一括借り上げとはサブリースメリットデメリット契約方式解説

一括借り上げとはサブリースメリットデメリット契約方式解説

一括借り上げとは不動産会社が建物を丸ごと借り上げる契約方式で、オーナーにとって空室リスク回避と安定収入確保の重要な選択肢です。しかし本当にメリットだけなのでしょうか?

一括借り上げとは

一括借り上げの基本構造
🏢
マスターリース契約

不動産会社が建物一棟を丸ごと借り上げる契約方式

💰
安定収入保証

空室に関係なく毎月一定の家賃収入を確保

🔄
サブリース転貸

管理会社が入居者に転貸して収益を得る仕組み

一括借り上げの基本的な仕組みとマスターリース契約

一括借り上げとは、不動産会社や管理会社が、オーナーが所有するマンションやアパートなどの賃貸物件を一棟丸ごと、または一部を借り上げる契約方式です。この契約は「マスターリース契約」とも呼ばれ、オーナーから見ると不動産会社が賃借人となる形態となります。

 

通常の賃貸経営では、オーナーが直接入居者と契約を結びますが、一括借り上げでは以下のような流れになります。

  • オーナーが不動産会社に建物を貸し出す(マスターリース)
  • 不動産会社が入居者に部屋を転貸する(サブリース)
  • 入居者は不動産会社と賃貸契約を結ぶ
  • オーナーは不動産会社から一定の家賃を受け取る

この仕組みにより、オーナーは入居者との直接的な契約関係を持たず、すべての管理業務を不動産会社に委託できます。

 

一括借り上げとサブリースの違いと契約形態

一括借り上げとサブリースは密接に関連していますが、厳密には異なる概念です。一括借り上げは「オーナーから不動産会社への貸し出し」を指し、サブリースは「不動産会社から入居者への転貸」を指します。

 

契約の主体関係:

  • 一括借り上げ:オーナー(貸主)⇔ 不動産会社(借主)
  • サブリース:不動産会社(貸主)⇔ 入居者(借主)

実際の市場では、一括借り上げからサブリースまでの一連の流れを総称して「一括借り上げ」や「サブリース」と呼ぶのが一般的です。

 

契約方式の種類:

契約タイプ 特徴 手数料率
賃料保証型 空室に関係なく一定賃料を保証 15~20%
パススルー型 入居率に応じて賃料が変動 5~10%

賃料保証型では、不動産会社が入居状況に関係なく毎月一定の賃料をオーナーに支払います。一方、パススルー型では入居者が支払う家賃がそのままオーナーの収入となり、空室リスクはオーナーが負担します。

 

一括借り上げのメリットと空室リスク回避効果

一括借り上げの最大のメリットは、空室リスクの完全回避です。通常の賃貸経営では、空室が発生すると家賃収入が減少し、ローン返済計画に大きな影響を与えます。しかし、一括借り上げでは以下のメリットを享受できます。
収入面のメリット:

  • 毎月決まった金額の安定収入
  • 空室や家賃滞納の影響を受けない
  • 満室時の80~90%相当の家賃保証
  • 長期的な収支計画が立てやすい

管理面のメリット:

  • 入居者募集業務が不要
  • 家賃回収業務から解放
  • 入居者トラブル対応は管理会社が担当
  • 退去時の立会いや原状回復も管理会社が実施

精神的負担の軽減:

  • 空室率を気にする必要がない
  • 家賃滞納による精神的ストレスがない
  • 賃貸経営初心者でも安心して始められる

特に、相続税対策でフルローンを組んでアパート建設を行った場合、毎月の返済額が確定しているため、安定した家賃収入は非常に重要な要素となります。

 

一括借り上げのデメリットと手数料負担の実態

一括借り上げには多くのメリットがある一方で、見過ごせないデメリットも存在します。最も大きなデメリットは手数料負担による収入減少です。

 

収入面のデメリット:

  • 家賃収入の10~20%が手数料として差し引かれる
  • 管理委託(手数料5%程度)と比較して収入が大幅減
  • 礼金や更新料などの一時金収入がない
  • 満室時でも100%の家賃収入は得られない

契約上のリスク:

  • 家賃減額請求のリスク
  • 契約期間中でも賃料見直しの可能性
  • オーナーからの契約解除が困難
  • 管理会社からの突然の契約解除リスク

実際の収入例:
満室時家賃収入100万円の物件の場合

  • 管理委託:95万円(手数料5%)
  • 一括借り上げ:80~85万円(手数料15~20%)
  • 年間収入差:120~180万円

この収入差は、長期間にわたって累積すると非常に大きな金額となります。特に、築年数が経過して家賃相場が下落した場合、さらなる減額請求を受ける可能性があります。

 

免責期間の注意点:
多くの一括借り上げ契約では、契約開始から3~6ヶ月間の免責期間が設けられており、この期間中は空室分の家賃が保証されません。新築物件の場合、入居付けに時間がかかることがあり、当初の収支計画が狂う可能性があります。

 

一括借り上げ契約時の隠れたリスクと業界の裏事情

一括借り上げ契約には、一般的にはあまり知られていない業界特有のリスクが存在します。これらのリスクを理解せずに契約すると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。

 

業界の裏事情:

  • 大手サブリース会社でも経営破綻のリスクがある
  • 「30年一括借り上げ保証」は法的拘束力が限定的
  • 家賃減額請求は借地借家法により正当事由があれば認められる
  • 管理会社の倒産時は敷金返還義務がオーナーに移転する場合がある

契約書の落とし穴:

  • 賃料見直し条項の詳細確認が重要
  • 修繕費負担の範囲が曖昧な場合が多い
  • 契約解除時の違約金条項
  • 原状回復費用の負担区分

意外なリスク要因:

  • 管理会社の入居審査基準がオーナーの意向と合わない場合
  • 近隣相場より高い家賃設定で空室が長期化するケース
  • 管理会社の営業方針変更による突然の契約解除
  • 建物の老朽化に伴う大規模修繕費用の全額オーナー負担

対策として重要なポイント:

  • 複数の管理会社から見積もりを取得
  • 契約書の詳細条項を弁護士等専門家に確認
  • 管理会社の財務状況を定期的にチェック
  • 近隣相場の動向を継続的に把握

特に注意すべきは、管理会社が入居者選定を完全に裁量で行うため、オーナーの意向に沿わない入居者が選ばれる可能性があることです。例えば、ペット可物件として運営されたり、想定していない属性の入居者が選ばれたりするケースがあります。

 

また、建物の修繕・メンテナンス費用については、基本的にオーナー負担となるため、毎月の収入から修繕積立金を確保しておくことが重要です。管理会社によっては、修繕工事を自社系列の業者に発注し、相場より高い費用を請求するケースもあるため、見積もりの妥当性を検証する必要があります。

 

さらに、近年増加している問題として、管理会社の事業譲渡や合併により、契約条件が不利に変更されるケースがあります。特に、地方の中小管理会社が大手に買収された際に、従来の契約条件が見直されることが多く、オーナーにとって不利な条件に変更される可能性があります。

 

これらのリスクを回避するためには、契約前の十分な検討と、契約後の継続的な管理会社との関係維持が不可欠です。また、万が一のトラブルに備えて、不動産に詳しい弁護士や税理士などの専門家とのネットワークを構築しておくことも重要な対策の一つです。