
特別控除である住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、個人がマイホームの新築、購入、増改築を行った際に適用される所得税の税額控除制度です。令和4年1月1日から令和7年12月31日までに居住を開始した場合、最大13年間にわたって税制優遇を受けることができます。
現行制度では、年末時点の住宅ローン残高に0.7%を乗じた金額が控除されます。この控除は所得控除ではなく税額控除であるため、直接税額から差し引かれる特別控除として高い減税効果を持っています。
特別控除の対象となる借入限度額は住宅の性能によって差が設けられており、認定長期優良住宅・低炭素住宅では5,000万円、ZEH水準省エネ住宅では4,500万円、省エネ基準適合住宅では4,000万円となっています。
特別控除の適用を受けるためには複数の要件を満たす必要があります。まず、住宅ローンの返済期間が10年以上である必要があります。さらに、取得した住宅の床面積が50平方メートル以上(特例として40平方メートル以上も認められる場合があります)で、床面積の2分の1以上を居住用に使用することが求められます。
所得要件も重要で、控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下である必要があります。ただし、床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅では、合計所得金額が1,000万円以下に制限されています。
住宅の取得から6か月以内に居住を開始し、控除を受ける年の12月31日まで継続して住み続けることも必須条件です。これらの要件をすべて満たした場合に限り、特別控除の適用が認められます。
特別控除額の計算は「年末時点の住宅ローン残高×0.7%」で行われ、この結果と住宅種別ごとの年間最大控除額のいずれか小さい金額が実際の控除額となります。
例えば、2024年に長期優良住宅に入居し、年末時点の住宅ローン残高が4,000万円の場合、計算上の控除額は28万円(4,000万円×0.7%)となります。この金額が年間最大控除額の31.5万円を下回るため、28万円が特別控除額として適用されます。
所得税から控除しきれない部分については、住民税からも控除することが可能です。住民税からの控除上限額は97,500円に設定されており、所得税と住民税の両方から控除を受けることで、特別控除の効果を最大化することができます。
控除期間は住宅の種類によって異なり、新築住宅では13年間、中古住宅では10年間継続されます。この長期間にわたる特別控除により、住宅購入者の税負担が大幅に軽減されます。
2025年度の税制改正では、特別控除である住宅ローン控除制度において重要な変更が実施されました。最も注目すべきは、子育て世帯や若者夫婦世帯への優遇措置の継続決定です。
この優遇措置により、特定の世帯では借入限度額が上乗せされます。長期優良住宅・低炭素住宅では5,000万円、ZEH水準省エネ住宅では4,500万円、省エネ基準適合住宅では4,000万円まで借入限度額が拡大されています。
2025年の改正では、新築住宅の床面積要件に関する緩和措置も延長されました。2025年12月31日までに建築確認を受けた新築住宅については、通常の50平方メートル以上に対し、40平方メートル以上でも特別控除の対象となります。
しかし、2024年1月以降に建築確認を受けた「その他の住宅」(省エネ基準を満たさない住宅)については、原則として特別控除の適用外となっています。この改正により、住宅の省エネ性能が特別控除適用の重要な要素となっています。
不動産業従事者として特別控除の案内を行う際、顧客への説明で重要なのは申請手続きのタイミングです。特別控除の初回申請は確定申告での手続きが必要で、2年目以降は年末調整での申請が可能になります。
特別控除の申請に必要な書類として、住宅借入金等特別控除額の計算明細書、住宅ローンの年末残高証明書、住宅の登記事項証明書、売買契約書の写しなどがあります。これらの書類準備について、契約時から顧客に案内しておくことが重要です。
住宅の省エネ性能証明書も特別控除の適用において必須書類となっています。ZEH水準省エネ住宅や省エネ基準適合住宅の特別控除を受けるためには、それぞれの基準に適合していることを証明する書類の取得が不可欠です。
特別控除の効果を最大化するため、住宅ローン残高と所得税額のバランスも考慮が必要です。所得税額が少ない顧客の場合、住民税からの控除も含めて総合的な節税効果を説明することで、より具体的な提案が可能になります。
また、2026年度以降の制度変更の可能性についても顧客に伝えておくべきです。現在の特別控除制度は2025年12月31日までの入居分が対象となっているため、購入タイミングの重要性を説明することが求められます。
住宅の種別による特別控除額の差異も営業において重要なセールスポイントです。省エネ性能の高い住宅では借入限度額が大きく、結果として特別控除額も増加するため、顧客の住宅選択において税制メリットを具体的に示すことができます。