
不動産クラウドファンディングは、投資家から集めた資金を使って事業者自身が不動産を取得・運用する投資手法です。この仕組みでは、クラウドファンディング事業者が直接不動産事業を行い、物件の運用によって生じた賃料収入や売却益を配当の原資とします。
投資対象となる不動産は多岐にわたり、以下のような物件が含まれます。
特徴的なのは、投資家が具体的な物件情報を確認できる点です。物件住所、築年数、入居状況、周辺環境などの詳細情報が開示されるため、投資判断を行いやすくなっています。
また、多くの不動産クラウドファンディングでは「優先劣後出資方式」が採用されており、事業者が劣後出資者として投資家と共同出資を行います。これにより、不動産価値が下落した場合でも、まず事業者の出資分から損失が補填されるため、投資家のリスクが軽減される仕組みとなっています。
ソーシャルレンディングは、投資家から集めた資金を第三者(企業や個人)に融資する事業モデルです。ソーシャルレンディング事業者は第二種金融商品取引業に登録した事業者であり、集めた資金を融資が必要な企業に貸し付け、その際の利息を投資家に分配します。
融資対象となる事業は不動産に限定されず、以下のような多様な分野が含まれます。
ソーシャルレンディングの配当原資は融資による利息収入であり、投資開始時点で金利が決定されているため、株式投資のような元本価格の変動はありません。これにより、比較的安定した利益を得られる可能性があります。
ただし、ソーシャルレンディング事業者は貸金業者として機能するため、共同出資は行いません。投資家と事業者の間には、不動産クラウドファンディングのような利益共有の仕組みは存在しないのが特徴です。
不動産クラウドファンディングの収益構造は、実物不動産の運用による収益に基づいています。具体的な配当原資は以下の2つに分類されます。
インカムゲイン(賃料収入)
キャピタルゲイン(売却益)
この収益モデルの特徴は、賃料収入による安定したキャッシュフローと売却時の値上がり益の可能性を併せ持つ点です。賃料収入は比較的安定しており、長期的な収益の予測が立てやすいメリットがあります。
また、不動産クラウドファンディングでは、事業者が劣後出資者として共同出資するケースが多く、投資家の元本保護機能が働きます。劣後出資の割合が高いほど、将来的に不動産価値が低下しても投資家への影響は限定的になります。
一方で、不動産市場の動向や物件の立地条件、築年数などが収益に大きく影響するため、物件選定の重要性が高い投資手法といえます。
ソーシャルレンディングの収益は、融資先企業が支払う利息が唯一の配当原資となります。この利息収入は投資開始時点で確定しており、以下のような特徴があります。
固定金利による安定収益
融資期間と金利の関係
ソーシャルレンディングでは、不動産クラウドファンディングと比較して高い利回りの案件が多く存在します。これは、融資先企業の信用リスクを金利に反映させているためです。
しかし、この高利回りには相応のリスクが伴います。融資先企業の経営状況が悪化した場合、以下のようなリスクが発生します。
特に貸し倒れが発生した場合、投資家は出資金の全額または一部を失う可能性があります。このため、ソーシャルレンディングでは融資先の信用力評価が極めて重要になります。
不動産クラウドファンディングには、一般的にはあまり知られていない税制面での特徴があります。これは他の投資手法と比較して独自の位置づけを持つ重要な要素です。
源泉徴収の仕組み
不動産クラウドファンディングの分配金は、源泉徴収された状態で投資家に支払われます。これは以下のような影響があります。
不動産所得との違い
直接不動産投資と異なり、不動産クラウドファンディングでは以下の制約があります。
投資額の制限と分散効果
不動産クラウドファンディングでは、小口投資による分散効果が期待できます。
この税制面での特徴は、特に高所得者層や不動産投資初心者にとって重要な判断材料となります。直接不動産投資と比較して税制優遇は限定的ですが、手続きの簡素化や小口分散投資のメリットは大きな魅力といえるでしょう。
また、物価上昇局面では不動産価値の上昇が期待できるため、インフレヘッジ効果も期待できる投資手法として注目されています。