
行政処分とは、最高裁判所の判例によると「公権力の主体たる国または地方公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」と定義されています。
この定義から以下の要素が必要であることが分かります。
不動産業界においては、宅地建物取引業法第65条から第70条に基づく監督処分が代表的な行政処分です。これには業務停止命令、指示処分、免許取消処分などが含まれ、宅建業者の事業活動に直接的な影響を与えます。
実定法上では「処分」という用語が行政事件訴訟法などで用いられており、抗告訴訟の対象となる具体的な法的措置を指します。
行政行為は、講学上(学問上)の概念として発達した用語で、「行政庁が法律に基づき、公権力の行使として直接個人の権利義務を規律する行為」と定義されます。
行政行為の特徴は以下の通りです。
行政行為には、法律行為的行政行為(下命、禁止、許可、免除、特許、認可、代理)と準法律行為的行政行為(確認、公証、通知、受理)の分類があります。
不動産業界では、宅建業免許の交付(許可)や建築確認(確認)などが典型的な行政行為に該当します。
両者の主な相違点は以下の通りです。
用語の性質
概念の範囲
実務での使用
Wikipediaによると、「講学上の行政行為を行政処分という場合もあるが、通例「処分」とは行政事件訴訟法などの制定法で用いられる概念である。しかし両者は重なることもある」とされています。
この重複関係は、実定法上の処分概念が行政行為を中核としつつも、その周辺部分で広狭の差があることを意味します。
不動産業界における行政処分の具体例として、以下のような処分があります。
宅建業法に基づく処分
その他の関連処分
これらの処分は段階的に適用され、違反行為の重大性や反復性に応じて決定されます。処分を受けた業者の情報は公開され、業界の健全性維持と消費者保護が図られています。
特に注目すべきは、これらの処分が事業者の信用や事業継続に直接的な影響を与える点です。免許取消処分を受けた場合、当該事業者は宅建業を継続することができなくなります。
行政行為が成立すると、以下の5つの特別な効力が発生します:
主要な効力
不動産業従事者にとって重要なのは、これらの効力により、いったん行政処分が確定すると、原則としてその効力を覆すことが困難になることです。
実務上の注意点
また、行政指導は行政処分とは異なり法的拘束力を持たないため、業務運営における対応方法も変わります。行政指導は「処分に該当しないもの」として定義され、強制力がない点で行政処分と明確に区別されます。
これらの知識は、宅建業者が適切なコンプライアンス体制を構築し、万一の処分を受けた際の適切な対応を行うために不可欠です。