
不特定物とは、本や新車のように同じ物が複数ある物を指します。これは宅建実務において、契約の性質や責任の範囲を決定する重要な概念です。
不特定物の特徴
一方、特定物は世界に一つだけの物を指し、不動産はその典型例です。建売住宅であっても、買主の要望が一切反映されていない全く同じような間取りと外観の家が並んでいても、不特定物とはなりません。これは簡単に交換・返品が出来ないという原則によるものです。
実務上の重要な判断基準
この区別は、契約不適合があった場合の対応方法に直結するため、宅建従事者は正確な理解が不可欠です。
民法改正により、不特定物においても「瑕疵の無い物を引き渡すこと」を債務内容として合意することが可能になりました。これは宅建実務に大きな影響を与えています。
不特定物の契約不適合責任の特徴
家具付き住宅の取引では、普及品として市販され交換も容易な物は不特定物に分類されます。例えば、通販で購入したパソコンモニターの動きが変な場合には交換してもらえば済み、交換したからといって商品価値が劣ることにはならないからです。
実務対応のポイント
建材メーカーが提供する造り付け家具の場合、部屋の寸法に合わせた受注生産方式での制作でも、搬入商品に不具合があった場合は再度発注し直すことにより交換がきく商品として、不特定物として扱われることが多いです。
宅建業法では、「不特定多数の者を相手方」として「反復・継続」して行うことを「業として行う」と定義しています。この概念は、宅建業の免許要否を判断する重要な基準です。
業の要件における不特定多数
逆に、特定の者を相手方とする場合、例えば自社の従業員だけを対象にしている場合には、「不特定多数の者を相手方」という要件を満たしませんので、宅地建物取引業に該当しません。
実務での判断基準
また、一回限りの行為、例えば自分が住んでいる家を売却する場合には、「反復・継続」という要件を満たしませんので、宅地建物取引業に該当しません。
不動産取引において、付帯設備や家具の取扱いで不特定物の概念が重要になります。特に最近増加している家具付き物件や、リノベーション物件での設備取扱いで頻繁に問題となります。
不動産取引での不特定物の実例
住設機器については、一般的なものは全て不特定物に分類されるため、故障や不具合があった場合は代替品での対応が基本となります。
取引実務での注意点
造り付け家具の場合でも、建材メーカーなどで提供している受注生産方式の商品は、多少手間がかかっても交換可能な商品として不特定物扱いされることが多いです。壁への取り付けなどの手間もかかり、交換は比較的大掛かりになることもありますが、物の個性に注目した「一点物」とまでは言えないためです。
不特定物の取引では、特定物とは異なる特有のトラブルパターンがあります。宅建従事者として、これらのリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることが重要です。
よくあるトラブルパターン
例えば、家具付き住宅で提供される家具が不特定物の場合、同一メーカーの同一品番であっても、製造時期の違いにより木目や色調に微妙な差異が生じることがあります。このような場合の対応方針を事前に決めておくことが重要です。
予防策の実装
専門的な対応技術
宅建従事者は、不特定物と特定物の境界線が曖昧なケースでの判断力が求められます。セミオーダー商品の場合、一見特定物に見えても、実際には代替可能性があり不特定物として扱うべき場合があります。
高度な実務対応
また、不特定物の概念は、宅建業法の「業」の定義における「不特定多数」の概念とも密接に関連しており、免許要否の判断や営業範囲の設定においても重要な判断要素となります。これらの複合的な知識を統合して活用できることが、プロフェッショナルとしての価値を高めます。