
損益通算とは、同一年分の利益と損失を合算することを指します。具体的には、事業で発生した赤字を給与所得などの他の所得から差し引く制度です。この仕組みにより、全体の課税対象所得が減り、結果として納税額を軽減できます。
事業所得は損益通算の対象となる4つの所得の一つです。国税庁の規定によると、損益通算の対象となる所得は以下の通りです:
一方、給与所得は通常プラスの所得となりますが、他の所得の損失と通算される側の所得として機能します。
実際の損益通算の計算例を見てみましょう。会社員が年の途中で起業し、その年の事業が赤字だったケースを想定します。
具体的な計算例 📊
計算式:200万円 - 100万円 = 100万円
この場合、最終的な所得金額は100万円となります。年末調整で確定していた所得税額は200万円の給与所得に対するものでしたが、確定申告により100万円の所得に対する税額が再計算され、差額が還付されます。
年収別の節税効果の目安
事業所得の損益通算を行う際、税務調査で問題となりやすいポイントがあります。重要なのは金額の大小ではなく、その内容が適正かどうかです。
税務調査で重視される要素 ⚖️
特に副業として始めた事業の場合、以下の点で適切な記録を保持することが重要です。
事業所得として認められやすいケース ✅
損益通算を行っても控除しきれない損失がある場合、3年間の繰越控除が可能です。これは「純損失の繰越控除」と呼ばれる制度で、将来の事業所得から控除できます。
繰越控除の仕組み 🔄
1年目:事業所得▲300万円、給与所得200万円
→ 損益通算後:所得0円、繰越損失100万円
2年目:事業所得150万円、繰越損失100万円
→ 150万円 - 100万円 = 所得50万円
この制度により、事業の立ち上げ期に発生した損失を、将来の利益と相殺することで税負担を平準化できます。
繰越控除を活用する際の注意点
実務では、事業所得と雑所得の区分が問題となるケースが多く見られます。この区分は損益通算の可否に直接影響するため、慎重な判断が必要です。
事業所得と雑所得の判定基準 🔍
近年、副業やフリーランスの普及により、この区分が税務上の重要な論点となっています。特に以下のような業種では注意が必要です。
実際の判例から見る判定基準
最高裁判例では、副業的な活動であっても以下の条件を満たせば事業所得と認定される可能性があります。
損益通算を適用する際は、これらの要素を総合的に勘案し、適切な所得区分を判定することが重要です。税理士等の専門家への相談も有効な手段といえるでしょう。