
所得控除は、個人の様々な事情を考慮して課税所得金額から一定額を差し引く制度です。不動産業従事者にとって重要なのは、この控除が税率をかける前の段階で適用される点です。
所得控除には全15種類があり、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、医療費控除などが含まれます。これらの控除は課税所得金額を減らすことで、間接的に税負担を軽減します。
計算例を見てみましょう。
(100万円-10万円)× 20% = 18万円
控除がない場合の20万円と比較すると、2万円の節税効果があります。
不動産所得を得ている方にとって重要な所得控除を整理してみましょう。
基本的な所得控除
申告が必要な所得控除
不動産所得者の場合、これらの所得控除に加えて青色申告特別控除(最大65万円)を活用することができます。青色申告を行うことで、不動産所得から65万円を差し引くことができ、大幅な節税につながります。
税額控除は所得税額から直接差し引く制度で、所得控除と比較して節税効果が非常に高いのが特徴です。
主な税額控除の種類
税額控除の計算例。
20万円-10万円 = 10万円
同じ10万円の控除でも、税額控除なら10万円分がそのまま節税になります。これが所得控除との大きな違いです。
税額控除が適用される順序
この順序を理解することで、複数の税額控除を効率的に活用できます。
住宅ローン控除は税額控除の中でも特に大きな節税効果を持つ制度です。2024年現在、新築住宅の場合は年間最大35万円(認定住宅)、中古住宅の場合は年間最大21万円の控除が受けられます。
住宅ローン控除の計算方法
年末のローン残高×0.7% = 控除額
例:年末ローン残高5,000万円の場合
5,000万円×0.7% = 35万円の税額控除
不動産投資における住宅ローン控除の注意点
住宅ローン控除を受けている不動産業従事者は、投資用物件の購入タイミングを調整することで、税負担を最適化できます。
不動産業に従事する方が最大限の節税効果を得るには、所得控除と税額控除を戦略的に組み合わせることが重要です。
効果的な節税戦略
✅ 青色申告の活用
不動産所得がある場合は必ず青色申告を選択し、最大65万円の青色申告特別控除を受けましょう。これは所得控除の中でも大きな金額です。
✅ 小規模企業共済等掛金控除の活用
不動産業を個人事業として行っている場合、小規模企業共済や中小企業退職金共済への加入で、掛金全額を所得控除として活用できます。
✅ 住宅ローン控除との併用
自宅の住宅ローン控除を受けながら、投資用不動産の減価償却や必要経費を計上することで、総合的な税負担を軽減できます。
年収別の最適戦略
控除の適用順序も重要で、所得控除を最大限活用してから税額控除を適用することで、控除し切れない部分を翌年に繰り越すことも可能です(住宅ローン控除など一部の税額控除)。
不動産業従事者は、物件の取得時期や売却時期を調整することで、控除を最大限活用した節税が可能になります。特に大きな設備投資や修繕を行う年は、医療費控除や雑損控除なども含めて総合的に検討することが大切です。
所得控除と税額控除の違いを正しく理解し、それぞれの特徴を活かした節税戦略を立てることで、不動産業での収益性を大幅に改善することができるでしょう。