
車の所有者が死亡した場合、その車は法的に相続財産となり、適切な相続手続きを経て名義変更を行う必要があります。道路運送車両法第13条により、所有者死亡後の名義変更は15日以内に行うことが法的に義務付けられています。
死亡時点で車は家族などの相続人全員の共有財産となるため、車の状態や価値に関係なく相続手続きが必要になります。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行い、誰が車を相続するかを決定する必要があります。
相続手続きには主に以下の3つのパターンがあります。
車の価値が100万円以下の場合は、簡易な手続きで済む特例もあるため、まず車の査定価格を確認することをおすすめします。
車の名義変更に必要な書類は、相続の形態によって異なります。まず共通して必要となる基本書類から確認しましょう。
基本的な必要書類
単独相続・代表相続の場合の追加書類
共同相続の場合の追加書類
書類の取得には時間がかかる場合があるため、戸籍謄本は市区町村役場で、印鑑証明書は市区町村役場または郵便局で早めに取得することが重要です。
遺産分割協議書は、相続人全員で車の相続について合意した内容を文書化したものです。この書類は相続手続きにおいて極めて重要な役割を果たします。
遺産分割協議書に記載すべき内容
記載例として、「被相続人○○○○の所有していた下記自動車については、相続人△△△△が相続する」という文言で始まり、上記の車両情報を具体的に記載します。
遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印による押印が必要です。一人でも署名・押印が欠けていると無効となるため、事前に全員の合意を得てから作成することが重要です。
国土交通省や陸運局のウェブサイトには「車の遺産分割協議書」のひな形が掲載されているため、これらを活用すると作成が容易になります。
100万円以下の車の特例
車の価値が100万円以下の場合、遺産分割協議書に代えて「遺産分割協議成立申立書」と「車の価値が100万円以下であることを証明できる書類」で手続きが可能です。この特例により、手続きの負担を大幅に軽減できます。
名義変更の申請は、車の種類によって窓口が異なります。普通自動車の場合は管轄の運輸支局または検査登録事務所、軽自動車の場合は軽自動車検査協会事務所・支所・分室で手続きを行います。
手続きの流れ
窓口受付時間
管轄が変わる場合(他県からの転入など)は、陸運局への車の持ち込みが必要となり、封印を受ける手続きも発生します。手続き完了までの所要時間は、混雑状況にもよりますが、通常2〜3時間程度を見込んでおくとよいでしょう。
費用は登録手数料500円×2回分と新ナンバー代1,450円を含めて、合計4,000〜5,000円程度が目安です。
車の名義変更手続きは自分で行うことも可能ですが、専門家に依頼することで多くのメリットが得られます。特に不動産業に従事する方にとって、時間効率と確実性の観点から専門家活用は検討に値します。
自分で手続きする場合
行政書士に依頼する場合
ディーラーに依頼する場合
専門家選択の判断基準として、以下の要素を考慮することをおすすめします。
特に相続人が複数県にまたがっている場合や、相続財産が複雑な場合は、専門家への依頼により手続きの確実性と効率性を大幅に向上させることができます。
不動産業従事者の立場から顧客にアドバイスする際は、これらの選択肢を整理して提示し、個々の状況に応じた最適な方法を提案することが重要です。また、車の相続と不動産の相続は同時期に発生することが多いため、包括的な相続サポートの一環として車の名義変更についても適切な情報提供を行うことが、顧客満足度の向上につながるでしょう。