
保険において最も混同されやすい用語である「保険金」と「保険料」の違いを正確に理解することは、不動産業界で働く上で必須の知識です。
保険料とは、保険制度に加入した保険契約者が保険契約に基づいて保険会社に対して支払う金銭のことです。これは「掛け金」と呼ばれることもあり、保険という商品を購入するための対価として支払う費用です。
一方、保険金とは、万一の事故や火災等が起きたときに、ご契約に基づいて保険会社から被保険者に支払われるお金のことです。つまり、保険事故または給付事由が発生したときに、保険契約に基づいて保険業者が被保険者または保険金受取人に支払う金銭です。
さらに、保険金額という用語もあり、これは損害保険契約では契約時に定められた保険金支払いの限度額のことを指します。
具体例で説明すると、家財の保険300万円に対して15,000円を支払い、火災が発生して保険会社から80万円を受け取った場合、300万円が保険金額、15,000円が保険料、80万円が保険金となります。
不動産投資において、保険金と保険料の違いは特に重要な意味を持ちます。不動産投資では団体信用生命保険(団信)という特殊な保険制度が関わってきます。
団体信用生命保険では、不動産投資ローンを組む際に加入し、契約者に万一のことがあった場合、保険会社から金融機関に保険金が支払われ、残債が0円になる仕組みです。この場合の保険料は、通常ローンの金利に含まれて支払われることが多く、明確に保険料として認識されにくい特徴があります。
不動産投資では、生命保険と異なり、実物資産である不動産が残るため、保険料を掛け捨てにしなくて済むメリットがあります。家賃収入8万円の投資用不動産を購入すれば、何もなかったときには不動産が残り、保険料を掛け捨てにしなくて済む点が大きな特徴です。
また、不動産投資のほうが支払う額は安い傾向があります。加入時に設定した掛け金を支払う生命保険に対し、不動産投資は家賃収入とローンの返済額に左右されるため、毎月得られる家賃収入によってはさらに負担を軽減できる可能性があります。
不動産業界では火災保険が必須となりますが、保険金が支払われるケースはほとんどの保険会社で共通しています。ただし、保険の契約内容によっては支払われないケースもあるため、保険金の支払い条件を正確に理解することが重要です。
火災保険の保険料は、建物の種別や業種、補償範囲、設定した保険金額によって計算されます。保険料算定の基礎となるのが「構造級別」で、以下の3種類に分類されます:
1級は丈夫な建材で建築された建物であり、耐火性も高いため保険料は安くなります。一方で3級は木造建築など、燃えやすく倒壊しやすい建物ですので、保険料は割高になります。
不動産業では、テナント向けの火災保険について、貸主指定の保険会社でないといけないケースもあり、保険料の比較検討が制限される場合もあります。
不動産業界では一般的な保険とは異なる特殊な適用事例があります。不動産業に従事する場合、法人だけではなく個人事業主の場合でも専門的な保険に加入できます。
万が一、不動産業でトラブルが発生すると損害金額も高額になることが多く、適切な保険金額の設定が重要です。不動産業特有のリスクに対応した保険では、以下のような特殊な保険金支払い条件があります:
これらのリスクに対する保険料は、一般的な損害保険とは異なる算定方法が用いられ、事業規模や取扱物件の種類によって大きく変動します。
不動産オーナーの場合、解約して保険金の少ない新しい保険に入りなおすよりも、若い年齢で入っていた保険を維持したほうが、保険料が安くなるケースがほとんどです。これは年齢による保険料の違いが大きく影響するためです。
不動産業界では、保険金と保険料の税務上の取り扱いが事業運営に大きな影響を与えます。保険金は原則として損害の補填であり、非課税となることが多いですが、保険料は事業経費として計上できます。
個人年金保険と不動産投資を比較した場合、税制メリットに大きな違いがあります。個人年金保険には特別な税制メリットはありませんが、不動産投資では以下のような税制上の違いがあります:
不動産投資では、最終的にいくら支払い、いくら受け取れるのかが投資した時点では確定しないという特徴があります。年金代わりに不動産投資を行う場合、老後に受け取れる金額が保証されていない点、ローン完済後も税金や維持費などの支払いが必要になる点には十分注意が必要です。
会社が会計上で計上する保険料は、純保険料部分と付加保険料部分で管理できます。純保険料には保険に加入した経費を、付加保険料は保険事業を経営するために必要な人件費や物件費などの事業費として分類できるため、適切な会計処理が求められます。
不動産業界における保険金と保険料の違いを正確に理解することで、適切なリスク管理と効率的な事業運営が可能になります。保険契約を検討する際は、保険料の負担と保険金の補償内容のバランスを慎重に評価し、事業に最適な保険選択を行うことが重要です。