
不動産デート商法は、従来のデート商法が進化した悪質な手法です。婚活サイトやマッチングアプリで「投資コンサルタント」や「ファイナンシャルプランナー」を名乗る人物が被害者に接近し、恋愛感情を巧みに利用して高額な投資用マンションを購入させます。
典型的な手口の流れは以下の通りです。
この手法の特徴は、被害者が自発的に「買いたい」と思わせる点にあります。強引な勧誘ではなく、恋愛感情と将来への期待を利用することで、被害者の判断力を麻痺させるのです。
実際の被害事例を見ると、その手口の巧妙さが浮き彫りになります。東京地裁平成26年4月1日判決では、婚活サイトで知り合った男性の勧めで投資用マンションを購入した女性の事例が扱われました。
この事例では、以下のような特徴が見られました。
別の事例では、SNSで知り合った女性から2500万円の投資マンション購入を勧められた男性の被害も報告されています。この男性は「彼女との将来を考えた上でのマンション購入」だったと証言していますが、契約後2ヶ月で連絡が途絶え、物件の買取価格は購入額の3分の1程度だったことが判明しました。
これらの事例から、被害者の多くが以下の共通点を持つことが分かります。
不動産デート商法において、不動産業者の関与は重大な法的リスクを伴います。東京地裁の判決では、デート商法に関与した不動産業者とその代表者に対して共同不法行為責任が認められ、損害賠償請求がほぼ全面的に認容されました。
不動産業者が負う可能性のある法的責任。
特に注意すべきは、不動産業者が直接デート商法を行わなくても、以下の場合には責任を問われる可能性があることです。
スルガ銀行の事例では、銀行員が婚活サイトでデート商法に加担していたケースも報告されており、金融機関も含めた業界全体での対策が求められています。
不動産業者として、デート商法に巻き込まれないための予防策を講じることは極めて重要です。以下の兆候が見られた場合は、特に注意が必要です。
契約時の危険信号 🚨
予防策の実施 🛡️
社内体制の整備 📋
不動産デート商法の被害を防ぐためには、業界全体での取り組みが不可欠です。現在、以下のような対策が検討・実施されています。
業界団体の取り組み 🏢
法制度の整備 ⚖️
技術的対策 💻
消費者教育の推進 📚
今後の展望として、デート商法の手口はさらに巧妙化することが予想されます。VRやメタバースなどの新技術を悪用した手法や、AI技術を使った偽のプロフィール作成など、従来の対策では対応が困難な新しい脅威も出現する可能性があります。
不動産業者は、これらの変化に対応するため、常に最新の情報収集と対策の更新を行う必要があります。また、被害者の早期発見と適切な対応により、被害の拡大を防ぐことが業界全体の信頼性維持につながります。
消費者庁や国民生活センターが発信する最新の被害情報を定期的にチェックし、社内での情報共有を徹底することで、デート商法の被害を未然に防ぐことができるでしょう。
金融庁の不動産投資に関する注意喚起資料
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/damasarenai/watadama034.html
不動産適正取引推進機構のデート商法判例解説
https://www.retio.or.jp/wp-content/uploads/2024/11/126-114.pdf