
不動産クラウドファンディングにおける最大のデメリットは、元本保証がないことです。株式投資やREITと同様に、想定通りの賃料収入や売却益を得られなければ、元本の一部または全部が返還されないリスクが存在します。
元本割れが発生する主な要因として、以下のケースが挙げられます。
特に注意すべきは、優先劣後方式により元本割れリスクを低減する仕組みがあっても、完全に元本を保証するものではない点です。2025年6月末時点で元本割れゼロの実績を持つサービスもありますが、将来にわたって保証されるとは限りません。
不動産クラウドファンディングの深刻なデメリットとして、換金性・流動性の低さがあります。多くのサービスでは運用期間中の中途解約に対応しておらず、まとまったお金が必要になっても出資金を引き出せません。
流動性の低さによる具体的な影響。
株式投資であれば市場の取引時間内にいつでも売買注文を出せますが、不動産クラウドファンディングでは投資した出資分の中途解約や他人への譲渡(売却)ができません。
ただし、運営会社の重要な義務の懈怠(不履行)や履行不能のようなやむを得ない事情がある場合に限り、中途解約が認められる可能性もあります。また、国土交通省の「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」に定められた申込みから8日間のクーリングオフ期間は解約可能です。
現物不動産投資との大きな違いとして、金融機関の融資を利用できない点があります。不動産クラウドファンディングは少額投資であり、投資家が物件を保有しないため、通常は不動産投資ローンを組むことができません。
レバレッジ効果の欠如による影響。
例えば、利回り10%のファンドに1万円投資した場合、年間の利益は1,000円にとどまります。現物不動産投資であれば、自己資金の数倍の物件を購入してレバレッジ効果を得ることが可能ですが、不動産クラウドファンディングではこの恩恵を受けられません。
短期間で大きな利益を狙いにくいという特性があり、長期的な資産形成に向いている投資手法といえます。
あまり知られていない重要なリスクとして、運営事業者の倒産リスクがあります。不動産クラウドファンディングは運営事業者が倒産すると、投資したお金が返還されないリスクを抱えています。
事業者倒産リスクの特徴。
このリスクを軽減するためには、運営事業者の財務状況や事業実績を慎重に調査することが重要です。東京証券取引所に上場している企業が運営するサービスなど、信頼性の高い事業者を選択することが推奨されます。
また、投資先を複数の事業者に分散することで、特定の事業者の倒産による影響を最小限に抑える戦略も有効です。
現物不動産投資と比較して見落とされがちなデメリットとして、税制上の優遇措置がない点があります。匿名組合型の不動産クラウドファンディングでは、現物不動産投資で利用できる各種税制メリットを享受できません。
税制面でのデメリット。
分配金は雑所得として総合課税の対象となり、給与所得などと合算して税率が決定されます。高所得者の場合、税負担が重くなる可能性があります。
一方で、現物不動産投資では管理の手間や空室リスクなどの課題があるため、税制優遇がない代わりに運用の簡便性を重視する投資家にとっては、必ずしもデメリットとは言えない側面もあります。
不動産業従事者として顧客にアドバイスする際は、これらの税制面の違いを明確に説明し、投資家の所得水準や投資目的に応じた適切な投資手法を提案することが重要です。