
医療費控除を受ける際の最も重要なポイントは、年間医療費が10万円を超えているかどうかです。正確には、以下の計算式で医療費控除額を算出します。
医療費控除額 = (実際に支払った医療費の総額) - (保険金等の補てん金) - 10万円
ただし、総所得金額が200万円未満の場合は、10万円ではなく「総所得金額×5%」が差し引かれます。
計算例:総所得200万円以上の場合
計算例:総所得150万円の場合
重要な点として、医療費が正確に10万円だった場合、総所得200万円以上の人は医療費控除額が0円となり、還付金も受け取れません。
実際の還付金額は「医療費控除額×所得税率」で計算されます。所得税率は課税所得額により以下のように決定されます。
課税所得額 | 所得税率 |
---|---|
195万円未満 | 5% |
195万円以上330万円未満 | 10% |
330万円以上695万円未満 | 20% |
695万円以上900万円未満 | 23% |
900万円以上1,800万円未満 | 33% |
具体的なシミュレーション例
医療費18万円を支払った場合(医療費控除額8万円)。
年収600万円程度の会社員(所得税率20%)が40万円の医療費を支払った場合。
医療費控除の効果は所得税の還付だけではありません。住民税も一律10%軽減されるため、総合的な節税効果を把握することが重要です。
住民税軽減の計算方法
住民税軽減額 = 医療費控除額 × 10%(一律)
総合節税効果の実例
課税所得330万円の人が10万円の医療費控除を申告した場合。
課税所得500万円の人が同じ10万円の医療費控除を申告した場合。
このように、所得が高い人ほど医療費控除による節税効果が大きくなります。そのため、夫婦で医療費を支払っている場合は、より所得の高い方が申告することで節税効果を最大化できます。
また、住民税の軽減は翌年度の住民税に反映されるため、所得税の還付とは時期が異なることも覚えておきましょう。
医療費控除の対象期間は1月1日から12月31日までの1年間で、納税者本人だけでなく、生計を一とする家族が支払った医療費も合算できます。
対象となる家族の範囲
家族分合算の具体例
注意すべきポイント
家族の中で最も所得税率の高い人が申告することで、節税効果を最大化できます。例えば、夫の所得税率が20%、妻の所得税率が5%の場合、夫が申告する方が4倍の還付金を受け取れます。
また、共働き夫婦の場合、どちらが医療費を実際に支払ったかは関係なく、生計を一とする家族であれば合算可能です。レシートや領収書の名義も問題になりません。
医療費控除を受けるためには確定申告が必要で、申告時期は翌年の2月16日から3月15日までです。会社員の場合、この期間以外でも還付申告として5年間さかのぼって申告できます。
必要書類一覧
効率的な準備方法
医療費の領収書は月別に整理し、以下の項目を記録しておくと申告時にスムーズです。
電子申告(e-Tax)の活用
近年は電子申告が推奨されており、医療費控除の明細書もオンラインで作成できます。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、医療費を入力するだけで自動的に控除額が計算されます。
また、令和元年分から医療費通知(健康保険組合等が発行)を添付すれば、明細書の記入を簡略化できるようになりました。
国税庁確定申告特集ページ - 医療費控除の詳細な申告方法と最新の制度変更について