
住宅ローンは「本人居住用住宅購入資金」として融資されるため、賃貸運用は金融機関との契約違反となります。住宅ローンと不動産投資ローンでは金利に1~1.5%程度の差があり、住宅ローンの方が有利な条件で借り入れができるためです。
金融機関が住宅ローンを低金利で提供する理由は、自宅購入者の自己破産率が低く、返済が滞るリスクが少ないからです。そのため、投資目的での利用は契約の趣旨に反することになります。
契約違反が発覚した場合の主なリスクは以下の通りです。
やむを得ない事情がある場合は、金融機関の許可を得て住宅ローンのまま賃貸に出せる可能性があります。主な許可条件は以下の通りです。
転勤による一時的な賃貸
介護や育児などの家庭事情
賃貸併用住宅への変更
金融機関によって判断基準が異なるため、必ず事前に相談することが重要です。
金融機関が住宅ローンの不正利用を発見する方法はいくつかあります。最も一般的な発覚パターンは以下の通りです。
住民票の移転による発覚
税務署からの情報提供
近隣住民からの通報
一部では住民票を移さずに賃貸に出す方法も存在しますが、これは完全な契約違反であり、発覚時のリスクが非常に高くなります。
やむを得ない事情がない場合、住宅ローンから投資用ローンへの借り換えが必要になります。借り換えの主な手続きは以下の通りです。
借り換えの条件確認
必要書類の準備
借り換えのメリット・デメリット
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
金利 | 正当な契約となる | 住宅ローンより高金利 |
審査 | 投資実績が評価される | 審査が厳しい |
税務 | 経費計上が可能 | 住宅ローン控除が使えない |
借り換えには手数料や登記費用などの諸費用がかかるため、収支計算を慎重に行う必要があります。
住宅ローンで賃貸運用を行う場合、税務上の取り扱いに特別な注意が必要です。これは一般的にはあまり知られていない重要なポイントです。
住宅ローン控除への影響
住宅ローン控除は居住用住宅に対する優遇措置のため、賃貸に出すと適用除外となります。年末のローン残高の1%が10年間控除される制度で、最大400万円(長期優良住宅は500万円)の控除が受けられなくなります。
不動産所得の計算方法
賃貸収入から必要経費を差し引いた金額が不動産所得となります。主な必要経費は以下の通りです。
確定申告の義務
不動産所得が20万円を超える場合、確定申告が必要になります。この申告により税務署に賃貸運用の事実が把握され、金融機関に情報提供される可能性があります。
青色申告の活用
事業的規模(5棟10室基準)で賃貸運用を行う場合、青色申告により65万円の特別控除が受けられます。ただし、住宅ローンでの賃貸運用では事業的規模に達することは稀です。
住宅ローンで賃貸運用を検討する際は、税務上の影響も含めて総合的に判断することが重要です。特に住宅ローン控除を受けている場合は、控除額と賃貸収入を比較検討する必要があります。
金融機関への事前相談と適切な手続きを行うことで、リスクを最小限に抑えながら賃貸運用を実現できる可能性があります。ただし、無断での賃貸運用は重大な契約違反となるため、必ず正当な手続きを踏むことが不可欠です。