
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、従業員数10~99人の中小企業における年間ボーナス平均額は約62万2千円でした。これは月給の約1.9か月分に相当し、企業の人材確保意識の高まりを反映しています。
中小企業のボーナス支給は着実に改善傾向にあり、2025年夏季ボーナスでは支給予定企業が84.4%と調査開始以降過去最高を記録しました。平均支給額も前年比3.1%増の38万5,554円となり、5年連続の増加となっています。
年代によるボーナス格差は中小企業においても顕著に表れており、経験や役職に応じた差が見られます。令和6年の統計データによると、以下のような傾向があります。
・20代:約50万円(基本給月額約25万円のため約2か月分)
・30代:前半で約60万円、後半で約70万円に増加
・40代:約80万円から90万円の水準で安定
・50代:管理職層で約100万円超のケースも
特に30代後半から40代前半にかけては、管理職への昇進とともにボーナス額が大幅に増加する傾向があります。
中小企業における男女間のボーナス格差は社会問題として注目されており、令和6年のデータでは男性68万円、女性52万円と約16万円の差が生じています。
この格差の主な要因。
・管理職登用率の男女差
・勤続年数の平均的な違い
・フルタイム勤務と時短勤務の比率差
・業界・職種選択の傾向差
不動産業界においても同様の傾向が見られ、営業成績による業績連動型のボーナス制度が多いため、働き方の違いが支給額に反映されやすい特徴があります。
業界によるボーナス平均額の違いは、中小企業においても明確に表れています。2025年の調査では以下のような特徴が確認されています。
製造業:約65万円(前年比+3.2%の伸び)
技術力を活かした海外展開や設備投資の効果で安定した支給額
建設・不動産業:約70万円(地域差が大きい)
都市部では人手不足による待遇改善が進み、地方との格差が拡大
サービス業:約45万円(回復基調)
コロナ禍からの回復により、観光・飲食関連企業で支給再開が増加
情報通信業:約80万円(高水準を維持)
DX需要の拡大により、中小企業でも技術者への高額ボーナス支給が増加
不動産業界では特に地域格差が顕著で、東京都内の中小不動産会社では平均82万円と全国平均を大きく上回る一方、地方では40万円台にとどまる企業も多く見られます。
都道府県別の中小企業ボーナス平均額には大きな地域差があり、経済活動の集中度が直接反映されています。令和6年のデータによる上位地域の特徴。
東京都:82万1,600円
・本社機能集中による高額案件の多さ
・人材獲得競争の激化による待遇向上
・IT・金融関連企業の集積効果
愛知県:68万3,800円
・製造業の集積による安定した業績
・トヨタ関連企業の波及効果
・輸出産業の好調維持
大阪府:65万4,200円
・商業・サービス業の回復
・関西経済圏の活性化
・中小企業の経営改善進展
地方においても、観光業の回復や地方創生施策の効果により、ボーナス支給額の底上げが見られる地域が増加しています。特に九州・沖縄地方では、IT企業の進出により従来の平均を上回る支給額を実現する企業が現れています。
中小企業におけるボーナス増額の背景には、複数の経済・社会的要因が複合的に作用しています。
人手不足対応戦略
労働力人口の減少により、中小企業では人材確保が最重要課題となっています。ボーナス増額は採用力強化と離職防止の両面で効果的な施策として位置づけられています。
業績回復と投資余力
コロナ禍からの業績回復により、多くの中小企業で投資余力が生まれています。設備投資と並んで人材投資への意識が高まり、ボーナス原資の確保が優先されています。
大企業との格差是正圧力
SNSや転職サイトの普及により、大企業との待遇格差が可視化されています。優秀な人材の流出を防ぐため、可能な範囲での待遇改善が進められています。
政府施策の後押し
賃上げ税制や助成金制度の充実により、中小企業でも賞与増額に取り組みやすい環境が整備されています。
これらの要因により、中小企業のボーナス支給額は今後も緩やかな増加傾向が続くと予想されています。
厚生労働省の最新賃金統計には、詳細な業種別・地域別データが掲載されており、人事制度設計の参考として活用できます
中小企業経営者にとって、適切なボーナス水準の設定は人材戦略の核心部分です。業界平均や地域相場を参考にしつつ、自社の業績と将来性を総合的に判断した賞与制度の構築が求められています。