
保険法は平成22年4月1日に施行された比較的新しい法律で、それまで商法で規定されていた保険契約に関するルールを現代化・口語化して独立させたものです。この法律の最大の特徴は、保険契約者を保護することを主目的としている点にあります。
参考)https://hoken-room.jp/word/14
保険法では、保険契約の締結から終了まで全期間における契約関係者の権利義務を明確に定めており、特に片面的強行規定という仕組みを導入しています。これは保険契約者等にとって不利な約款の定めを無効とする規定で、保険会社による一方的な条件変更から契約者を守る重要な仕組みです。
参考)https://www.associa-insurance.com/policy/law.html
さらに従来の商法では対象外だった共済契約も適用範囲に含めることで、保険契約一般を包括的に規律する内容となっています。第三分野保険(傷害疾病保険)に関する規定も新設され、現代の保険ニーズに対応した法律構成となっています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E9%99%BA%E6%B3%95
保険業法は保険業者を対象とした監督法として機能しており、金融庁による保険会社の監督権限を定めています。保険業の公共性を重視し、「保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保する」ことを目的としています。
参考)https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/oto/otodb/japanese/houseido/hou/lh_9999-66.html
保険会社は内閣総理大臣(金融庁長官委任)の免許制となっており、資本金は10億円以上の要件があります。また保険募集人の登録制度、保険募集における禁止行為の規定、保険契約者保護機構の設立根拠なども保険業法で定められています。
参考)https://www.fsa.go.jp/ordinary/hoken_hogo/index.html
重要な点として、保険業法は共済を対象外としていることです。これは共済が営利を目的としない団体によって運営されているため、保険業とは異なる扱いを受けているからです。
参考)https://blog.fp-camp.net/2025/02/27/insurance-law-and-insurance-business-law/
保険法では告知義務について大幅な制度変更が行われました。最も重要な変更は、従来の自発的申告義務から質問応答義務への変更です。これにより保険契約者は、重要事項のすべてを自発的に申告する必要がなくなり、保険会社から告知を求められた事項についてのみ回答すればよくなりました。
参考)https://laws.e-gov.go.jp/law/420AC0000000056
この変更により契約者の負担は大幅に軽減されましたが、一方で故意または重大な過失による告知義務違反があった場合の保険会社による契約解除権も明確化されています。ただし保険募集人が告知を妨害したり、嘘の告知を唆したりした場合は、保険会社は契約を解除できないという契約者保護規定も設けられています。
また通知義務についても、従来の「あらかじめ」通知から「遅滞なく」通知すれば足りるとされ、契約者の利便性が向上しています。
参考)https://soudanguide.sonpo.or.jp/basic/4_3.html
保険業法では保険募集に関して厳格な規制を設けています。保険募集人の登録制により、所定の研修履修と試験合格が必要で、内閣総理大臣(金融庁長官委任)への登録が義務付けられています。
参考)https://www.jaifa.or.jp/knowledge/kiso_sei_78/
生命保険募集人は原則として複数の生命保険会社の委託を受けることが禁止されており(二重登録・乗合募集の禁止)、募集時には所属保険会社名と代理か媒介かの権限明示が必要です。銀行等による保険募集では融資先募集規制やタイミング規制など、利益相反を防ぐ特別な規制も設けられています。
参考)https://www.fsa.go.jp/access/23/201109b.html
近年では保険代理店に対する監査体制の強化が図られており、保険会社による代理店への指導等の実効性確保や、過度な便宜供与の防止などが重要な監督事項となっています。
参考)https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/future-of-the-insurance-industry/vol02.html
保険業法と保険法では第三分野保険の分類方法に違いがあります。保険業法では保険を生命保険固有分野、損害保険固有分野、第三分野(生命保険・損害保険のどちらでもない分野)の3つに分類し、第三分野には医療保険、がん保険、介護保険、傷害保険などが該当します。
参考)https://soudanguide.sonpo.or.jp/basic/1_2.html
第三分野保険の特徴は、生命保険会社と損害保険会社の両方が取り扱える点にあります。これは生命保険会社が損害保険を扱えず、損害保険会社が生命保険を扱えない原則の例外となっています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%89%E5%88%86%E9%87%8E%E4%BF%9D%E9%99%BA
一方、保険法では第三分野をさらに保険金の支払い方によって2つに分類しており、傷害疾病損害保険と傷害疾病定額保険に区分されています。この分類の違いは、各法律の目的(契約者保護vs業者監督)の違いを反映したものといえます。