
違反建築物の発覚は、ほとんどが近隣住民からの通報によるものです。近隣の住民は自分たちの家がどこまでの規模なら建築できるかを熟知しているため、不審な動きがあるとただちに役所に問い合わせを行います。
役所から呼び出しがあった場合の対応手順。
この初期段階での対応が、その後の処分の重さを大きく左右します。違反が確定した場合、口頭で工事停止が告げられますが、この時点で素直に従えば傷口は浅くて済みます。
役所での口頭指導を無視して工事を進めると、より強制力のある工事停止命令が発令されます。この段階では以下のような措置が取られます。
工事停止命令の具体的内容。
工事停止命令が出されても工事を続けるケースは稀ですが、この段階で市役所は県庁に対して工事施工者の処分を要請します。多くの場合、営業停止処分が検討されます。
さらに違反が継続された場合、行政代執行の手続きが開始されます。この段階では市役所が警察に告発を行うため、状況によっては建築主の逮捕という事態にも発展する可能性があります。
違反建築物の是正について、多くの人が誤解しているのが「屋根だけを撤去すれば良い」という考えです。建築物の定義は「土地に定着する屋根を有する工作物」ですが、現在の解釈では「いったん建築物として構築したものは、屋根を外してもすべてが建築物」とされています。
是正措置の範囲。
是正作業においては、建築主が一人で解体を始めている程度では「是正の意志がない」と見なされ、行政代執行が開始されてしまいます。役所の手が入る前に、レッカー車を手配して本格的な解体を始めることで、ようやく「様子を見る」として行政代執行が保留されます。
国土交通省の調査によると、建築基準法違反が判明している物件は全国で1,469物件あり、是正済みは288物件にとどまっています。是正が進んでいるものの、違反物件数に比べて未是正の物件数が多い状況が続いています。
違反建築物は売却が極めて困難になります。これは違反の責任や是正義務が新しい所有者にも及ぶためです。購入者が違反を知らずに取得したとしても、新しい所有者に対して是正指導が行われます。
売却困難の主な理由。
2000年代に入ってから、銀行が違反建築物に対して住宅ローンの融資をしなくなったことが、違反建築物の劇的な減少につながりました。これは同時に、違反建築物の流通市場からの排除を意味しています。
中間検査制度の導入も違反建築物減少の大きな要因となっています。建築基準法による中間検査と各自治体の条例による中間検査があり、多くの都市で一般住宅の中間検査が義務付けられています。
違反建築物問題を未然に防ぐためには、予防的なリスク管理が不可欠です。現在では違反建築物が大幅に減少したため、従前であれば後回しにされていたような案件でも、積極的に指導に乗り出すスタンスで全国各地の役所が取り組んでいます。
予防的対策の重要ポイント。
違反建築物として指導を受けた場合の専門家活用方法。
横浜市戸塚区の事例では、第一種低層住居専用地域で用途制限、容積率、建ぺい率、構造耐力、耐火建築物の規定に違反した4階建て建物に対して是正措置命令が発令されました。このような複合的な違反の場合、専門家による総合的な対応が必要となります。
違反建築物問題は、適切な初期対応と専門家の活用により、深刻な事態を回避できる可能性が高まります。重要なのは、問題を先送りせず、早期に適切な対策を講じることです。