
2025年6月6日に成立した「行政書士法の一部を改正する法律」は、2026年1月1日に施行される予定で、行政書士制度に大きな変革をもたらします 。今回の改正は、デジタル社会への対応や行政手続きの適正化を目的として、5つの主要な変更点が盛り込まれています 。
参考)https://www.sato-group-sr.jp/business_guide/archives/982
改正の中核となるのは、行政書士の「使命」の明文化、「職責」の新設、特定行政書士の業務範囲拡大、業務制限規定の趣旨明確化、そして両罰規定の整備です 。特に注目すべきは、これまで曖昧だった行政書士の業務範囲が法的に明確化され、専門職としての地位が一層強化される点です 。
参考)https://column.itojuku.co.jp/gyosei/basic/houkaisei/
社会のデジタル化に伴い、行政手続きの電子申請が普及する中で、行政書士には情報通信技術の活用を通じた国民の利便向上・業務改善に努める努力義務が新たに課されることになりました 。
参考)https://shuto-gyosei.com/appendix/2026%E5%B9%B4%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E6%B3%95%E6%94%B9%E6%AD%A3%E3%81%A7%E5%A4%89%E3%82%8F%E3%82%8B%EF%BC%81%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E9%87%91%E7%94%B3%E8%AB%8B%E6%A5%AD%E5%8B%99%E3%81%AE/
改正法の最も重要な変更点の一つが、第19条第1項における業務制限規定の趣旨明確化です 。従来の規定に「他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加され、無資格者による補助金申請代行業務が明確に禁止されました 。
参考)https://misei-gyousei.com/%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E6%B3%95%E6%94%B9%E6%AD%A3%E3%81%AE%E8%B6%A3%E6%97%A8/
これまで「コンサルティング料」「支援費用」「謝礼」「システム利用料」などの名目で、実質的に補助金申請書類の作成対価を得ていた無資格者の行為が、法的に明確な違法行為として位置づけられます 。改正により、補助金申請に必要な書類作成は行政書士の独占業務であることが一層強固に示されたのです 。
参考)https://kojimachi-capital.com/%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E6%B3%95%E6%94%B9%E6%AD%A32026%E5%B9%B4%E6%96%BD%E8%A1%8C%E3%81%B8%EF%BD%9C%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E9%87%91%E7%94%B3%E8%AB%8B%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%81%AE%E3%81%82/
無資格者による補助金申請代行の横行と、それに伴うトラブルの多発が改正の背景にあり、申請者保護と行政手続きの適正化の観点から、専門性の担保と法令遵守の徹底が求められています 。
参考)https://reverve-consulting.com/hojyokin_kaisei/
改正法では、無資格者による違法な補助金申請代行に対して厳格な処罰制度が導入されます 。違反者には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられ、従来よりも重い処罰が規定されています 。
参考)https://www.smilevisa.jp/owned-media/tokuteiginou-2026-amendment/
特に注目すべきは、新たに整備された「両罰規定」です 。これにより、無資格者が行政書士法違反行為を行った場合、その個人のみならず、関与している法人にも罰則を科すことが可能となりました 。違反した従業員だけでなく法人自体も処罰対象となり、経営者の監督責任も問われることになります 。
参考)https://goto-g.com/250606-2/
事業を営む方にとって、刑事処分を受けることは許認可への影響、取引先との関係悪化、そして社会的信用の失墜を意味し、一度失った信頼を取り戻すには長い年月と多大なコストを要します 。組織ぐるみの違法行為の抑止と信頼性の向上を図る重要な改正として位置づけられています。
参考)https://news.yahoo.co.jp/articles/a87f981dbee8542a237e640ced9ae27d71ac5ce0?page=2
改正により、特定行政書士の業務範囲も大幅に拡大されます 。従来は「行政書士が作成した書類」に関する処分に限られていた不服申立ての代理が、「行政書士が作成することができる書類」に関する不服申立てについても可能となりました 。
参考)https://misei-gyousei.com/%E7%89%B9%E5%AE%9A%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E3%81%AE%E6%A5%AD%E5%8B%99%E7%AF%84%E5%9B%B2%E3%81%8C%E6%8B%A1%E5%A4%A7%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82/
これにより、申請者自身が作成して提出した許認可申請が却下された場合や、コンサルタントの助言で作成した申請書に対して不利益な処分を受けた場合でも、特定行政書士による代理が可能となります 。国民の利便性が向上し、行政手続きにおける安心感も強化されることが期待されています。
補助金申請業務における実務的な変化として、これまで中小企業診断士やコンサルタントが行っていた補助金申請代行業務は、2026年1月以降、行政書士の完全独占業務となります 。企業側は、法的リスクを回避するため、有資格者である行政書士への依頼を検討する必要があります。
不動産業界では、住宅・建築関連の補助金制度が数多く存在し、これまで宅建業者が顧客サポートの一環として補助金申請の支援を行うケースが見られました 。しかし、改正法施行後は、このような支援が法的リスクを伴う可能性があります。
参考)https://f-mikata.jp/rosette-522/
宅建業者は、顧客への付加価値サービスとして補助金情報の提供や制度説明は可能ですが、実際の申請書類作成については行政書士との連携が不可欠となります 。この変化により、不動産業界では行政書士との業務提携や紹介システムの構築が進むと予想されます。
デジタル社会への対応として、行政書士には情報通信技術の活用による業務改善が求められており、電子申請システムの整備やオンライン相談体制の充実が期待されています 。これらの変化は、補助金申請手続きの効率化と質の向上につながり、最終的には申請者である事業者の利益になると考えられます。
改正法の施行により、補助金申請業務の専門性と信頼性が向上し、適切な法的根拠に基づいた支援体制が整備されることで、制度全体の健全な発展が促進されるでしょう。
参考リンク(行政書士法改正の詳細について)。
日本行政書士会連合会 改正法成立について
参考リンク(総務省の行政書士制度に関する情報)。
総務省 行政書士制度