営業所と事業所の違いは？不動産業界の組織構造と設置要件を詳解

営業所と事業所の違い

不動産業界において、営業所と事業所の違いを正確に理解することは、効果的な組織運営や拡大戦略を立てる上で極めて重要です。これらの概念は、単なる呼称の違いではなく、法的な位置づけや機能面で明確な区別があります。
営業所は「営業活動をするため拠点になり、事業所の下に位置し経営状況によって数が変わってくる」施設です。一方、事業所は「企業が事業活動をするための拠点になり、メインになるポジションで営業所などを管理している」場所として定義されます。
この基本的な階層構造を理解することで、不動産会社は適切な組織設計を行い、効率的な事業展開を実現できます。

 

営業所の法的定義と登記要件の違い

営業所は法的には「営業活動を行うための拠点」として位置づけられており、「支店が法務局に登記する必要があるのに対して営業所は登記されていない」という重要な特徴があります。
不動産業界における営業所の具体的な特徴。

• 登記不要: 法務局への登記申請が不要で、設置手続きが簡素化されています
• 税務上の優遇: 支店単位で均等割の納税義務が発生しないメリットがあります
• 権限の制限: 営業活動に関する権限のみが与えられ、その他の権限は本社や事業所が保持します
• 人員構成: 「営業員と営業事務だけ、配送などを含む」といった最小限の人員で運営されることが一般的です

実際の不動産業界では、地域密着型の営業活動を行うために設置されることが多く、顧客との接点を増やす目的で活用されています。登記が不要であることから、市場の変化に応じて柔軟に設置・撤退できる点が大きな利点となっています。

 

事業所の機能と営業所を統括する役割

事業所は「継続して事業活動が行われている場所」として定義され、営業所よりも包括的な機能を持つ拠点です。事業所は「事業を行うために拠点とする場所」として、企業の広範囲な活動を支える重要な役割を担っています。
事業所の主要な機能と特徴。

• 統括管理機能: 複数の営業所を管理し、「重要なポストの従業員が配置され営業所に指示を出している」ことが特徴です
• 多部門機能: 営業部門だけでなく、人事・経理・総務といった間接部門も含まれます
• 意思決定権限: 地域レベルでの独立した意思決定が可能な権限を持つことがあります
• 事業活動の拠点: 「生産や販売、サービスの提供を行うため」の包括的な機能を有しています

不動産業界では、地域本部や支社として機能することが多く、複数の営業所を統括しながら、その地域における事業戦略の立案・実行を担います。

 

営業所と事業所の設置コストと手続きの比較

営業所と事業所では、設置に必要なコストや手続きに大きな違いがあります。これらの違いを理解することで、不動産会社は最適な拠点戦略を立案できます。

 

営業所の設置要件。

• 初期費用: 建物賃料・光熱費・インターネット代・オフィス家具の購入費のみ
• 税務手続き: 税務署への申請などの手続きは不要
• 税金負担: 基本的には税金を納める必要がありません
• 人材配置: 最小限の営業スタッフで運営可能

事業所の設置要件。

• 登記手続き: 支店としての登記が必要な場合があります
• 税務負担: 均等割などの税金が発生する可能性があります
• 組織体制: 複数部門の設置と管理職の配置が必要
• 運営コスト: より大規模な人員と設備投資が必要

不動産業界では、市場テストや短期的な営業強化を目的とする場合は営業所を、長期的な地域戦略の拠点とする場合は事業所を選択する傾向があります。

 

営業所設置が適している不動産業界の具体的ケース

不動産業界における営業所の設置は、特定の条件下で大きなメリットをもたらします。「最小限の手間で営業拠点として使える拠点を確保したい企業に向いています」という特性を活かした活用法があります。
営業所設置が効果的なケース。

• 新規市場開拓: 未開拓地域での市場調査と顧客開拓を行う初期段階
• 季節性対応: リゾート物件や別荘地など季節性のある市場への対応
• 専門分野特化: 投資用物件や商業用不動産など特定分野に特化した営業活動
• 競合対策: 競合他社の進出に対する迅速な対応拠点として
• コスト重視: 「その他の権限を与える予定のない企業にも適している」場合

実際の事例として、大手不動産会社が地方都市に進出する際、まず営業所を設置して市場の反応を確認し、成果が出れば事業所に格上げするという段階的アプローチを取ることがあります。これにより、リスクを最小限に抑えながら効率的な事業展開を実現しています。

 

事業所と営業所の組織階層における位置づけの実態

不動産業界の実際の組織運営では、事業所と営業所の階層関係が複雑に絡み合っています。「本店所属の営業所もあれば支店所属の営業所もある」という現実があり、組織設計の自由度が高いことが特徴です。
組織階層の実際の構造。

• 本社直轄型: 本社 → 営業所（地域密着型の小規模拠点）
• 事業所統括型: 本社 → 事業所 → 営業所（地域本部制）
• 混在型: 本社 → 事業所・営業所が並列（機能別組織）

不動産業界では、取り扱う物件の種類や営業スタイルによって最適な組織構造が異なります。例えば、住宅販売に特化した会社では地域密着型の営業所を多数展開し、商業用不動産を扱う会社では専門性の高い事業所を設置するといった使い分けが行われています。

 

また、「業界によって表現、境界線は若干違います」という指摘があるように、同じ不動産業界内でも会社の規模や戦略によって組織構造の呼称や実際の機能に違いが生じることがあります。重要なのは、法的な要件と実際の業務機能を適切に組み合わせて、効率的な組織運営を実現することです。