
不動産投資を行うサラリーマンにとって、確定申告は避けて通れない重要な手続きです。給与所得者であっても、不動産投資による年間所得が20万円を超えた場合は確定申告をする義務が発生します。
ここで注意すべきは、「所得」とは家賃収入そのものではなく、総収入金額から必要経費を差し引いた金額を指すことです。計算式は以下の通りです。
不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費
例えば、年間家賃収入が100万円あっても、管理費や修繕費、減価償却費などの必要経費が85万円かかった場合、不動産所得は15万円となり、確定申告は不要となります。
興味深いことに、不動産所得が赤字の場合でも確定申告をすることで、給与所得との損益通算により所得税の還付を受けられる可能性があります。これは多くの投資家が見落としがちなメリットです。
確定申告に必要な書類は申告方法によって異なります。白色申告の場合、以下の書類が必要です。
青色申告の場合は、収支内訳書の代わりに「青色申告決算書(不動産所得用)」を提出します。
その他、不動産投資に関連する重要な書類として以下があります。
国税庁の収支内訳書作成ガイドには、詳細な記入方法が記載されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/pdf/019.pdf
不動産投資では多岐にわたる費用を経費として計上できます。主な経費項目は以下の通りです。
🏠 物件関連費用
🔧 管理・運営費用
📊 事業運営費用
特に注意すべき点として、土地部分の借入金利子は損益通算の対象外となります。不動産所得が赤字の場合、土地部分の金利を赤字から差し引く必要があります。
また、満期返戻金のある長期火災保険の保険料は、必要経費として認められない点も覚えておきましょう。
青色申告は白色申告と比較して多くのメリットがあります。最大の利点は青色申告特別控除で、不動産投資の規模によって控除額が変わります。
青色申告のその他のメリット。
ただし、青色申告を行うには事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。申請期限は青色申告をしようとする年の3月15日までです。
多くの不動産投資家が見落としがちな重要なポイントがあります。
未収家賃の計上義務
家賃滞納が発生している場合でも、その未払い家賃は「未収金」として収入に計上しなければなりません。これを怠ると税務リスクとなる可能性があります。
修繕費と資本的支出の区別
修繕費は「修理修繕費」と「資本的支出」に分類されます。雨漏り修理などの原状回復は修理修繕費として全額その年に計上できますが、非常階段の新設や設備のグレードアップは資本的支出となり、減価償却での計上が必要です。
減価償却の初年度設定の重要性
減価償却費の初年度計上に不備があると、後年度の計上可能額に影響します。特に建物だけでなく、エアコンやパソコンなどの備品も減価償却資産として適切に設定する必要があります。
家事按分の適切な実施
自家用車や通信費など、プライベートと共用している費用は家事按分が必要です。按分割合は合理的な根拠に基づいて設定し、記録を残しておくことが重要です。
経費として認められない項目
以下の項目は経費として認められないため注意が必要です。
これらの落とし穴を避けるためには、日頃から適切な記録管理を行い、不明な点は税理士に相談することをお勧めします。確定申告は単なる義務ではなく、適切に行うことで大きな節税効果を得られる重要な手続きなのです。