
土地・建物の売却により生じる課税譲渡所得は、分離課税の対象となり、一般の所得とは別途計算されます。この課税譲渡所得の計算において、一定の要件を満たす場合に適用できるのが特別控除制度です。
特別控除制度は以下の7つの特例に分けられており、それぞれ控除額と適用要件が異なります。
これらの特別控除は、各々の適用要件を満たす場合に限り適用できますが、年間の総額は5,000万円が上限となっています。
課税譲渡所得の基本的な計算式は以下の通りです:
譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額
この計算で算出された譲渡所得に対して課される税率は、保有期間により大きく異なります:
保有期間 | 区分 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 |
---|---|---|---|---|
5年以下 | 短期譲渡所得 | 30% | 9% | 39% |
5年超 | 長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20% |
保有期間の判定は、売却した年の1月1日時点で行われる点に注意が必要です。例えば、2020年3月に取得した不動産を2025年8月に売却した場合、2025年1月1日時点での保有期間は4年10か月となり、短期譲渡所得として39%の高税率が適用されます。
また、長期譲渡所得のうち、居住用財産で所有期間が10年を超える場合には軽減税率の特例が適用され、6,000万円以下の部分について所得税10%・住民税4%の合計14%の税率が適用されます。
居住用財産の3,000万円特別控除は、最も頻繁に利用される特別控除制度です。この特例の適用要件は以下の通りです:
基本的な適用要件:
転居後の売却に関する要件:
この特例の特筆すべき点は、譲渡損失が生じている場合でも適用要件を満たしていれば確定申告が必要であることです。また、3,000万円特別控除を適用した場合、住宅ローン控除との併用は不可となるため、新居購入を予定している場合は税務上有利な方を選択する必要があります。
実務上の注意点として、この特例適用により税額がゼロになったとしても、必ず確定申告を行う必要があります。確定申告期間は売却した年の翌年2月16日から3月15日(土日の場合は翌平日)までです。
公共事業等のための5,000万円特別控除は、最も控除額が大きい制度です。この制度は以下のような場合に適用されます:
適用対象となる事業。
この特例の大きなメリットは、居住用・事業用を問わず適用可能であることです。例えば、賃貸アパート用地が都市計画道路の拡幅により収用された場合でも、5,000万円の特別控除が適用できます。
また、公共事業等特別控除は代替資産の取得により課税繰り延べも可能です。収用等により得た対価で代替資産を取得した場合、その取得価額相当額について課税を将来に繰り延べることができます。
実際の計算例として、4,000万円で取得した土地が公共事業により1億円で収用された場合。
特別控除を適用することで、1,000万円の節税効果(5,000万円 × 20%)が得られます。
特別控除制度を適用する際には、以下の実務上の重要な注意点があります。
複数特例の適用順序:
特別控除の適用は、控除額の大きい順に行われます。年間の上限5,000万円に達するまで、以下の順序で適用されます。
取得費の計算における注意点。
取得費が不明な場合、譲渡価額の5%相当額を概算取得費として計算できます。ただし、実際の取得費が判明している場合や、5%を上回ることが証明できる場合は、実額を適用する方が有利です。
特に相続により取得した不動産の場合、被相続人の取得価額を引き継ぐため、相続時の価額ではなく被相続人が当初取得した価額で計算します。
確定申告における必要書類:
e-Tax申告での特別控除入力:
電子申告においては、「土地建物等の譲渡所得(特例等の入力)」画面で各特例を選択し、必要事項を入力します。3,000万円特別控除の場合、「特例35条1項」として表示され、内訳書に控除後の譲渡所得額が自動計算されます。
最近では、低未利用土地等の100万円特別控除という新しい制度も創設されており、都市計画区域内の低未利用土地を売却した場合に適用できる可能性があります。この制度は令和2年7月1日以降の譲渡から適用されており、地方の空き地活用促進を目的としています。