社会保険扶養条件の年間収入基準と申請手続き

社会保険扶養条件の年間収入基準と申請手続き

社会保険の扶養に入るには年間収入130万円未満が基本条件ですが、年齢や同居状況により要件が異なります。被扶養者認定の詳細な条件や申請時の注意点について、実際の申請で困らないためのポイントを解説。あなたの家族は扶養条件を満たしているでしょうか?

社会保険扶養条件

社会保険扶養条件の基本要件
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年間収入基準

130万円未満(60歳以上は180万円未満)が基本条件

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親族関係

3親等内の親族かつ生計維持関係の証明が必要

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居住状況

同居・別居により適用される収入基準が変わる

社会保険扶養の基本的な年間収入基準

社会保険の被扶養者として認定されるための最も重要な条件は、年間収入が130万円未満であることです。ただし、認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は、年間収入基準が180万円未満に引き上げられます。
この収入基準は、届出日より向こう1年間の収入見込みで判定されるため、過去の実績ではなく将来の予測に基づいて評価される点が重要です。たとえば、退職により今後の収入が大幅に減少する場合、過去の年収が130万円を超えていても扶養認定される可能性があります。
さらに、2025年4月からは19歳以上23歳未満の被扶養者について、年間収入要件が130万円未満から150万円未満に緩和されることが決定されています。この変更により、大学生のアルバイト収入などがある家庭では扶養維持がより容易になると期待されます。
収入に含まれる範囲

  • 給与所得、事業所得、雑所得など全ての所得
  • 失業保険給付、障害年金、傷病手当金
  • 配当、利子、家賃収入
  • 一時的な収入も含む

社会保険扶養における親族関係の条件

被扶養者として認定される親族の範囲は、被保険者との関係性によって明確に定められています。
同居不要の親族

  • 配偶者(内縁関係を含む)
  • 直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母)
  • 直系卑属(子、孫)
  • 兄弟姉妹

同居が必要な親族

  • 上記以外の3親等内の親族(おじ、おば、甥、姪など)
  • 被保険者の内縁の配偶者の父母および子
  • 内縁の配偶者死亡後の父母および子

この親族関係の要件は税法上の扶養とは異なり、より厳格に設定されています。特に、同居が条件となる親族については、住民票上の同一住所であることが原則として求められます。
注意すべき特殊事例

  • 75歳以上の親族は後期高齢者医療制度の対象となるため、社会保険の扶養対象外
  • 海外居住者も特例を除き扶養対象外
  • 事実婚の配偶者も条件を満たせば被扶養者として認定可能

社会保険扶養条件における同居・別居の収入判定

同居している場合と別居している場合では、年間収入130万円未満という基本条件に加えて、異なる判定基準が適用されます。
同居している場合の条件
被扶養者の年間収入が被保険者の年間収入の2分の1未満であることが原則です。例えば、被保険者の年収が200万円の場合、被扶養者の年収は100万円未満である必要があります。

 

ただし、2分の1以上であっても130万円未満で、かつ被保険者の年間収入を上回らない場合は、世帯の生計状況を総合的に判断して被扶養者として認定される場合があります。
別居している場合の条件
被扶養者の年間収入が被保険者からの仕送り額より少ないことが条件となります。この場合、仕送りの継続性と金額の妥当性を証明する書類の提出が必要です。
実務上の判定ポイント

  • 仕送り額は被扶養者の生活費を賄える金額である必要がある
  • 振込記録など仕送りの事実を証明する書類が必須
  • 一時的な仕送りではなく、継続的な援助関係の証明が求められる

社会保険扶養申請時の必要書類と手続きの流れ

社会保険の被扶養者認定申請には「健康保険被扶養者(異動)届」の提出が必要です。申請時期は、扶養にしたい事実が発生してから5日以内とされていますが、実務上は速やかな手続きが推奨されます。
基本的な必要書類

  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 被扶養者の住民票(続柄が確認できるもの)
  • 被扶養者の所得証明書または非課税証明書
  • 被保険者の戸籍謄本(続柄確認のため)

追加で必要となる可能性のある書類

  • 雇用保険受給資格者証(失業中の場合)
  • 年金額改定通知書(年金受給者の場合)
  • 仕送り証明書類(別居の場合)
  • 在学証明書(学生の場合)

電子申請システム「e-Gov」を利用することで、24時間いつでも申請が可能です。ただし、添付書類については別途郵送が必要な場合があるため、事前に管轄の年金事務所に確認することが重要です。
申請審査の流れ

  1. 書類提出・受理
  2. 年金機構による審査(通常2-3週間)
  3. 認定・非認定の決定通知
  4. 健康保険証の発行(認定の場合)

社会保険扶養条件の特例規定と注意点

基本的な扶養条件を満たさない場合でも、特例的に被扶養者として認定される場合があります。これは「社会通念上妥当性を欠くこととなると認められる場合」の規定によるものです。
特例認定が適用される可能性のあるケース

  • 一時的な収入増加により130万円を超えたが、恒常的な収入ではない場合
  • 被保険者の収入が極端に少ないが、被扶養者を実際に扶養している場合
  • 地域の経済事情や特殊な家庭環境を考慮する必要がある場合

また、2024年10月から施行される社会保険適用拡大により、従業員数101人以上の企業で働くパート・アルバイト労働者の社会保険加入義務が拡大されました。これにより、これまで扶養内で働いていた配偶者が自ら社会保険に加入するケースが増加しています。
実務上の重要な注意点

  • 収入見込みの変更があった場合は速やかに届出が必要
  • 扶養から外れる場合の国民健康保険への切り替え手続き
  • 税法上の扶養と社会保険上の扶養は別制度のため、それぞれの要件確認が必要

これらの条件や手続きは複雑で、個別の事情により判断が分かれる場合があるため、不明な点については管轄の年金事務所や健康保険組合に直接相談することをお勧めします。

 

全国健康保険協会の被扶養者認定基準について詳細な解説
厚生労働省による19歳以上23歳未満の年間収入要件変更の詳細