
固定資産税評価額とは、土地や家屋などの固定資産に対して課税される固定資産税を算出するための基準となる評価額のことです。この評価額は、各市町村(東京23区は都)が「固定資産評価基準」に基づいて個別に決定します。
固定資産税評価額は、単に税金を計算するためだけでなく、不動産取引における価格指標としても活用されています。宅建事業者にとっては、物件価値を把握する上での重要な参考情報となります。
固定資産税の標準税額は、原則として固定資産税評価額に1.4%を乗じて計算されます。また、都市計画税や不動産取得税、登録免許税なども固定資産税評価額をもとに算出されるため、不動産ビジネスに携わる方にとって理解しておくべき重要な指標です。
固定資産税評価額は、総務大臣が定める「固定資産評価基準」に基づいて決定されます。土地と家屋では評価方法が異なりますので、それぞれ見ていきましょう。
【土地の評価方法】
土地の固定資産税評価額は、一般的に土地の時価(公示地価)の約70%が目安とされています。ただし、土地の場所や形状、道路との接し方などによって評価額は変動します。
評価方法には主に以下の2つがあります。
標準宅地比準方式の計算式は「標準宅地の単価×土地面積×補正率」です。例えば、標準宅地の単価が10万円/㎡、土地面積が100㎡、補正率が0.7の場合、固定資産税評価額は700万円となります。
【家屋の評価方法】
家屋の固定資産税評価額は、新築時は請負工事金額の約50~60%が目安とされています。評価方法としては、評価時点で同じ建物を新築した場合の再建築費を点数化して「建物の再建築費評点数」を算出し、評点1点あたりの価額を乗じた後、経年劣化などの補正を行って決定します。
家屋の規模、構造、築年数などによって評価額は異なりますので、一概に言えない部分もあります。
固定資産税評価額を調べる方法は主に3つあります。宅建事業者として顧客に説明する際や、物件価値を把握する際に活用しましょう。
毎年4月頃に送られてくる固定資産税の納税通知書に同封されている「課税明細書」に記載されています。「価格」または「評価額」の欄に固定資産税評価額が記載されています。
市区町村の役所や都税事務所で固定資産課税台帳の閲覧申請をすることで確認できます。土地課税台帳と家屋課税台帳に分かれており、それぞれに所有者、所在地、価格(固定資産税評価額)などが記載されています。
市区町村の役場や都税事務所で取得できます。郵送での請求も可能です。証明書には土地や建物の所有者、所在地、価格(固定資産税評価額)などが記載されています。
宅建事業者が顧客の物件を扱う際には、これらの方法を活用して正確な固定資産税評価額を把握することが重要です。
固定資産税評価額と実勢価格(市場価格)には一定の相関関係がありますが、完全に一致するわけではありません。一般的に、固定資産税評価額は実勢価格よりも低く設定されています。
【土地の場合】
土地の固定資産税評価額は、公示地価の約70%程度が目安とされています。ただし、地域や土地の特性によって実勢価格との乖離が大きくなることもあります。
【建物の場合】
建物の固定資産税評価額は、新築時の請負工事金額の約50~60%程度が目安とされています。築年数が経過するにつれて評価額は下がりますが、実勢価格の下落率とは必ずしも一致しません。
宅建事業者としては、固定資産税評価額を参考にしつつも、実際の市場調査や取引事例比較法などを併用して、より正確な市場価格を把握することが重要です。特に、地価が急激に変動している地域では、固定資産税評価額と実勢価格の乖離が大きくなる傾向があります。
固定資産税評価額は、宅建事業者にとって様々なビジネス戦略に活用できる重要な指標です。以下に具体的な活用方法をご紹介します。
固定資産税評価額を活用する際の注意点として、評価額は3年ごとに見直されるため、最新の情報を確認することが重要です。また、実勢価格との乖離があることを踏まえ、他の査定方法と併用することで、より精度の高い価格設定が可能になります。
宅建事業者として、固定資産税評価額を単なる税金計算の基準としてだけでなく、ビジネス戦略の一環として活用することで、顧客満足度の向上やビジネスの差別化につながります。
固定資産税評価額と課税標準額は混同されやすい概念ですが、実際には異なるものです。宅建事業者として、この違いを正確に理解し、顧客に説明できることが重要です。
固定資産税評価額は、固定資産の価値を評価した金額で、「価格」とも表記されます。一方、課税標準額は、実際に税額を計算する際の基準となる金額です。
通常、家屋の場合は固定資産税評価額と課税標準額は同じ金額になりますが、土地の場合は住宅用地に対する特例措置や負担調整措置などにより、課税標準額は固定資産税評価額よりも小さくなることが一般的です。
【住宅用地の特例措置】
【負担調整措置】
地価の変動に伴う税負担の急激な変化を緩和するための措置です。評価額が上昇した場合でも、課税標準額が段階的に上昇するよう調整されます。
実際の固定資産税額は、この課税標準額に税率(標準1.4%)を掛けて計算されます。例えば、評価額1,000万円の土地が小規模住宅用地である場合、課税標準額は約167万円となり、固定資産税額は約2.3万円(167万円×1.4%)となります。
宅建事業者としては、特に土地取引において、固定資産税評価額だけでなく課税標準額も確認し、実際の税負担を正確に把握・説明することが、顧客との信頼関係構築に重要です。
固定資産税評価額は3年ごとに見直される「評価替え」が行われます。2024年は基準年度にあたり、多くの地域で評価額の見直しが実施されました。宅建事業者として、この評価替えの影響と今後の動向を理解しておくことが重要です。
【2024年評価替えの特徴】
2024年の評価替えでは、地価上昇が続いている都市部を中心に、固定資産税評価額が上昇する傾向が見られました。特に、コロナ禍からの回復に伴い、商業地や住宅地の価値が上昇している地域では、評価額の上昇率が高くなっています。
一方で、地方の過疎地域などでは、人口減少や高齢化の影響で地価が下落し、評価額も下がる傾向が見られます。このように、地域によって評価額の変動に大きな差が生じています。
【負担調整措置の適用】
評価額が大幅に上昇した場合でも、税負担が急激に増加しないよう「負担調整措置」が適用されます。これにより、実際の課税標準額は段階的に引き上げられるため、税額の上昇は緩やかになります。
【今後の動向予測】
今後の固定資産税評価額の動向としては、以下のような傾向が予測されます。
都市部では再開発や利便性向上により評価額の上昇傾向が続く一方、地方では人口減少に伴い評価額の下落傾向が続くと予測されます。
脱炭素社会への移行に伴い、省エネ性能や環境配慮型の建物に対する評価が高まる可能性があります。将来的には、環境性能が高い建物に対する税制優遇措置が拡充される可能性も考えられます。
AIやビッグデータの活用により、より精緻な評価方法が導入される可能性があります。これにより、個々の不動産の特性をより正確に反映した評価額の算定が可能になると考えられます。
宅建事業者としては、これらの動向を踏まえた上で、顧客に対して中長期的な視点からのアドバイスを提供することが求められます。特に、投資用不動産の取引においては、将来的な税負担の変化を見据えた提案が重要になるでしょう。
総務省|固定資産税制度
以上、固定資産税評価額について詳しく解説しました。宅建事業者として、この知識を活用し、顧客に対してより価値の高いサービスを提供していただければ幸いです。固定資産税評価額は単なる税金計算の基準ではなく、不動産取引における重要な指標であることを理解し、ビジネスに活かしていきましょう。