行政処分と行政行為の違いを理解する不動産業従事者の解説

行政処分と行政行為の違いを理解する不動産業従事者の解説

行政処分と行政行為の概念的違いや実務上の使い分けについて不動産業従事者が知っておくべき法的知識を詳しく解説。宅建業法との関係性は?

行政処分と行政行為の違い

行政処分と行政行為の基本概念
⚖️
行政処分の定義

国や地方公共団体が法律に基づいて国民の権利義務を直接形成・確定する行為

📚
行政行為の意味

学問上の概念で、行政庁の一方的な公権力行使による法律効果を生じさせる行為

🏢
不動産業界での適用

宅建業法に基づく免許取消、業務停止命令などの監督処分が代表例

行政処分の法的概念と定義

行政処分とは、最高裁判所の判例によると「公権力の主体たる国または地方公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」と定義されています。
この定義から以下の要素が必要であることが分かります。

  • 主体要件 - 国または地方公共団体による行為
  • 権力性 - 公権力の行使としての性質
  • 法律効果 - 権利義務の形成・確定
  • 法律根拠 - 法律上の根拠の存在

不動産業界においては、宅地建物取引業法第65条から第70条に基づく監督処分が代表的な行政処分です。これには業務停止命令、指示処分、免許取消処分などが含まれ、宅建業者の事業活動に直接的な影響を与えます。
実定法上では「処分」という用語が行政事件訴訟法などで用いられており、抗告訴訟の対象となる具体的な法的措置を指します。

 

行政行為の学問的概念と特徴

行政行為は、講学上(学問上)の概念として発達した用語で、「行政庁が法律に基づき、公権力の行使として直接個人の権利義務を規律する行為」と定義されます。
行政行為の特徴は以下の通りです。

  • 一方的性質 - 相手方の同意を要しない行政庁の一方的判断
  • 法律根拠 - 法律による行政の原理に基づく法的根拠の必要性
  • 権力的性質 - 私人間の契約とは異なる公権力の行使
  • 効力の発生 - 拘束力、公定力、不可争力などの特別な効力

行政行為には、法律行為的行政行為(下命、禁止、許可、免除、特許、認可、代理)と準法律行為的行政行為(確認、公証、通知、受理)の分類があります。
不動産業界では、宅建業免許の交付(許可)や建築確認(確認)などが典型的な行政行為に該当します。

 

行政処分と行政行為の概念的相違点

両者の主な相違点は以下の通りです。
用語の性質

  • 行政処分:実定法上の用語(行政事件訴訟法など)
  • 行政行為:学問上・講学上の用語

概念の範囲

  • 行政処分:実定法の解釈により範囲が決定
  • 行政行為:理論的体系に基づく包括的概念

実務での使用

  • 行政処分:法律条文や判例で使用
  • 行政行為:学術論文や教科書で使用

Wikipediaによると、「講学上の行政行為を行政処分という場合もあるが、通例「処分」とは行政事件訴訟法などの制定法で用いられる概念である。しかし両者は重なることもある」とされています。
この重複関係は、実定法上の処分概念が行政行為を中核としつつも、その周辺部分で広狭の差があることを意味します。

行政処分における不動産業界の実務事例

不動産業界における行政処分の具体例として、以下のような処分があります。
宅建業法に基づく処分

  • 指示処分 - 業務改善命令(軽微な違反に対する是正指示)
  • 業務停止命令 - 数日から1年以内の営業停止(悪質な違反行為
  • 免許取消処分 - 宅建業免許の剥奪(最重度の処分)

その他の関連処分

  • 建設業許可の取消や停止
  • 不動産特定共同事業許可の処分
  • 管理業者登録の取消

これらの処分は段階的に適用され、違反行為の重大性や反復性に応じて決定されます。処分を受けた業者の情報は公開され、業界の健全性維持と消費者保護が図られています。
特に注目すべきは、これらの処分が事業者の信用や事業継続に直接的な影響を与える点です。免許取消処分を受けた場合、当該事業者は宅建業を継続することができなくなります。

 

行政行為の効力と不動産業従事者への影響

行政行為が成立すると、以下の5つの特別な効力が発生します:
主要な効力

  • 拘束力 - 行政庁と相手方双方を拘束
  • 公定力 - 違法であっても適法として扱われる効力
  • 不可争力 - 一定期間経過後は争えなくなる効力
  • 不可変更力 - 行政庁による一方的変更の制限
  • 自力執行力 - 強制執行による実現可能性

不動産業従事者にとって重要なのは、これらの効力により、いったん行政処分が確定すると、原則としてその効力を覆すことが困難になることです。

 

実務上の注意点

  • 処分の通知を受けた場合の不服申立期間(60日間)
  • 行政訴訟の提起期間(6か月間)
  • 処分の公示による第三者への影響

また、行政指導は行政処分とは異なり法的拘束力を持たないため、業務運営における対応方法も変わります。行政指導は「処分に該当しないもの」として定義され、強制力がない点で行政処分と明確に区別されます。
これらの知識は、宅建業者が適切なコンプライアンス体制を構築し、万一の処分を受けた際の適切な対応を行うために不可欠です。