複式簿記と単式簿記の違い

複式簿記と単式簿記の違い

複式簿記と単式簿記の基本的な違いから、青色申告特別控除の活用方法、財務諸表作成のメリット・デメリットまで詳しく解説します。あなたの事業にはどちらの簿記方法が適している?

複式簿記と単式簿記の違い

複式簿記と単式簿記の基本的な違い
📊
複式簿記

借方と貸方の両面で記録し、資産・負債の変動も把握

📝
単式簿記

現金の出入りのみを記録する簡易な方法

🎯
選択基準

事業規模と青色申告特別控除額で判断

複式簿記の特徴と記帳方法

複式簿記は、すべての取引を借方(左側)と貸方(右側)の両面から記録する手法です。1つの取引が複数の勘定科目に影響を与えることを前提とし、資産・負債・純資産・収益・費用の5つの要素(簿記の5要素)すべてを詳細に記録します。
参考)https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/82/

 

例えば、100万円の車を現金で購入した場合、複式簿記では以下のように記録されます。

  • 借方(左側):車両 100万円(資産の増加)
  • 貸方(右側):現金 100万円(資産の減少)

この記録方法により、車という資産が増えて現金が減ったという取引の全体像を把握することができます。複式簿記を採用することで、貸借対照表と損益計算書の両方を正確に作成でき、企業の財務状況を総合的に分析できるメリットがあります。
参考)https://www.saisoncard.co.jp/credictionary/bussinesscard/article326.html

 

単式簿記の基本的な仕組み

単式簿記は、収入と支出のみを記録する簡易的な方法で、家計簿や預金通帳のような記録形式です。現金の出入りに焦点を当てて、日付・内容・入金額・出金額・残高を時系列で記載していきます。
参考)https://www.cpa-learning.com/column/keiri/difference-tanshiki-fukushiki/

 

主要な帳簿として「現金出納帳」が使用され、以下のような形式で記録されます。

  • 日付: 2025年9月29日
  • 内容: オフィス用品購入
  • 出金: 10,000円
  • 残金: [前日残高 - 10,000円]

単式簿記では専門知識が不要で直感的に理解しやすいため、起業したばかりの小規模事業者や簿記に不慣れな個人事業主に適した記帳方法とされています。
参考)https://koyano-cpa.gr.jp/nobiyo-kaikei/column/6092/

 

複式簿記による財務諸表作成のメリット

複式簿記の最大の利点は、正確な財務状況の把握が可能な点です。すべての取引が借方・貸方の両側に記載されるため、資産や負債の状況を漏れなく把握でき、経営判断に必要な情報を提供します。
複式簿記によって作成できる主要な財務諸表。
貸借対照表(バランスシート) 📊

  • 資産、負債、純資産の状況を一覧表示
  • 企業の財政状態を特定時点で把握
  • 資金調達能力や経営安定性の分析が可能

損益計算書 📈

これらの財務諸表により、経営課題の早期発見やビジネスチャンスの把握が可能となり、適切な戦略立案のための判断材料を提供します。
参考)https://workvision.net/financial/column/financial/2025022601.htm

 

単式簿記の適用範囲と制約

単式簿記は記帳が簡単である反面、経営の健全性を正確に把握するのが困難という制約があります。現金の増減理由(原因)が不明なため、例えば銀行借入による現金増加も売上による現金増加も同じ「入金」として記録されてしまいます。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-accounting/importance-of-double-entry-bookkeeping/

 

単式簿記の主な制約。

これらの制約により、事業規模が大きくなると単式簿記では対応できなくなり、複式簿記への移行が必要となるケースが多くなります。特に正確な経営分析を求める場合や、金融機関からの融資を検討する際には、複式簿記による詳細な財務情報が不可欠です。

複式簿記による青色申告特別控除の活用

複式簿記を採用する最大のインセンティブは、青色申告特別控除を最大限活用できる点です。正規の簿記の原則(複式簿記)による記帳により、65万円または55万円の特別控除を受けることが可能になります。
参考)https://biz.moneyforward.com/tax_return/basic/50447/

 

青色申告特別控除の要件と控除額。
65万円控除の要件 💰

  • 複式簿記による記帳
  • 貸借対照表及び損益計算書の作成・添付
  • 法定申告期限内の提出
  • e-Tax使用または電子帳簿保存

55万円控除の要件 💵

  • 複式簿記による記帳
  • 貸借対照表及び損益計算書の作成・添付
  • 法定申告期限内の提出
  • e-Tax使用なし

単式簿記の場合は10万円控除のみとなるため、複式簿記との差額は最大55万円にもなります。この控除額の差は、事業所得や不動産所得がある個人事業主にとって大きな節税効果をもたらし、複式簿記導入の初期コストを十分に回収できる要因となっています。
参考)https://www.yayoi-kk.co.jp/shinkoku/aoiroshinkoku/oyakudachi/tokubetsukojo/