
スウェーデン式サウンディング試験(現在はスクリューウエイト貫入試験:SWS試験)は、住宅建築における地盤調査の標準的手法として広く普及している調査方法です。1917年頃にスウェーデン国有鉄道の不良路盤調査として開発され、日本では1954年に建設省が河川堤防の地盤調査として導入しました。1976年にJIS規格(JIS A1221)として制定され、2020年の改正で名称が「スクリューウエイト貫入試験」に変更されました。
この調査方法は、直径19ミリの鋼製ロッドの先端にスクリュー状の先端矢じり(スクリューポイント)を装着し、段階的に荷重(5、15、25、50、75、100kg)を加えて地中への貫入状況を測定します。貫入が停止した場合は、ハンドルを半回転ずつ回転させて強制的に貫入させ、25cm沈み込ませるのに必要な回転数を記録します。
スウェーデン式サウンディング試験の測定原理は非常にシンプルです。まず、スクリューポイントを取り付けたロッドを調査地点に垂直に設置し、載荷用クランプを固定します。この状態でロッドが自然貫入するかを確認し、貫入しない場合は段階的に荷重を追加していきます。
試験装置の構成要素。
荷重段階は累進式で、各段階での貫入量を測定します。全荷重100kgでも貫入しない場合、ハンドルを回転させて強制貫入させ、その回転数から地盤の硬さを判断します。この回転数データと荷重データを組み合わせて、N値(地盤の標準的な硬さ指標)に換算し、地盤の支持力や沈下特性を評価します。
標準的な測定仕様として、深度は10mを目安とし、硬質地盤に到達した場合は途中で終了する場合もあります。これは単管式掘削方式のため、10mを超えるとロッドと地盤間の摩擦により信頼性が低下するためです。
測定箇所数の設定基準。
各測定箇所では25cm毎に貫入抵抗を記録し、地層構成の推定に必要な連続データを取得します。調査完了後はロッドを引き抜き、その穴を利用して地下水位を測定することで、より包括的な地盤情報を取得できます。この地下水位データは、液状化判定や圧密沈下の検討において重要な指標となります。
近年、従来のスウェーデン式サウンディング試験に革新的な技術が加わっています。摩擦音を利用した土質判別技術により、従来は「ジャリジャリ」といった感覚的判断に頼っていた土質推定が、数値データによる客観的判断へと進歩しています。
この技術の特徴。
SDS®試験(ジャパンホームシールド社開発)では、従来のSWS試験にこの摩擦音技術を組み合わせ、荷重・回転トルク・貫入量を同時測定します。25cm毎の測点数も従来の1点から最大7点に増加し、より詳細な地盤情報の取得が可能になりました。
この技術革新により、土質判別精度が大幅に向上し、地盤事故リスクの軽減に貢献しています。特に、関東ローム層や腐植土層など、従来判別が困難だった土質の識別精度が向上し、適切な基礎設計への貢献が期待されています。
スウェーデン式サウンディング試験の最大のメリットは、その経済性と迅速性にあります。ボーリング調査と比較した場合、同深度での調査費用は約1/4程度で済み、調査期間も大幅に短縮できます。
費用比較(概算)。
技術的制約の比較。
項目 | SWS試験 | ボーリング調査 |
---|---|---|
調査可能深度 | 最大10m | 60m以上可能 |
硬質地盤対応 | N値30以上で困難 | 制約なし |
土質サンプル | 取得不可 | 取得可能 |
液状化判定 | 不可 | 可能 |
狭小地対応 | 1㎡程度で可能 | 大型機材必要 |
不動産業界では、戸建住宅や小規模建築物の地盤調査として、まずSWS試験を実施し、異常値や疑問点があった場合にボーリング調査を追加する段階的アプローチが一般的です。これにより、調査コストを最小限に抑えながら、必要十分な地盤情報を取得できます。
SWS試験結果の評価は、建築基準法告示第1113号に基づいて行われます。主要な判定項目として、地盤の許容応力度算定と軟弱層の存在確認があります。
軟弱層判定基準。
換算N値の算出には、貫入時の荷重と回転数データを使用し、以下の相関式を適用します。
粘性土の場合:N = 3Wsw + 0.05Nsw
砂質土の場合:N = 2Wsw + 0.067Nsw
ここで、Wswは荷重(kN)、Nswは25cm貫入時の半回転数を表します。
この換算N値により地盤の許容支持力を算定し、直接基礎か杭基礎かの基礎形式を決定します。さらに、地下水位データと組み合わせることで、沈下計算や液状化判定の基礎データとしても活用されます。現在では、AI技術を活用した自動判定システムも開発されており、人的誤差を排除した客観的な評価が可能になっています。