
築年数とは、建物が完成した日からの経過年数を指します。計算方法は人間の年齢と同じ数え方で、建物が完成した日(具体的には建築基準法上の完了検査日)を基準として、その日を迎えるたびに1年ずつ加算されます。
例えば、2020年9月1日に建てられた建物は、2030年9月1日を迎えると築年数10年となります。この計算は非常にシンプルで、以下の計算式で求められます。
計算式:現在の年 - 完成年 = 築年数
2024年に1980年に完成した建物の場合、2024 - 1980 = 44年となり、築44年です。
築年数の定義において重要なのは、建築基準法を遵守していることを検査して合格した日が基準となることです。この完成日は検査済証に記載されており、平成初期のころまでは検査済証のない建物も珍しくありませんでしたが、現在では金融機関のコンプライアンス強化により、検査済証の重要性が高まっています。
築年数を正確に確認するためには、複数の方法があります。最も確実な方法は登記簿謄本や登記事項証明書を確認することです。
📋 主な確認方法
登記簿謄本では、表題部の「登記原因及びその日付欄」に記載された新築年月日から築年数を計算できます。建築確認通知書には竣工年月が記載されており、これも築年数確認の重要な資料となります。
市区町村の役所では建築関連の記録が保管されており、建物の情報を調べることが可能です。また、購入時に関わった不動産会社や地域の不動産会社に問い合わせることで、築年数の情報を得られる場合もあります。
最近では、インターネット上で公共の建物情報を検索できるサービスも一部地域で提供されており、「地域名×築年数×調べ方」で検索することで有用な情報を得られることがあります。
品確法では、築年数によって建物の分類が明確に定められています。この分類は不動産広告や物件情報において重要な意味を持ちます。
🏠 建物分類の定義
新築の定義で特に注意すべきは、まだ誰も住んだことがなくても築年数が1年経過していると「新築」ではなくなることです。つまり、未入居であることと築1年未満であることの両方の条件を満たす必要があります。
築浅物件は、未入居でありながら建築から1年以上経過している物件を指します。一方、築古物件は築年数20年以上の建物を指し、この分類は建物の老朽化や価値の減少を考慮した重要な指標となります。
これらの分類は、不動産の価値評価や融資審査、税務処理において重要な判断材料となるため、不動産従事者は正確に理解しておく必要があります。
築年数は不動産査定において最も重要な要素の一つです。一般的に築年数が古くなるほど査定額は下がる傾向にあり、特に法定耐用年数を超えると査定額が激減しやすくなります。
💰 耐用年数と査定への影響
原価法による査定では、対象物件と同等の建物を現在新築する場合のコストを算出し、そこから築年数の経過による価値の減少(減価償却)を差し引いて価格を算出します。
例えば、建物の再建築費用が坪当たり40万円、面積が25坪、築20年の一戸建ての場合、以下の計算式を用います。
査定額 = 再建築費用 - 減価償却費
取引事例比較法では、対象物件と類似した条件(エリア、面積、築年数など)の物件が過去にいくらで取引されたかを参考に価格を算出します。この際、築年数は重要な比較要素となります。
ただし、同じ築年数でも定期的なメンテナンスやリフォームを行っている物件は評価が高くなり、立地の良さや設備の更新状態によっては、築年数が経過しても価値が大きく下がらないケースもあります。
築年数は税務処理、特に減価償却計算において重要な役割を果たします。不動産売却時の譲渡所得計算では、築年数に基づく減価償却費の算出が必要となります。
🧮 減価償却の計算方法
減価償却は、資産の取得価格を法定耐用年数で割って計算します。例えば、耐用年数が22年の木造住宅を5,500万円で取得した場合、年間の減価償却費は約250万円となります。
譲渡所得の計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 売却金額 - (購入時の費用 - 減価償却費) - 売却時の経費
この計算において、築年数に応じた減価償却費を正確に算出することが重要です。購入時の費用から築年数に応じた減価償却費を差し引いた金額が、税務上の取得費となります。
法定耐用年数を超えた建物の場合、減価償却の計算方法が変わるため、築年数の正確な把握は税務処理において極めて重要です。特に、1981年6月以前に建築確認を受けた建物は新耐震基準を満たしておらず、税務上も特別な扱いを受ける場合があります。
国税庁のサイトでは、不動産売却時の税金計算について詳細な情報が提供されており、築年数に基づく減価償却の具体的な計算方法を確認できます。
不動産従事者は、これらの税務上の影響を理解し、顧客に適切なアドバイスを提供する必要があります。築年数の正確な計算は、単なる物件情報の確認にとどまらず、税務処理や資産評価において重要な意味を持つことを認識しておくことが重要です。