長期優良住宅と宅建業法の認定基準と税制優遇

長期優良住宅と宅建業法の認定基準と税制優遇

長期優良住宅の認定基準や税制優遇について宅建業従事者が知っておくべき情報をまとめました。2025年の法改正も含め、顧客へのアドバイスに役立つ知識を解説しています。あなたは長期優良住宅のメリットを顧客に正しく説明できていますか?

長期優良住宅と宅建業法

長期優良住宅の基本情報
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長期優良住宅とは

長期にわたって良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅のこと

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認定基準

劣化対策、耐震性、省エネルギー性など10項目の基準を満たす必要がある

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主なメリット

住宅ローン控除の拡大、税制優遇、資産価値の維持など

長期優良住宅の認定基準と宅建業者の知識

長期優良住宅とは、「長期にわたって良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」を指します。宅建業に従事する者として、この制度の詳細を把握しておくことは顧客への適切な情報提供のために不可欠です。

 

長期優良住宅の認定基準は全部で10項目あり、住宅の種類によって適用される項目が異なります。戸建住宅と共同住宅では以下のように分かれています。

 

【戸建住宅の認定基準】

  • 劣化対策
  • 耐震性
  • 省エネルギー性
  • 維持管理・更新の容易性
  • 居住環境
  • 住戸面積
  • 維持保全計画
  • 災害配慮

【共同住宅の認定基準(戸建住宅の基準に加えて)】

  • 可変性
  • バリアフリー性

特に重要な基準として、劣化対策では「劣化対策等級3(3世代まで住宅が使用できる)+α」を満たす必要があります。木造住宅の場合は、床下空間の有効高さを330mm以上確保し、床下・小屋裏の点検口を設置することが求められます。

 

耐震性については、「耐震等級2」以上(2階以下の木造建築物で壁量計算による場合は等級3)、または「耐震等級1かつ安全限界時の層間変形が1/100(木造は1/40)以下」、あるいは「品確法が定める免震建築物」のいずれかの基準を満たす必要があります。

 

省エネルギー性に関しては、断熱性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6を満たすことが求められます。

 

宅建業者として、これらの基準を理解し、顧客に対して正確な情報提供ができることが重要です。

 

長期優良住宅の税制優遇と2025年の改正ポイント

長期優良住宅を取得する際の大きなメリットの一つが税制優遇です。宅建業者として、これらの優遇措置を正確に把握し、顧客にアドバイスできることが求められます。

 

2025年4月時点での主な税制優遇は以下の通りです。

  1. 住宅ローン控除の拡大
    • 控除額:住宅ローン残高の0.7%を最大13年間所得税から控除
    • 控除対象限度額:長期優良住宅は4,500万円(2025年12月31日までの入居が対象)
    • 一般住宅の限度額:ZEH水準で3,500万円、省エネ基準適合住宅で3,000万円
  2. 登録免許税の軽減
  3. 不動産取得税の軽減
    • 課税標準から1,300万円控除(一般住宅は1,200万円)
  4. 固定資産税の減額
    • 新築住宅:一般住宅は3年間1/2減額 → 長期優良住宅は5年間1/2減額
    • 中高層耐火建築物:一般住宅は5年間1/2減額 → 長期優良住宅は7年間1/2減額

2025年の法改正では、建築基準法の改正により、新たに建設される住宅や商業施設に対してより高い耐震性能が義務化されます。これは地震発生時の人的被害を最小限に抑えることを目的としています。

 

宅建業者としては、これらの税制優遇措置と法改正の内容を正確に把握し、顧客に対して適切なアドバイスを提供することが重要です。特に、住宅ローン控除の限度額が長期優良住宅では一般住宅より高く設定されている点は、住宅購入を検討している顧客にとって大きなメリットとなります。

 

国土交通省:長期優良住宅に係る認定制度の概要

長期優良住宅の認定申請手続きと宅建業者の役割

長期優良住宅の認定を受けるためには、一定の手続きが必要です。宅建業者として、この申請プロセスを理解し、顧客をサポートすることは重要な役割の一つです。

 

