地積測量図と確定測量図の違いを不動産従事者が解説

地積測量図と確定測量図の違いを不動産従事者が解説

地積測量図と確定測量図は不動産業務で重要な測量図面ですが、それぞれ特徴や用途が異なります。法務局での取得方法や土地売買での活用法を詳しく知りたくありませんか?

地積測量図と確定測量図の違い

地積測量図と確定測量図の基本的な違い
📋
地積測量図の特徴

法務局に備え付けられる公的図面で、誰でも取得可能

🏗️
確定測量図の特徴

隣地所有者立会いによる境界確定を経た私文書

⚖️
不動産取引での違い

法的効力と信頼性に大きな差が存在

地積測量図の法的位置づけと公的性格

地積測量図は法務局に正式に備え付けられる公的な図面です。1960年4月1日以降に分筆、地積更正、土地表題登記などの登記申請を行った土地については、地積測量図の提出が義務付けられています。この図面は登記制度に組み込まれた公文書として位置づけられており、不動産登記法に基づく正式な書類です。
地積測量図の最大の特徴は、誰でも法務局で取得できることです。土地の所有者でなくても、手数料を支払えば閲覧・取得が可能で、オンライン申請システムによる取得も実現されています。これにより、不動産業者は顧客の土地について迅速に情報収集できます。
📍 重要なポイント

  • 昭和35年(1960年)4月1日以降の登記申請時に作成義務
  • 平成20年以降は世界測地系データで高精度化
  • 座標値記載により測量精度が飛躍的に向上

確定測量図の作成プロセスと私文書性

確定測量図は土地家屋調査士が隣接地所有者全員の立会いのもとで境界を確定し、その測量結果を記録した図面です。この測量プロセスでは、隣地所有者との境界確認書の作成が必須となり、各所有者が1通ずつ保管することになります。
確定測量図の作成には厳格な要件があります:

  • 測量士ではなく土地家屋調査士による作成が必要
  • 隣接地所有者全員の立会いによる境界確定が前提
  • 境界確認書の相互保管による合意の文書化

この図面は私文書として扱われ、所有者のみが保管しています。紛失した場合は新たに作成する必要があり、費用と時間を要することが注意点です。
🔍 確定測量の特別な効力
確定測量では「境界の筆界」が法的に確定されるため、将来の境界紛争を予防する効果があります。

 

地積測量図と確定測量図の測量精度の変遷

地積測量図の測量精度は時代とともに大きく変化しています。特に重要な変遷は以下の通りです:
測量技術の進化による精度向上

  • 昭和35年〜昭和51年:測量義務化初期で精度に限界
  • 昭和52年〜平成2年:境界杭の種類記載開始
  • 平成3年〜平成17年:官民境界確定資料の添付義務化
  • 平成18年〜平成19年:座標値記載の完全義務化
  • 平成20年以降:世界測地系採用により飛躍的精度向上

平成3年以降の地積測量図は官民境界確定資料が添付されているため、確定測量図に近い信頼性を持ちます。特に平成20年以降の世界測地系データによる地積測量図は、GPSを活用した高精度測量により作成されています。
一方、確定測量図は作成時点から隣地所有者の合意を得た境界確定を前提としているため、作成年代に関係なく高い信頼性を保持しています。
📊 測量精度の比較表

時代 地積測量図の精度 確定測量図の精度
昭和35年〜 低精度(誤差あり) 高精度(境界確定済み)
平成3年〜 中精度(官民境界資料添付) 高精度(変更なし)
平成20年〜 高精度(世界測地系) 高精度(変更なし)

不動産売買における地積測量図の活用限界

不動産業務において重要な点は、地積測量図のみでは土地取引が成立しないことです。地積測量図は公的な図面として面積や形状を示しますが、隣地所有者の境界に対する合意を証明する機能は持ちません。
地積測量図の取引上の制約

  • 隣地所有者の合意確認ができない
  • 古い地積測量図では測量誤差の可能性
  • 境界紛争リスクの完全排除が困難

これに対し確定測量図は隣地所有者の立会いと合意を前提とした作成プロセスにより、土地売買における境界トラブルのリスクを大幅に軽減します。買主の立場からは、確定測量図の存在により安心して土地購入を進められます。
⚠️ 実務上の注意点
山林などの特殊な土地を除き、地積測量図単独での不動産取引は基本的に行われません。

地積測量図と現況測量図の実用的な使い分け

不動産実務では地積測量図以外に現況測量図も頻繁に使用されます。現況測量図は既存の境界杭や構造物を基に作成された図面で、隣地所有者の立会いは不要です。
各測量図の実用的な位置づけ

  • 現況測量図:概算面積の把握、初期検討段階での活用
  • 地積測量図:公的記録の確認、登記情報との照合
  • 確定測量図:正式な土地取引、境界紛争の予防

現況測量図は「自己申告による測量図」の性格が強く、信用度は低い位置づけです。購入後の隣地トラブルリスクを考慮すると、現況測量図のみでの土地取引は避けるべきです。
不動産業者として顧客に提供する情報では、これらの測量図の違いを明確に説明し、取引リスクを適切に伝えることが重要です。特に確定測量図がない土地については、境界確定測量の実施を推奨し、安全な取引環境の構築に努める必要があります。

 

🏢 不動産業者の推奨対応

  • 地積測量図の有無・作成年代の確認
  • 確定測量図の存在確認と取得年月日の把握
  • 境界紛争リスクの事前説明と対策提案