
外国法事務弁護士となるためには、厳格な登録要件と承認制度が設けられています。まず法務大臣による資格の承認を受けることが必須で、その後に日本弁護士連合会の外国法事務弁護士名簿への登録が必要となります。
参考)https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/membership/foreign/about_registration.html
承認要件として、外国弁護士となる資格を有することに加えて、3年以上の実務経験が求められています。この実務経験要件は、日本の弁護士に求められる5年以上の職務経験と比較しても、国際的な法務業務の特殊性を考慮した設定となっています。
参考)https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/140903siryou04.pdf
法務省への承認申請時には、入会希望弁護士会を記載する必要があるため、申請前に所属する単位弁護士会を決定しておくことが重要です。現在、全国に52の単位弁護士会が存在し、東京のみ3つの弁護士会に分かれています。
参考)https://www.toben.or.jp/admission/gaikokuhoujimu/gaikokuhoujimu-shinki.html
外国法事務弁護士が取り扱える業務内容は、法律により明確に定められています。主要な業務として、原資格国法に関する法律事務、指定法に関する法律事務、第三国法に関する法律事務、そして国際仲裁事件および国際調停事件の手続き代行があります。
参考)https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/membership/foreign/registered-foreign-lawyer.html
原資格国法とは、外国法事務弁護士が弁護士資格を取得した国の法律を指します。例えば、イギリスの弁護士資格者であればイギリス法が原資格国法となり、この分野での法律事務を日本国内で行うことができます。
参考)https://www.moj.go.jp/content/001308968.pdf
重要な制約として、日本の裁判所での訴訟代理人となることや行政庁への申立て代理はできません。しかし、日本で行われる国際仲裁事件においては、日本の弁護士と同様に当事者を代理して活動することが可能です。
宅建業法に関連する業務において、外国法事務弁護士は独特の役割を果たしています。特に海外在住の外国人による日本不動産投資において、その専門性が重要視されています。
参考)https://nyuukan.com/business/business-9/
海外では不動産専門の弁護士という地位が確立しており、不動産売買において弁護士に代理交渉を委ねることが通例となっています。日本でもこの国際的な慣行に対応するため、外国法事務弁護士が重要な役割を担っています。
外為法の報告義務についても、外国法事務弁護士による専門的な助言が不可欠です。非居住者が日本の不動産を購入する場合、購入日から20日以内に財務大臣への報告が必要で、日本国内の代理人を通じた報告も可能となっています。
参考)https://s-legalestate.com/kaigai/reaestate-worries/real-estate-purchase/
宅建業法第2条第1号の「宅地」は外国の土地を含まないと解釈されていますが、不動産特定共同事業法では外国の不動産も対象に含まれるという複雑な法的構造について、外国法事務弁護士の専門知識が活用されています。
参考)https://www.ushijima-law.gr.jp/topics/20250508realestate/
外国法事務弁護士は、渉外的要素を有する法律事務について日本の弁護士と共同して事業を営むことができます。この協働体制により、国際的な不動産取引における包括的なリーガルサービスが提供されています。
外国法共同事業として、多くの著名な法律事務所が国際業務を展開しています。渥美坂井法律事務所・外国法共同事業のように、ニューヨーク、ロンドン、フランクフルト、ブリュッセル及びホーチミンに拠点を持つ事務所もあります。
参考)https://www.aplawjapan.com
共同法人制度の導入により、弁護士と外国法事務弁護士の両方の社員が存在する法人の設立も可能となっています。これにより、より効率的で専門性の高いサービス提供体制が構築されています。
参考)https://www.moj.go.jp/housei/gaiben/housei07_00042.html
海外進出・再編・撤退の各段階において、現地法律事務所との密接な連携が重要視されており、特にアジア地域では中国、タイ、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、マレーシア、シンガポール、フィリピン、インド、韓国、香港、台湾などの法律事務所との協力体制が確立されています。
参考)https://www.miyakezaka.or.jp/practice/international/
国際不動産投資において、外国法事務弁護士による支援は多岐にわたる専門的なサービスを含んでいます。住宅・オフィス・物流施設・ホテル等の種類を問わず、不動産を対象とする取引における依頼者のニーズに応じたリーガルサービスが提供されています。
参考)https://www.aplawjapan.com/services/real-estate-transactions
クロスボーダーM&Aにおいては、複数の地域における法規制の調査検討、デューデリジェンス、契約書の作成と交渉、調印やクロージングのサポートなどが行われています。これらの業務は、外国法事務弁護士の国際的な経験と専門知識が不可欠な分野です。
重要土地等調査法に基づく「事前届出」についても、外国法事務弁護士による助言が重要となっています。注視区域・特別注視区域内の土地等を利用する場合の機能阻害行為に関する勧告・命令への対応についても、専門的な知識が求められます。
参考)https://s-legalestate.com/kaigai/reaestate-worries/regulations-for-foreigners/
外国人住民票や印鑑証明書などの特殊な手続きについても、外国法事務弁護士による支援により、海外在住者でも適切な法的手続きを行うことが可能となっています。このような実務的なサポートは、国際不動産投資の成功に欠かせない要素となっています。