売主物件とは仲介物件との違いメリットデメリット

売主物件とは仲介物件との違いメリットデメリット

売主物件と仲介物件の違いを詳しく解説。仲介手数料の有無、契約不適合責任、取引の流れなど、不動産業従事者が知っておくべき重要なポイントを網羅。あなたは売主物件の本当の価値を理解していますか?

売主物件とは仲介物件との違い

売主物件の基本構造
🏠
直接取引

売主と買主が直接契約を締結する取引形態

💰
仲介手数料不要

仲介業者を介さないため手数料が発生しない

⚖️
契約不適合責任

売主が不動産業者の場合は2年以上の保証義務

売主物件の基本的な意味と仕組み

売主物件とは、不動産会社を通さずに売主と買主が直接契約を成立させる物件のことです。一般的な不動産取引では売主と買主の間に仲介業者が入りますが、売主物件では仲介業者が入らず、売主と買主が直接取引を行います。

 

売主物件の代表的なケースは以下の通りです。

  • ハウスメーカーや工務店、ビルダーが土地を仕入れ、建てた物件の販売まで一括して行う場合
  • 不動産会社が中古物件を買い取り、リノベーションした物件を販売する場合
  • 買取再販の中古マンション
  • ビルダーやハウスメーカーの建売住宅

取引態様における「売主」とは、不動産広告において、その物件が売主と直接売買する取引であることを意味します。取引態様には他に、売主に代わって契約する「代理」、物件を媒介するだけで契約は売主と行う「媒介」があります。

 

売主物件と仲介物件の違いとメリット

売主物件と仲介物件の最も大きな違いは、仲介手数料の有無です。仲介物件では売買契約が成立すると、買主と売主の両者が不動産会社に仲介手数料を支払う必要がありますが、売主物件では仲介手数料が発生しません。

 

仲介手数料の上限額は宅地建物取引業法によって定められており、以下の通りです。

  • 売買価格200万円以下:売買価格(税抜)×5%+消費税
  • 売買価格200万円超え400万円以下:売買価格(税抜)×4%+2万円+消費税
  • 売買価格400万円超え:売買価格(税抜)×3%+6万円+消費税

例えば、3,000万円の物件の場合、3%をかけた額に6万円と消費税が加算され、105万6,000円の仲介手数料がかかります。この費用が不要になることは、買主にとって大きなメリットとなります。

 

売主物件のその他のメリットには以下があります。

  • 契約不適合責任の保証:売主が不動産業者の場合、物件の引き渡しから2年以上の保証期間が設けられます
  • 交渉の自由度:当事者間で直接交渉できるため、売買条件の変更や値引き交渉のレスポンスが早くなります
  • スピーディーな取引:仲介業者を介さないため、手続きが迅速に進む可能性があります

売主物件購入時のデメリットと注意点

売主物件には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

 

専門知識の必要性
売主物件では仲介する不動産会社からのアドバイスをもらえません。売主が不動産会社の場合、プロ相手に交渉しなければならず、専門用語が飛び交うやりとりで内容を理解するのに時間がかかることもあります。買主にも一定の不動産知識が必要になってきます。

 

物件選択肢の限定
売主物件は仲介物件に比べて提供されている物件自体が多くありません。売主物件に絞って物件を探していると、希望の物件がない可能性もあります。

 

客観的視点の欠如
仲介会社を通さない分、物件に関する交渉や必要書類の作成、住宅ローンの手続きなどを売主と買主が行うケースがあります。客観的なアドバイスがないため、慎重に取引を検討することが重要です。

 

情報の不十分さ
売主直接販売においては、売主自身が物件の情報を提供するため、この情報格差を悪用して、物件の情報が隠匿されることがあります。特に個人売主の場合、将来の再建築が不可能な物件などのリスクもあります。

 

売主物件の契約不適合責任と保証内容

売主物件において特に重要なのが契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)です。売主が不動産業者である場合、買主を保護する観点から、契約不適合を担保すべき責任に関して特別な規定があります。

 

保証期間の長さ
売主が不動産業者の場合、物件の引き渡しの日から2年以上の保証期間を設ける必要があります。これは個人間売買よりも長期間の保証となり、買主にとって大きな安心材料となります。

 

保証対象となる不具合
契約不適合責任の対象となる主な不具合は以下の通りです。

  • 雨漏りやシロアリ被害
  • 給排水管の故障
  • 構造上の欠陥
  • 設備の不具合

買主に不利な特約の制限
売主が不動産業者の場合、買主に不利になるような特約をつけることはできません。これにより、買主の権利が適切に保護されます。

 

ただし、リノベーション済みマンションなどでは、見た目はきれいでも建物自体の構造などは確認することが難しいため、構造上の補修や補強が十分に行われているか専門家に調査をしてもらうことが推奨されます。

 

売主物件の価格設定と市場での独自性

売主物件の価格設定には、仲介物件とは異なる独自の特徴があります。売主物件では物件を販売すること自体が売主の利益に直結するため、価格戦略も異なってきます。

 

価格設定の透明性
売主物件では、仲介手数料が不要な分、その費用を物件価格に反映させることができます。しかし、仲介手数料がかからないからといって、それだけでお買い得であると判断するのは早計です。必ず近隣の相場と照らし合わせて価格が妥当かどうかを判断する必要があります。

 

値引き交渉の難しさ
売主物件では売主と直接交渉することになるため、値引きをしてもらいにくいというデメリットがあります。仲介業者が間に入る場合、仲介業者が値引き交渉をしてくれることもありますが、売主直売では売主が値引きに応じる必要性を感じにくい場合があります。

 

市場での希少性
売主物件は市場に出回る数が限られているため、希少性が高い物件も多く存在します。特に立地条件の良い物件や、大手ハウスメーカーが手がけた物件などは、売主物件として販売されることで、より付加価値の高い取引となる場合があります。

 

独自の販売戦略
売主が不動産会社の場合、自社のブランド力や信頼性を活かした販売戦略を展開することができます。これにより、仲介物件では得られない独自のサービスや保証を提供することが可能となります。

 

売主物件を検討する際は、単純に仲介手数料の有無だけでなく、物件の総合的な価値を評価することが重要です。相場感を把握し、専門用語を理解した上で、慎重に判断することが成功する取引の鍵となります。

 

不動産業従事者として、売主物件の特性を正しく理解し、顧客に適切なアドバイスを提供することで、より良い不動産取引の実現に貢献できるでしょう。