
不法占拠の明け渡し請求において、弁護士費用は案件の成否を左右する重要な要素です。まず相談料については、一般的に30分5,000円、1時間1万円が相場となっており、多くの事務所で初回相談30分無料のサービスを提供しています。
着手金は事件着手時に支払う費用で、結果の成功・不成功に関わらず発生する特徴があります。明け渡し対象物件の評価額に応じて算定されることが多く、賃料・管理費の合計額2か月分が基準となるケースもあります。
成功報酬については、明け渡しや滞納賃料の回収が実現した際に支払う費用で、獲得した経済的利益の額に応じて算定されます。一律34万円(税込37万4000円)の完全成功報酬制を採用する事務所もあり、費用体系の多様化が進んでいます。
明け渡し訴訟における実費は、裁判所に納める手数料と郵券が主要な構成要素となります。手数料(印紙代)は、明け渡し請求の対象建物の固定資産税評価額の2分の1を基礎にして計算されます。この計算方法は実務で広く採用されている標準的な算定基準です。
郵券代(切手代)は被告の人数に応じて変動し、通常1万円前後が相場となっています。内容証明郵便による事前の明け渡し請求では数千円程度の費用が発生します。
訴訟前に占有移転禁止の仮処分を行う場合は、別途16万5000円(税込)が必要となり、緊急性の高い案件では追加費用の検討が必要です。これらの実費は事前に正確な見積もりを取得し、予算計画に組み込むことが重要です。
強制執行段階では、ワンルームで約40万円~60万円、一軒家では100万円程度の費用が発生します。裁判所に納める予納金は65,000円(東京地裁の例)となっており、この中から執行官日当や立会人日当が支払われます。
作業費用の内訳は以下の通りです。
・動産執行、明け渡し執行予納金:約10万円
・解錠技術者(催告日、断行日):約5万円
・執行補助者、作業員(催告日、断行日):約15万円
・運搬用車両:約5万円
・残置物保管費用(月・荷物処分費用含む):約10万円
催告のみで終了した場合は、予納金の半分以上が還付される仕組みとなっており、執行段階での展開によって最終的な費用負担が変動します。
不法占拠における損害金は、賃料相当損害金として算定されるのが最も一般的な方法です。過去に当該不動産を賃貸していた実績があれば、その時の賃料金額を基準とし、実績がない場合は近隣で同様の不動産の賃料相場を使用します。
損害金算定では、正式な鑑定を行わず、大幅に簡略化した大雑把な計算方法を使うことが多い特徴があります。これは賃料増減額の正式鑑定とは異なり、明け渡し実現後の迅速な解決を想定しているためです。
固定資産税倍率による算定方法も実務では使用されており、物件の評価額と立地条件を総合的に判断して損害額を確定させます。損害金の請求は明け渡し請求と同時に行うことで、より効果的な解決が期待できます。
土地区画整理事業における不法占拠問題では、仮換地指定処分がなされた従前地について、特殊な法的判断が求められます。札幌地裁平成10年4月28日判決では、土地区画整理法100条の2により、換地処分まで施行者が管理するものとして、施行者自身が不法占有者に対し明け渡しを求めることができるとしました。
これまで「仮換地の指定を受けた人の協力を得て民事的明け渡し請求を行う」という方法が一般的でしたが、協力が得られない場合は解決自体が困難になる問題がありました。施行者による直接の明け渡し請求が認められることで、事業進捗の円滑化が図られています。
「使用収益開始日」を「追って通知する」とする実務上の必要性と、効率的な紛争解決のバランスを取る新しい解決手法として注目されています。区画整理事業特有の複雑な権利関係を理解した専門的なアプローチが求められる分野です。
区画整理事業における不法占拠対応では、一般的な賃貸借契約終了後の明け渡し請求とは異なる法的構造を理解し、事業の特性に応じた戦略的な対応が不可欠です。施行者の権限を適切に行使することで、円滑な事業進行と適正な権利保護の両立が実現できます。