
不動産売買の決済において、買主や売主が立ち会わないケースは近年増加傾向にあります。従来の決済では、当事者全員が銀行等に集まって代金の授受を行うのが一般的でしたが、現在では8~9割が立ち会わない決済となっています。
立ち会わない決済の基本的な流れは以下の通りです。
この方式により、当事者が物理的に同じ場所に集まる必要がなくなり、効率的な取引が可能となります。
委任状は、本人が代理人に権限を委譲したことを証明する重要な書類です。不動産取引では高額な資金が動くため、委任状の作成には細心の注意が必要です。
委任状に必要な記載事項。
委任状の内容確認は極めて重要です。代理人が委任状をもとに行った行為は本人と同等とみなされるため、決済完了後の撤回は困難です。文末に「以上」の記載があるかも確認し、後から項目が追記されることを防ぎましょう。
代理人選定は立ち会わない決済における最重要事項です。多額の現金を預けることになるため、信頼性の高い人物を選ぶ必要があります。
推奨される代理人の優先順位。
興味深いことに、不動産投資案件では金融機関と不動産会社だけで決済を行うケースも少なくありません。これは投資用物件特有の傾向で、居住用物件とは異なる取り扱いがなされています。
代理人が弁護士の場合、その弁護士自身も決済に立ち会わないケースが頻繁にあります。弁護士も多忙なため、一つ一つの依頼に立ち会えない状況が常態化しているのが実情です。
立ち会わない決済では、通常の決済費用に加えて追加コストが発生します。これらの費用を適切に管理することで、予期せぬ資金不足を防げます。
追加で発生する主な費用。
決済口座には物件購入代金に加えて、これらの費用を考慮した余裕資金を準備しておくことが重要です。一般的には購入代金の1-2%程度の余裕を見込んでおくと安心です。
意外な事実として、大手不動産業者の建売住宅では原則として立ち会わない決済を採用しているケースが多いことが判明しています。これは効率性を重視した業界の変化を示しています。
従来の立ち会い決済では考えられなかった新しいリスクが、立ち会わない決済では発生します。これらのリスクに対する革新的な管理手法が開発されています。
デジタル技術を活用したリスク管理。
特に注目すべきは、売主の着金確認プロセスです。従来は電話やメールでの確認が主流でしたが、現在では銀行のAPI連携により自動的な着金確認が可能になっています。
**エスクロー(信託口座)の活用**も新しい手法として注目されています。第三者機関が代金を一時的に預かることで、売主・買主双方の安全性を確保できます。特に外国人が関与する取引では、この手法が積極的に採用されています。
立ち会わない決済における「京都方式」と呼ばれる独特な手法も存在します。これは地域特有の慣行として発展したもので、他の地域への応用可能性が検討されています。
決済当日の流れでは、登記情報確認から登記申請まで約10分という驚異的なスピードで処理されるケースもあります。これは事前準備の徹底と、デジタル技術の活用により実現されています。