【認定申請の流れ】

  1. 設計段階
    • 認定基準を満たす住宅の設計を行う
    • 登録住宅性能評価機関に設計が長期使用構造等であることの確認を依頼
  2. 申請書類の準備
    • 確認書等(登録住宅性能評価機関から交付)
    • 認定申請書
    • 添付図書(設計内容や維持保全計画等を示す書類)
  3. 所管行政庁への申請
    • 準備した書類を所管行政庁(都道府県、市区町村)に提出
    • 所管行政庁による審査
    • 基準を満たすと認められれば認定通知書が交付される
  4. 工事着工・完了
    • 認定を受けた設計に基づいて工事を実施
    • 工事完了後は維持保全計画に従って住宅を管理

宅建業者の役割としては、顧客に対して認定申請の流れや必要書類について説明するだけでなく、登録住宅性能評価機関や所管行政庁との連絡調整をサポートすることも重要です。また、認定取得後の維持保全計画の重要性についても説明し、長期的な視点での住宅管理の必要性を伝えることが求められます。

 

申請にかかる費用は、登録住宅性能評価機関や所管行政庁によって異なりますが、一般的には数万円から10万円程度が必要です。また、認定基準を満たすための設計・施工費用は、一般住宅と比較して約1.2~1.3倍程度高くなる傾向があります。

 

宅建業者としては、これらのコストと長期的なメリットを比較検討し、顧客に最適なアドバイスを提供することが重要です。

 

一般社団法人 住宅性能評価・表示協会:長期優良住宅関連情報

長期優良住宅のメリット・デメリットと顧客への説明ポイント

宅建業者として、長期優良住宅のメリットとデメリットを正確に理解し、顧客に適切に説明することは非常に重要です。顧客が納得のいく住宅選択ができるよう、以下のポイントを押さえておきましょう。

 

【メリット】

  1. 経済的メリット
    • 住宅ローン控除の拡大(控除対象限度額が4,500万円)
    • 登録免許税・不動産取得税・固定資産税の軽減
    • 住宅ローン金利の引き下げ(金融機関による)
    • 長期的な修繕費用の削減
  2. 住宅性能面のメリット
    • 高い耐震性能による安全性の確保
    • 優れた省エネ性能による光熱費の削減
    • 計画的な維持管理による住宅の長寿命化
    • 住宅の資産価値の維持
  3. 環境面のメリット
    • 長期使用による廃棄物の削減
    • 省エネ性能による環境負荷の低減

【デメリット】

  1. コスト面のデメリット
    • 初期建築コストが一般住宅より約1.2~1.3倍高い
    • 認定取得のための申請費用が必要
  2. 維持管理面のデメリット
    • 維持保全計画に基づく定期的な点検・修繕が必要
    • 点検・修繕記録の保存義務
    • 10年に一度の定期点検などを怠ると認定が取り消される可能性
  3. 設計・施工上の制約
    • 認定基準を満たすための設計上の制約
    • 一部のハウスメーカーでは独自工法により認定取得が困難な場合がある

顧客への説明ポイントとしては、初期コストの増加分と長期的な経済メリットのバランスを具体的な数字で示すことが効果的です。例えば、税制優遇による節税額や省エネによる光熱費削減額を試算して提示したり、住宅の長寿命化による将来的なリフォーム費用の抑制効果を説明したりすることで、長期優良住宅のメリットを分かりやすく伝えることができます。

 

また、顧客のライフプランや住宅に対する価値観に合わせた提案を心がけることも重要です。長期間の居住を前提としている顧客には長期優良住宅のメリットが大きい一方、短期間での住み替えを予定している顧客には別の選択肢も検討する必要があるでしょう。

 

長期優良住宅と宅建業法における重要事項説明のポイント

宅建業法における重要事項説明は、不動産取引において買主や借主に対して物件の重要な情報を説明する義務を宅建業者に課すものです。長期優良住宅の取引においては、通常の重要事項説明に加えて、以下のポイントを押さえることが重要です。

