住宅扶助特別基準とは何か

住宅扶助特別基準とは何か

生活保護の住宅扶助には、通常基準を超える家賃の物件に住める「特別基準」があります。どのような条件で適用され、どこまでの範囲で利用できるのでしょうか?

住宅扶助特別基準とは

住宅扶助特別基準の基本概要
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通常基準の1.3倍まで

地域の住宅事情や世帯状況により一般基準額を超える場合に適用される上限額

⚖️
都道府県・指定都市・中核市別設定

地域の家賃相場を考慮し、各自治体が個別に基準額を設定

🔍
個別事情の検討必要

障害者への配慮や転居困難な事情など、個別ケースごとの判断

住宅扶助特別基準とは、生活保護制度における住宅扶助の通常基準額を超える家賃の住居に住む必要がある場合に適用される上限額のことです 。一般的に通常の住宅扶助基準額の1.3倍まで認められ、7人以上の世帯では1.3倍×1.2倍の額まで支給される仕組みとなっています 。
参考)https://seikatsuhogo.biz/blogs/60

 

特別基準は都道府県、指定都市、中核市ごとに定められており、現行の生活保護法制定時から存在する制度です 。実際の運用では、一般基準よりも各自治体が設定した特別基準が適用されることが多く、地域の家賃相場や住宅事情を反映した基準額となっています 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000038831.pdf

 

東京23区の単身者を例にとると、通常の住宅扶助基準額は53,700円ですが、特別基準が適用されれば69,800円まで支給される場合があります 。この制度により、通常基準では住居確保が困難な世帯でも、最低限の住環境を確保できるよう配慮されているのです 。
参考)https://seikatsuhogo.biz/blogs/55

 

住宅扶助特別基準適用の3つの条件

住宅扶助特別基準が適用される条件は、厚生労働省により3つの主要な基準が示されています 。これらの条件のいずれかに該当する場合、福祉事務所の判断により特別基準額の適用が検討されます。
参考)https://blog.goo.ne.jp/umieko/e/8aaaf1ff4f2a66051cd2fe80f46ef09a

 

第一の条件は「障害等により広い居室が必要」な場合です 。車椅子を使用する障害者の場合、部屋内での移動スペースの確保、バリアフリー設備の必要性、エレベーターや段差のない建物構造など、通常よりも広いスペースや特別な設備を要する住居が必要となります 。
第二の条件は「生活状況から転居が困難な場合」です 。高齢により転居が身体的に困難な場合、通院の必要性から現在の住所から離れられない場合、就労や就学により転居が困難な場合などが該当します 。これらのやむを得ない事情により現在の住居を離れることができない世帯に配慮された基準です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/bd588a3f26fc42d5b479518cd1e5da43c21bf70b

 

第三の条件は「通常基準の限度額の範囲では賃貸される実態がない場合」です 。地域の住宅事情により、住宅扶助の通常基準額以下で賃貸物件を見つけることが実質的に困難な地域において適用されます。厚生労働省も、この条件については自治体の判断で対応してよいとの見解を示しています 。

住宅扶助特別基準の地域別設定基準

住宅扶助特別基準の設定は、全国一律ではなく、地域の家賃相場や住宅事情を反映して都道府県・指定都市・中核市ごとに個別に定められています 。この地域別設定により、各地域のナショナルミニマムとして同程度の住宅水準を保障しつつ、実際の家賃相場の違いに対応しています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/001373124.pdf

 

級地区分は1級地から3級地まで設定され、1級地は東京23区や大阪市など大都市部、2級地は地方の中核都市、3級地は地方都市や郊外地域となっています 。例えば、東京23区(1級地-1)の単身者では69,800円、札幌市では46,800円(36,000円×1.3倍)、地方の3級地では更に低い金額が設定されています 。
参考)https://modern-homelife.com/housing-assistance-list/

 

この地域別設定により、東京都心部の高い家賃相場と地方都市の相場の違いを反映し、各地域で適切な住居確保が可能となるよう配慮されています 。また、床面積による区分も設けられており、11㎡以上、7~10㎡、6㎡以下の3段階で基準額が調整される仕組みもあります 。
参考)http://www.kaigoseido.net/kaihoo/15/1-6b.pdf

 

住宅扶助特別基準と障害者への配慮

障害者、特に車椅子を使用する方に対する住宅扶助特別基準の適用は、単なる家賃補助を超えた生活の質の確保という観点から重要な意味を持ちます 。車椅子使用者の住居選択は、健常者と比較して大幅に制限され、バリアフリー対応物件の選択肢は限定的です。
車椅子使用者が必要とする住環境には、入口のスロープ設置、エレベーター設備または1階部屋、玄関の段差解消、車椅子が通行可能な室内導線、バス・トイレ別の設備、浴室・トイレの段差解消などが含まれます 。これらの条件を満たす物件は市場でも少なく、家賃も通常の物件より高額になる傾向があります。
このような背景から、車椅子使用者には特別基準額(通常の1.3倍)の適用が認められており、東京23区の単身者であれば69,800円まで住宅扶助が支給される場合があります 。この制度により、障害者の居住権の確保と最低限の生活水準の維持が図られています 。
参考)https://diamond.jp/articles/-/57308

 

住宅扶助特別基準申請時の実務的手続き

住宅扶助特別基準の申請には、福祉事務所での個別審査が必要となり、申請者の具体的な事情を詳細に検討する手続きが求められます 。東京都福祉保健局の運用事例集では、「被保護者の状況を個々に判断するのでなく、地域の住宅事情を的確に把握し、管内の世帯に統一的な適用基準を用いることが必要」とされています 。
申請手続きでは、特別基準適用の必要性を証明する書類の提出が重要です。障害者の場合は身体障害者手帳や医師の意見書、転居困難な場合は年齢や健康状態を示す医療機関の証明書、地域の住宅事情の場合は不動産業者の物件調査結果などが必要となる場合があります 。
福祉事務所のケースワーカーは、申請者の個別事情、地域の住宅事情、過去の適用事例を総合的に判断して特別基準の適用を決定します。自治体によっては、特別基準の適用に関する内部基準やガイドラインを設けている場合もあり、申請前に福祉事務所に相談することが重要です 。