
壁心計算(へきしんけいさん)は、建物の床面積を算出する際に壁の中心線を基準とする計算方法です。この方法は建築基準法に基づいており、建築確認申請や物件広告で広く使用されています。
壁心計算の具体的な手順。
例えば、壁の厚みが200mmの場合、壁の表面から100mmの位置が中心線となります。内寸が8,000mm四方の部屋の場合、壁心計算では8,100mm × 8,100mm = 65.61㎡となります。
壁心計算は実際の使用可能面積よりも大きく表示されるため、購入者が内見時に「思ったより狭い」と感じる原因の一つとなっています。
内法計算(うちのりけいさん)は、壁の内側を基準として床面積を計算する方法で、実際に生活で使用できるスペースを正確に表します。マンションの登記では、この内法計算が使用されることが法律で定められています。
内法計算の測定ポイント。
内法面積の算出では、図面上の壁心寸法から壁の厚みを差し引いて計算します。前述の例では、内寸8,000mm × 8,000mm = 64.00㎡となり、壁心計算との差は1.61㎡(約2.5%)となります。
意外な事実として、部屋内に出っ張った柱などがある場合、壁心面積と内法面積の差はさらに広がります。これは設計上の構造要素が実際の使用面積に大きく影響するためです。
壁心面積と内法面積の差は、住戸の規模や構造によって大きく異なります。一般的な差の目安は以下の通りです。
住戸タイプ別の面積差
具体的な計算例(ワンルーム)。
この差が生じる理由は、住戸面積が狭いほど壁の厚みが占める割合が大きくなるためです。逆に、住戸面積が大きくなるほど、床面積に対する壁厚の影響は相対的に小さくなります。
壁の構造による影響も重要な要素です。鉄筋コンクリート造のマンションでは壁が厚く、木造住宅では比較的薄いため、同じ面積でも構造によって差の程度が変わります。
不動産における面積表示は、法律によって明確に使い分けが定められています。この使い分けを理解することは、不動産従事者にとって必須の知識です。
建築基準法による規定
建築基準法施行令第2条1項3号では、「床面積は建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による」と定められています。
不動産登記規則による規定
不動産登記規則第115条では、「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により算定する」と規定されています。
実務での使い分け
この使い分けにより、マンションでは「広告面積 ≠ 登記面積」となり、戸建て住宅では「広告面積 = 登記面積」となります。
住宅ローン控除の適用条件には床面積要件があり、この判定には登記面積が使用されます。これは不動産従事者が顧客に必ず説明すべき重要なポイントです。
住宅ローン控除の床面積要件
注意が必要なケース
壁心面積が50㎡台前半のマンションや、40㎡台前半のマンションでは、内法面積で計算すると住宅ローン控除の要件を満たさない可能性があります。
実務での対応方法
特に、壁心面積が51㎡や41㎡程度の物件では、内法面積が要件を下回るリスクが高いため、慎重な確認が必要です。
融資審査においても、金融機関によって壁心面積と内法面積のどちらを基準とするかが異なるため、事前の確認が重要です。公的融資では壁心計算、税制優遇では内法計算が使用されることが多く、この違いを理解して顧客に説明することが求められます。
不動産登記法と建築基準法の面積計算方法の違いについて詳しい解説
https://www.livable.co.jp/l-note/question/g22271/
マンションの壁心面積と内法面積の具体的な計算例と差の詳細
https://mansionlibrary.jp/article/30183/
住宅ローン控除における床面積要件と登記面積の関係性
https://www.prostyle-residence.com/mokusiru/hekisinnkeisanntoutinorikeisann/