 

【長期優良住宅の重要事項説明ポイント】

  1. 認定状況の説明
    • 長期優良住宅の認定を受けていることの明示
    • 認定番号や認定年月日の記載
    • 認定通知書の写しの提示
  2. 認定基準への適合状況
    • 劣化対策、耐震性、省エネルギー性など各基準への適合状況
    • 住宅性能評価書がある場合はその内容
    • 特に優れた性能を有する項目の具体的説明
  3. 維持保全計画の説明
    • 定期点検の時期や内容
    • 修繕計画の概要
    • 維持保全に必要な費用の目安
    • 記録の保存方法
  4. 税制優遇措置の説明
    • 適用可能な税制優遇の種類と内容
    • 適用条件や手続き方法
    • 優遇措置の適用期間
  5. 認定の継続に関する説明
    • 維持保全計画に従った管理の必要性
    • 認定が取り消される可能性のある事由
    • 所有者変更時の手続き

重要事項説明書には、これらの内容を明記し、買主に対して十分な説明を行うことが求められます。特に、長期優良住宅の認定を受けていることが物件価格に反映されている場合は、そのメリットと維持管理の責任について丁寧に説明することが重要です。

 

また、中古住宅の取引においては、建築後の維持管理状況や修繕履歴についても確認し、説明することが望ましいでしょう。維持保全計画に基づいた適切な管理が行われているかどうかは、長期優良住宅としての価値を維持する上で重要な要素となります。

 

宅建業者としては、これらの情報を正確に把握し、顧客に分かりやすく説明することで、トラブルを未然に防ぎ、安心・安全な取引を実現することが求められます。

 

公益財団法人不動産流通推進センター:重要事項説明に関する情報

長期優良住宅のリフォームと宅建業者の新たなビジネスチャンス

長期優良住宅制度は新築住宅だけでなく、既存住宅のリフォームにも適用されています。2016年より「長期優良住宅化リフォーム」の認定制度が開始され、宅建業者にとって新たなビジネスチャンスとなっています。

 

【長期優良住宅化リフォームの概要】

  1. 対象となる住宅
    • 築年数の制限なし(耐震性等の基準を満たせば可能)
    • 戸建住宅、共同住宅いずれも対象
  2. 認定基準
    • 新築の長期優良住宅と同様の基準を目指すが、一部緩和措置あり
    • 特に耐震性、省エネルギー性、劣化対策が重要
  3. 支援制度
    • 長期優良住宅化リフォーム推進事業による補助金
    • リフォームローン減税
    • 固定資産税の減額措置

【宅建業者のビジネスチャンス】

  1. 中古住宅の付加価値向上
    • 長期優良住宅化リフォームによる中古住宅の資産価値向上
    • 「長期優良住宅」という付加価値を加えた物件販売
  2. リフォーム事業者との連携
    • リフォーム事業者と連携した「買取→リフォーム→販売」モデル
    • ワンストップサービスの提供による顧客満足度向上
  3. コンサルティングサービス
    • 長期優良住宅化リフォームのアドバイス
    • 補助金申請サポート
    • 維持管理計画の提案
  4. ストック型ビジネスへの転換
    • フロー型(新築販売中心)からストック型(既存住宅活用)へのビジネスモデル転換
    • 継続的な顧客関係構築による安定収益の確保

宅建業者として、長期優良住宅化リフォームの知識を深め、リフォーム事業者や建築士との連携を強化することで、新たな事業機会を創出することができます。特に、日本の住宅市場が新築中心から既存住宅活用へとシフトする中、このようなストック型ビジネスの重要性は今後さらに高まるでしょう。

 

また、2025年以降は省エネ基準の義務化など環境性能に関する規制が強化される見込みであり、既存住宅の省エネ改修需要も増加すると予想されます。宅建業者としては、こうした市場動向を先取りし、長期優良住宅化リフォームを含めた総合的な住宅提案ができる体制を整えることが競争力強化につながるでしょう。

 

国土交通省:長期優良住宅化リフォーム推進事業