
賃貸借契約とリース契約は、どちらも「物件を借りる」という点では似ていますが、法的性格には大きな違いがあります。
賃貸借契約は民法第601条に規定されている「賃貸借契約」の典型契約です。貸主が物件を借主に使用・収益させ、借主がその対価として賃料を支払うという単純な二者間の契約関係です。
一方、リース契約(特にファイナンス・リース)は、民法に直接規定がない非典型契約で、「賃貸借という衣を纏った金融取引的性格が強い取引」と言われています。リース契約は「物融(ぶつゆう)」とも表現され、金融と物品提供が一体となった複合的な性格を持っています。
リース契約は、借主(ユーザー)、リース会社(貸主)、販売会社(サプライヤー)の三者が関与する取引構造となっています。借主が希望する物件をリース会社が購入し、それを借主に長期間賃貸するという形態をとります。
法的根拠としては、賃貸借契約が民法601条以下や借地借家法などに基づくのに対し、リース契約は民法521条の契約自由の原則に基づいています。
賃貸借契約とリース契約では、契約期間の設定方法と中途解約の可否に大きな違いがあります。
賃貸借契約の期間は比較的短期で、不動産の場合は通常2年程度、動産のレンタルではさらに短く、数ヶ月から1年程度が一般的です。中途解約については、一定の予告期間(通常1〜3ヶ月)を設けることで解約が可能です。解約時に違約金等が発生することは基本的にありません。
対照的に、リース契約(特にファイナンス・リース)は長期間の契約を前提としており、税務上の規定により、リース期間は対象物件の法定耐用年数の70%以上で設定することが一般的です。例えば、耐用年数4年のパソコンであれば、最短でも2.8年(端数切捨てで2年)以上のリース期間が必要となります。
リース契約の最大の特徴は「中途解約禁止」にあります。リース会社は物件購入時に全額を支払っており、リース料を通じてその投資を回収する仕組みのため、契約期間中の解約は原則として認められていません。もし中途解約する場合は、残りのリース料相当額または規定の違約金を一括で支払う必要があります。
この中途解約禁止条項は、リース会計基準においてファイナンス・リースと認められるための重要な要件となっています。
賃貸借契約とリース契約では、物件の選定方法と所有権の取り扱いに明確な違いがあります。
賃貸借契約(レンタル契約)では、貸主が既に所有している物件の中から借主が選択するという形態をとります。不動産であれば管理会社が所有・管理している物件から、動産であればレンタル会社の在庫の中から物件を選ぶことになります。所有権は契約期間を通じて貸主にあり、借主は使用権のみを持ちます。
一方、リース契約では、借主(ユーザー)自身が使用したい物件を選定し、それをリース会社が購入して借主に提供するという流れになります。つまり、借主のニーズに合わせた物件調達が可能です。所有権はリース会社にありますが、使用権は借主にあります。
リース契約の流れは以下のようになります:
この三者間取引の構造がリース契約の大きな特徴であり、借主のニーズに合わせた柔軟な物件調達を可能にしています。
賃貸借契約とリース契約では、物件の修繕責任と瑕疵担保責任の所在が大きく異なります。
賃貸借契約では、物件の修繕や維持管理の責任は基本的に貸主(賃貸人)にあります。民法上、貸主は借主に対して、契約期間中、物件を使用収益できる状態に保つ義務(使用収益させる義務)を負っているためです。また、物件に瑕疵(欠陥)があった場合や正常に機能しない場合の瑕疵担保責任も貸主が負います。借主は別途保守契約を結ぶ必要はなく、物件の不具合があれば貸主に修繕を求めることができます。
対照的に、リース契約(特にファイナンス・リース)では、物件の保守・修繕義務は借主(ユーザー)が負います。借主は必要に応じて販売会社などと別途保守契約を締結する必要があります。また、リース契約ではリース会社の瑕疵担保責任は免責されるのが一般的です。その代わり、リース会社は販売会社への瑕疵担保責任の請求権を借主に譲渡するなどの協力を行います。
さらに、物件が滅失・毀損した場合の危険負担についても違いがあります。賃貸借契約では、借主の責めに帰さない事由による物件の滅失・毀損は貸主が負担しますが、リース契約では借主が損害を負担し、残リース料や規定損害金の支払い義務から免れません。ただし、通常はリース物件に保険が付されているため、損害の大部分は保険でカバーされます。
不動産取引における賃貸借契約とリース契約には、動産取引とは異なる特殊性があります。
不動産の賃貸借契約は、借地借家法などの特別法による保護があり、正当な理由がない限り更新を拒絶できない(正当事由制度)など、借主保護の規定が多く存在します。一般的な不動産賃貸借では、2年契約が標準的ですが、定期借家契約を利用すれば契約期間満了時に確定的に契約を終了させることも可能です。
一方、不動産リース契約は日本ではあまり一般的ではありませんが、企業の設備投資などで活用されることがあります。不動産リースの場合、土地と建物を別々に考える必要があります。
土地には経済的耐用年数がないため(無限大)、土地の賃貸借契約については、リース期間の終了時に所有権が借主に移転するもの、または割安購入選択権が確実に行使されるものについてのみファイナンス・リースとみなされ、それ以外はオペレーティング・リースに区分されます。
建物については通常のリースとしてファイナンス・リースの判定が行われます。リース料の割引現在価値が建物の時価の90%以上であれば、ファイナンス・リースに該当します。
不動産賃貸借契約では土地と建物を一括して賃貸することが多いですが、リース会計上は土地と建物を別々の契約として扱い、それぞれについてファイナンス・リースに該当するか否かを判断します。
2027年4月から本格導入される「新リース会計基準」によって、現行のリースの範囲が拡大され、不動産関連の取引にも影響が出ることが予想されています。新基準では、契約締結時に契約がリースを含むかどうかを判断する必要があり、特定された資産の使用を支配する権利について、一定期間にわたって対価と交換に移転するような場合には、その契約はリースを含んでいるとみなされます。
事業者が賃貸借契約とリース契約のどちらを選ぶべきかは、事業戦略や財務状況によって異なります。それぞれの契約形態のメリット・デメリットを理解し、最適な選択をすることが重要です。
【賃貸借契約(レンタル)のメリット】
【賃貸借契約(レンタル)のデメリット】
【リース契約のメリット】
【リース契約のデメリット】
事業戦略の観点からは、以下のような選択基準が考えられます:
特に不動産取引においては、立地や物件の希少性、事業の継続性なども考慮する必要があります。例えば、特定の立地に長期的に事業を展開したい場合は、定期借家契約よりも普通借家契約が有利かもしれません。
また、財務諸表への影響も考慮すべき点です。新リース会計基準の導入により、これまでオフバランスだったオペレーティング・リースもオンバランス化されるため、財務指標への影響を検討する必要があります。
事業の成長段階や業種特性に応じて、最適な契約形態を選択することが経営戦略上重要です。場合によっては、一部の物件は賃貸借、他の物件はリースというように、複合的な調達戦略を取ることも検討価値があります。