
一種単価とは、「容積率100%あたりの土地単価」を指す不動産業界の専門用語です。より具体的に説明すると、土地に対してその土地の制限上の容積率いっぱいに建物を建てた場合の、床面積あたりの土地単価を表します。
この指標は、土地の収益性を測る重要な基準として不動産投資の現場で広く活用されています。坪単価が平面的な土地の面積単価を算出するのに対し、一種単価は土地に建物があると仮定した時の面積単価をより立体的に算出できる点が特徴です。
一種単価という用語の語源は、建築基準法で定められていた「容積地区」制度にあります。かつては第一種容積地区が容積率100%、第二種容積地区が容積率200%というように10段階で規制されており、「一種あたり」が「容積率100%あたり」を意味することから、この名称が生まれました。
一種単価の計算は、まず坪単価を求めてから容積率で割ることで算出します。計算式は以下の通りです。
坪単価の計算
一種単価の計算
具体例で見てみましょう。
この場合、坪単価は1億円÷100坪=100万円となります。一種単価は100万円÷(200%÷100%)=50万円となります。
同じ条件で容積率が500%の場合、一種単価は100万円÷(500%÷100%)=20万円となり、容積率が高いほど一種単価は低くなることがわかります。
一種単価は容積率と密接な関係があり、容積率が高いほど一種単価は低くなります。これは、同じ土地価格でもより多くの床面積を建築できるため、床面積あたりの土地コストが下がるためです。
容積率は建築基準法第52条第1項により、用途地域ごとに以下のように定められています。
ただし、実際の容積率は前面道路幅員による減少や道路斜線制限、高さ制限などにより変動することがあります。また、角地などでは容積緩和による加算もあるため、一種単価は土地の収益性を大まかに把握するための数値として捉えることが重要です。
一種単価を使って土地の適正価格を算出する方法は、不動産投資において非常に実用的です。以下の条件で適正一種単価を計算してみましょう。
設定条件
計算プロセス
この計算により、期待利回り8%を実現するための適正一種単価が65万円であることがわかります。
一種単価は不動産業界で様々な独自の活用法が開発されています。特に、都心部の商業地域では一種単価が2,000万円を超える事例もあり、銀座や表参道などの超一等地では一種単価3,000万円以上の土地も存在します。
業界独自の活用法
重要な注意点
マンションの共用廊下などは容積率の計算に含まれないため、実際の収益計算では注意が必要です。また、用途地域の変更や都市計画の見直しにより容積率が変動する可能性もあるため、長期投資では定期的な見直しが必要です。
さらに、一種単価だけでなく、立地条件、交通アクセス、周辺環境なども総合的に判断することが重要です。特に、最寄駅からの距離や商業施設の充実度は、実際の賃料や入居率に大きく影響するため、一種単価と併せて検討する必要があります。
レンタブル比との組み合わせ活用も効果的で、一種単価が低くてもレンタブル比が低い建物では投資効率が下がる可能性があります。一般的に、小規模オフィスビルのレンタブル比は80~85%、大規模オフィスビルは60~70%程度が目安とされています。