
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有している個人や法人に対して課される地方税です。不動産投資においては、投資用物件(アパート・マンション等)も課税対象となり、一棟ものの投資でも区分マンションの購入でも同様に固定資産税が発生します。
固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点で固定資産課税台帳に登録されている所有者です。年の途中で物件を売却した場合でも、年始時点の所有者が固定資産税を負担することになりますが、実務上は決済日を基準に日割り計算を行い、決済日以降の税額分は買主が売主に支払うことが一般的です。
興味深いことに、関東と関西では年度に対する考え方が異なります。関東では毎年1月1日~12月31日を1期として考える一方、関西では毎年4月1日~3月31日を1期として考えるため、固定資産税の負担割合計算の基準が変動します。
固定資産税の計算式は以下の通りです。
固定資産税額 = 固定資産税評価額 × 税率(標準1.4%)
固定資産税評価額は、土地と建物を分けて計算する必要があります。土地の固定資産税評価額は公示価格の70%程度が目安となり、建物については再建築価格を基に経年減点補正率を適用して算出されます。
税率は全国で統一された標準税率1.4%が適用されますが、市町村によっては独自の税率を設定している場合もあります。都市部の物件の場合、固定資産税に加えて都市計画税(標準税率0.3%)が課税されることがあり、合計で1.7%の税率となる可能性があります。
区分マンションの場合、マンション全体の固定資産税額を各戸の専有面積で按分した金額となります。支払い対象月は4月から翌年3月までの年度計算となっており、固定資産を所有している限り毎年支払わなければなりません。
実際の投資物件における固定資産税額を具体的に見てみましょう。
3000万円の投資マンションの場合
5000万円の投資マンションの場合
物件価格が高くなるほど固定資産税額も比例して増加します。一般的に、物件価格の約0.3~1%が年間固定資産税額の目安となります。
1億円のマンションの場合
大規模な投資物件では、おおよそ30万~100万円の間に収まる程度の固定資産税が発生します。
これらの計算には、住宅用地の課税標準の特例や新築住宅の税額軽減の特例が適用される場合があり、実際の税額は軽減される可能性があります。
不動産投資において活用できる主な軽減措置は以下の通りです。
住宅用地の課税標準の特例 🏡
新築住宅の税額軽減の特例 🆕
長期優良住宅の特例
これらの特例措置により、実際の固定資産税負担は大幅に軽減される可能性があります。特に新築物件への投資を検討している場合、これらの軽減措置を考慮した収支計算が重要です。
固定資産税の納税額は3年ごとに更新される評価替えシステムによって決定されます。土地は路線価をもとに課税標準額を決定し、建物については取得価額をもとにして経年により課税金額が減少していきます。
土地の評価について
路線価は、道路に面する土地の1平米あたりの評価額で、国土交通省が決定した公示価格をもとに、国税庁が鑑定評価価格や実売実例価格を加味して計算します。土地の課税標準額は上昇する可能性がありますが、地価動向によって変動します。
建物の評価について
建物に関しては下がっていく傾向にあります。これは、不動産投資で所有する物件が償却資産であるためです。償却資産には耐用年数があり、経年により資産価値が減少するため、建物部分にかかる固定資産税は評価額の減少に伴い安くなっていく仕組みです。
将来の税負担予測
築年数が経過するにつれて建物部分の固定資産税は減少しますが、土地部分は地価動向に左右されます。長期的な投資計画を立てる際は、この評価替えサイクルを考慮した収支シミュレーションが不可欠です。
固定資産税の正確な把握のためには、不動産業者から物件資料を取り寄せる際に固定資産税額を確認することが確実です。2年目以降であれば、固定資産税の納付通知書に記載されているため、簡単に確認できますが、土地の評価額は3年ごと、建物部分の評価額は毎年更新されるため、前年度の固定資産税評価額はあくまでも目安として考える必要があります。
固定資産税は不動産投資において避けて通れない重要な経費項目です。物件選定時から将来の税負担を正確に予測し、投資収益性を適切に評価することが成功への鍵となります。特に新築物件の軽減措置や築年数による建物評価の変化を理解し、長期的な視点で投資戦略を構築することが重要です。