として印紙税が必要です。
印紙税額の詳細(領収書・受取書)
記載金額 | 印紙税額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 600円 |
500万円超1千万円以下 | 2,000円 |
1千万円超2千万円以下 | 4,000円 |
法人の場合、税抜価格での記載により印紙税を軽減できるメリットがあります。例えば、消費税込み550万円の取引を「税抜500万円(消費税別途50万円)」と記載することで、印紙税額を2,000円から1,000円に削減可能です。
不動産売買などの高額取引では、銀行振込による決済が一般的ですが、領収書の取り扱いには特別な配慮が必要です。
銀行振込時の領収書取り扱い
銀行振込の場合、振込票が領収書の代わりとなることがありますが、以下の条件を満たす必要があります:
契約書の特約条項として「振込票をもって売主の領収書とする」旨を記載することで、印紙税の節約を図る売主も存在します。ただし、買主から領収書発行を求められた場合、民法486条に基づき売主には発行義務が生じます。
領収書は単なる支払証明にとどまらず、将来の税務申告や法的手続きで重要な役割を果たします。
譲渡所得税計算での活用
将来的に同じ不動産を売却する際、譲渡所得税の計算において購入時の取得費として活用できます:
所有権移転登記での必要性
登記手続きでは「登記原因証明情報」または「売買契約書及び領収書」の提出が必要です。司法書士に依頼する場合でも、これらの書類は必須となります。
特に個人間取引では契約関係が曖昧になりがちですが、適切な領収書の発行と保管により、将来的なトラブルを予防できます。印紙税の負担を避けるため領収書発行を省略する場合でも、契約書での明確な記載と振込証明の保管は欠かせません。