
区分マンションのオーナーが加入する火災保険は、専有部分の建物に対する補償が基本となります。マンションの共用部分については管理組合が一括して火災保険に加入するため、個人のオーナーは自分が所有する専有部分のみを対象とした保険契約を結ぶ必要があります。
専有部分の範囲は以下の通りです。
一方、共用部分として管理組合が保険をかける範囲は。
この区分を正確に理解することで、適切な保険選択が可能になります。
区分マンション向けの火災保険では、火災だけでなく幅広い損害に対する補償が提供されています。基本的な補償内容は以下の通りです。
基本補償(主契約)
選択可能な補償(特約)
特に注目すべきは、地震や津波による損害は火災保険の対象外となることです。これらのリスクに備えるためには、別途地震保険への加入が必要となります。
また、豪雨による土砂災害は水災扱いとなり、地震が原因の火災も火災保険の対象外となるため、契約時には補償範囲を十分に確認することが重要です。
区分マンションのオーナーにとって特に重要な特約は以下の3つです。
1. 家賃収入特約(家賃補償特約)
火災や自然災害により物件が損害を受け、入居者が退去した場合の家賃収入減少をカバーします。復旧期間中の家賃収入を一定期間補償するため、キャッシュフローの安定化に寄与します。
2. 建物管理賠償責任特約(施設賠償責任特約)
建物の管理不備により第三者に損害を与えた場合の賠償責任を補償します。例えば、外壁の一部が落下して通行人にケガを負わせた場合などが該当します。
3. 家主費用特約
入居者が室内で死亡した場合の清掃費用や家賃収入の減少、原状回復費用などを補償します。近年、高齢化社会の進展により重要性が高まっている特約です。
これらの特約は単独で加入するよりも火災保険の特約として付帯する方が保険料を抑えることができます。
区分マンションオーナーの火災保険料相場は年間50,000円~150,000円程度ですが、特約を充実させた場合は850,000円~950,000円程度まで上昇します。
保険料に影響する主な要因。
保険料節約のポイント
契約期間中にマンションを売却する場合でも、未経過分の保険料は返金されるため、長期契約のデメリットは限定的です。
区分マンションの火災保険には、一般的にあまり知られていない重要な注意点があります。
共用部分と専有部分の境界線問題
管理規約によって共用部分と専有部分の境界が異なる場合があります。例えば、玄関ドアや窓サッシは共用部分でも、内側の塗装やガラス部分は専有部分とされることがあります。この境界が曖昧だと、事故時に保険金が支払われない可能性があります。
入居者の火災保険との重複問題
入居者も火災保険に加入しますが、その補償範囲は家財と借家人賠償責任が中心です。オーナーの建物保険と入居者の家財保険は補償対象が異なるため、両方の加入が必要です。
管理組合の火災保険との調整
管理組合が加入する火災保険の補償内容によっては、個人の火災保険と重複する部分が生じる可能性があります。無駄な保険料を避けるため、管理組合の保険内容を定期的に確認することが重要です。
築古物件の保険加入制限
築30年を超える区分マンションでは、一部の保険会社で新規加入を制限される場合があります。築古物件のオーナーは、加入可能な保険会社を事前に調査し、複数の選択肢を確保しておくことが賢明です。
2024年の保険料改定の影響
2024年10月に火災保険料が全国平均で13.0%引き上げられました。この改定により、区分マンションオーナーの保険料負担も増加しているため、既存契約の見直しが急務となっています。
保険料上昇への対策として、以下の方法が有効です。
これらの対策を組み合わせることで、保険料上昇の影響を最小限に抑えながら、必要な補償を確保することが可能です。
区分マンション経営において火災保険は必要不可欠な経費ですが、適切な知識と戦略により、コストパフォーマンスの高い保険選択が実現できます。定期的な見直しと専門家への相談を通じて、最適な保険環境を維持することが成功する区分マンション経営の鍵となります。